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「『残念な結果になってしまった』。首相は9日に首相官邸で開いた政府与党連絡会議で沖縄県議選の結果を振り返った。さらに後期高齢者医療制度の見直しに触れ、『今週中にとりまとめたい』と強調、信頼回復を急ぐ考えを示した」(「日経」6月10日)。
福田首相はまだ分っていない。国民の大多数が怒っているのは「<75歳以上>だけに<痛み>を押し付け、反省しない」――。官僚に踊らされている<無責任><無反省>の自民・公明の国会議員や大臣の姿勢なのだ。<見直し>ではない。<廃止>が必要なのだ。
「財務の都合が優先され、人間味に欠ける」と塩川正十郎・前財務相。「高齢者に死ねというのか」と堀内光雄・自民前総務会長。「凍結せよ」と古賀誠・自民選対委員長。
「いま、国民は怒っている。ムダがあるのに国民に負担を押し付けるのか、役人がゴルフボールに税金を使っているのに増税するのか、と。(役人は)『もうムダはない』といい張り、『安心できる社会』『弱者救済』を御旗に、自分たちの身分と権益を守るために増税を主張してくるだろう」(中川秀直「官僚国家の崩壊」講談社・2頁)。
「高齢者世帯の7割は保険料が安くなる」。舛添要一厚労相も福田康夫首相もいった。「お年寄り(弱者救済)のための新しい医療制度」――。同じ論調。だがウソだった。
「推定自体が粗い推計という批判はそのとおり」と石原公一郎厚労省調査課長が認めた。6月6日(金)、民主党の逢坂誠二衆院議員が「ウソの上にウソを重ねるようなもの」と厚生労働委員会で追及したら、あっさり認めた。もちろんテレビは騒いだ。
中川秀直は元自民党幹事長。近著「官僚国家の崩壊」で「官僚、政界、学界、財界、マスコミなどに蔓延する巨大ネットワーク<ステルス複合体>が身勝手なズル・ウソ・ゴマカシで日本を<崩壊>させる」と強烈に訴えている。正論だ。火山もまったく同感。
「劣化したエリートを叩き直すのが<構造改革>。公務員制度改革は入口に過ぎない。危機感を募らせた霞ヶ関は、応援団を総動員して反撃を試みている」(中川・3頁)――。
「本書(「官僚国家の崩壊」)には激しい反発が予測される。だが私は闘う。愛する孫やまだ見ぬ子孫のためにも。本書は政治家・中川秀直の決意と覚悟の書」(4頁)。
<後期高齢者医療>の問題点は「文藝春秋」6月号に掲載されている自民党の衆院議員・堀内光雄(元総務部長)の「『後期高齢者』は死ねというのか」−78歳の私も保険証を返却。悪制度は凍結せよ −を読めば分かる。学者肌、超真面目な勉強家という評判通りだ。厚労省の担当者を呼んで説明を求め、勉強したという。唖然、そして怒った。
「私が50年にわたって経営に携わってきた富士急行の健康保険から放り出されてしまうことになるらしい。長年にわたって保険料を支払い続けてきた場所から、本人の意志も確かめずに一片の通知で保険証を無効にする、そんな強権が国にあるのだろうか。不快感と寂しさを抱いたのは私だけではないだろう」(「文藝春秋」6月号・146頁)。――鋭い。この堀内光雄の指摘に<悪制度>の本質が隠されている。
健康保険組合にも<収支>はある。加入者から集める保険料収入。加入者の診療によって医療機関へ支払う支出。黒字が出れば<剰余金>は積み立てられる。健全財政のためだ。
圧倒的多数の健康者と少数の傷病者。<保険>の本質だ。ところが<後期高齢者>だけを分離すれば<保険>は成立しない。だから今回の制度は<保険>とは名乗っていない。
少子高齢化が進み、高齢化社会になれば医療費は嵩む一方。「高齢者医療費を<切り離し>たい」。これがホンネ。だから負担、増えることはあっても減りっこない。
「富士急行の健康保険から放り出されてしまう」――。高額な給与から天引きされた高額の保険料。全部パーになる。正直に言おう。火山の長い会社人生。平均以上の給与を得ていたが、無病息災。健保のお世話になったことはほとんどない。家族も同じ。健保組合には多大な<貢献>をしてきた。これを厚労省は切り捨てる。「犯罪」と言ってよい<強権>。
この<犯罪>行為。実は厚労省が戦前から厚生年金で繰り返してきた<欺瞞>の再現。「文藝春秋」(2004年5月号)の「<年金食いつぶし>官僚弾劾裁判」を読めば分かる。
厚生年金は戦前、モデルとなったドイツの年金と同じ<積立方式>でスタートした。各人の掛け金が<基金>。それを運用・利殖して将来の支払<原資>とする。貯金と一緒。
だが年金を設計した花澤武夫保険課長は戦後、関係者に自慢げに語っている。「年金を払うのは先のことだから、今のうちにドンドン使ってしまえ。払えなくなったら<賦課方式>にしてしまえばよい」――。座談会のこの発言、記録として公刊されている。恐れ入る。<賦課方式>とは現在の制度。つまり「若い世代が年寄りを養う」。積立金はネコババできる。
厚生年金の積立金は現在<148兆円>もある。保険料収入が年金支払を上回り、年々増え続けている。だがこの事実、新聞で記事になったことがない。国民は知らされていない。
欺瞞は他にもある。国民年金の赤字が増え、貯まって来たら、厚労省は<国民皆保険>という美名を掲げ、<基礎年金>という新制度を導入、厚生年金を<2階建て>にした。
「得をした」気分は大間違い。1階の基礎年金は<国民年金>と一緒。厚生年金は2階だけ。サラリーマンは騙され、年金を減らされ、国民年金の赤字を払わされている。
「後期高齢者医療制度」――。実は<国民健保>の赤字を増やさない。秘めた狙いがある。黒字が多い企業健保にたかろうというのだ。厚生年金と同じ<二匹目のドジョウ>。中川秀直の「私は、闘う」。悪辣な<ステルス複合体>への挑戦状なのだ。<続く>。
(平成20年6月10日)
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