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「明治維新」は大学2年からのテーマ。「下からの<革命>」か「上からの<改革>」か。民主主義<革命>の担い手は存在したのか。商品経済の進展と農民層の分解の論争。
司馬遼太郎も読んだ。「日本の歴史」(中央公論・26巻)も…。大久保利通が好きになった。
<王政復古>クウデターは成功した。何回か危機一髪があった。「指導部の断固たる決断と勇気によって切り抜け、相手側の不決断によって救われた」(井上清「日本の歴史」第20巻・明治維新)。次は火山がもっとも好きな一文。
「西郷・大久保らの決断力と勇気はどこから生じたか。彼らのすぐれた天性が、幾度か死生の間をくぐり、多年の政治闘争で鍛えられた結果であることはいうまでもないが、慶喜に辞官・納地をさせることこそ『公論』『条理』にかない、『天下の人心』に合致する唯一の道であることを確信していたことが彼らの最大の源泉であったに違いない」。倒幕なくして封建制廃止と民族結集、半植民地からの脱出という道はなかった。これが大久保と西郷を動かした。<危機>を振り返ってみたい。
最初の危機は土佐の後藤象二郎。後藤は「公議政体」論。徳川慶喜を新政体の首班とする諸藩連邦が目標。慶喜に辞官・納地を命ずる大久保らの計画には賛成ではなかった。
後藤はクウデターを延期するよう申し入れ、松平春嶽(越前藩主)に計画を漏らした。驚いた春嶽は慶喜に知らせた。後藤は明治天皇の外祖父の中山忠能にも<慶喜首班>で説得。キーマンの中山を握った。もし慶喜が反撃に転じたら大久保らの計画は成功したか。だが慶喜は自分では動かず、春嶽、容堂、後藤、中山に期待した。大名の甘さ…だ。
第二の危機は尾張藩。夜明け<卯の刻>出兵というのに公武合体派の公卿、諸侯がまだ夜来の会議を続けている未明に出兵。西郷は「尾張の裏切り、万事休す」と思った。幸い単なる手違い。すぐ撤兵した。この時、もし会津、桑名ら幕府側がクウデターと気づき、厳戒体制を取ったら、どうしようもなかった。
第三の危機は薩摩が宮門接収に出動した時の会津・桑名の抵抗。西郷は会・桑は「案外の気後れ」と言った。だが「薩摩兵の天をつく意気が会・桑を圧倒した」と井上清。
第四の危機は小御所会議で中山忠能らが春嶽、容堂、後藤らの議論に動揺した時。これは西郷の「短刀一本ですむ」という決断で勇気百倍、切り抜けた。西郷の助言と岩倉・大久保の慧眼が勝利を呼んだ。
だが慶喜政権の反撃はすぐ始まった。土佐の山内容堂の巧みな戦術で諸侯会議。<慶喜首班>実現に布石が打たれた。
西郷は大謀略に出た。江戸市中と関東各地で騒乱を起こした。西郷の挑発と気づかぬまま、江戸で薩摩藩邸の焼き討ち。聞いた大阪城中の旗本、会津、桑名の兵士が暴発、<鳥羽・伏見の戦い>が起こってしまう。
もともと<武力倒幕>を狙っていた西郷は開戦の報を聞くと「鳥羽一発の砲声は百万の味方を得たより嬉しい」と喜んだ。
幕府軍は1万5000人、朝廷側は僅か5000人。慶応4年(1868年)1月3日、女官はもとより公卿は大動揺に陥った。だが幕府軍はあっけなく壊滅。<勝敗>は一気に決した。なぜか―――。
第一に会津・桑名・新撰組などは刀槍や一騎打ちを武器とする旧式軍隊。薩摩・長州・土佐の新式銃砲隊に抗すべくもなかった。
第二に幕府軍1万5000人。指揮官が無能。総指揮官の竹中重固は身分が高いだけ。近代式軍事には無知無能。高級将校も同様。身分を問わない抜擢は幕府の封建秩序では不可能だった。
第三に薩摩・長州軍は地理・戦法を考え布陣していた。幕府軍は暴発しただけ。軍略も戦法もなかった。
第四。幕府側には戦争の意義について自覚も誇りもなかった。朝廷軍は<倒幕>…。明確な目標があった。
決定的だったのは民衆が幕府に反対。朝廷側を支持していた。西郷の手紙にある。「(幕府側は)よほど人心を失いおり、伏見辺は兵火のために消亡いたし候えども、薩長の兵隊通行のたびごとに、老若男女路頭に出て、手を合わせは拝をなし、有難し有難しと申す声のみ…」―――。この民衆の支持が<西郷・大久保>を勝たせた。
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火山さん、そうでしたか。四回の危機にも拘らず幕府側の四つの
勝てなかった分け、良く読みました。
有難し有難しと申す民衆の支持には勝てないのが当然と思います。
西郷さんの「おいどんの考え違いでごわした」なんてどっかでの
セリフが聞こえるようです。
2008/4/16(水) 午後 7:25
明治維新は火山が最も好きな歴史物語。民衆の喜びを自分のように感じられます。しかし…。新政府はできたが、支配者が変わっただけ。期待は裏切られていく。民衆の蜂起が全国に広がるが、新式軍隊の前に次々と鎮圧されていく。
明治維新にはブルジョワ民主主義はまだ不毛でした。復古的な王政、絶対主義政権が誕生しただけ。それでも草創期の新政府には<文明開化><殖産興業><富国強兵>の目標があった。不平等条約の撤廃へ鹿鳴館の夜会が始まる。
西郷隆盛、大久保利通など第一世代から伊藤博文、山県有朋らの第二世代へ。そこにも外国への警戒心、鋭い時代認識はあった。それが日清・日露戦争に連勝すると、唯我独尊が始まる。官僚の堕落です。未だに日本は目覚めていない。火山は地団太です。
2008/4/17(木) 午前 11:13 [ kom*_19*7 ]