火山の独り言

時ならめ 風に挑みて 鯉のぼり

新編「聖徳太子は実在しない」

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持統女帝と不比等が<縁組>で長屋王を<懐柔>したため、長屋王が<特別>な地位を獲得、次代を約束されるような<高貴>なポジションを得たと前回紹介した。
長屋王は天武の<孫>。父親は天武の<長男>の高市皇子。不比等は高市も懐柔した。<太政大臣>という皇族最高のポストを贈ったのだ。不比等は策士。自分の地位を強化するためには手練手管の限りを弄した。持統女帝と不比等と組み、草壁を立太子させるために、そして草壁が若くして世を去ると、遺児の<軽皇子>を立太子させるために…。

だが悲劇が起きた。ようやく天皇(文武)になった<軽皇子>が25歳の若さであっさり死んでしまった。不比等が長屋王の<高貴>な地位(政治力)に対抗できたのは<天皇>文武の<義父>だったからだ。そのために娘を後宮に入れた。だが肝心の<天皇>を失った。

不比等は684年、天武が崩御すると、草壁を後継者にするために実力・人望に優れた<大津>を<謀反>と詭弁を弄して天武の死後僅か23日で葬った。そして皇位にもっとも近い存在だった高市に太政大臣を贈って<懐柔>、持統女帝を擁立した。高市が即位しては<軽>の立太子が望めなくなるからだ。<女帝>は<中継ぎ>…。不比等の<傀儡>だった。

そうまでして頑張った<軽>の立太子。ようやく697年に待望の文武天皇が誕生した。不比等は<13年>も辛抱した。だが文武も早死に…。707年、僅か<10年>の天下だった。
確かに不比等はその間に女帝や一人前とはいえない天皇(文武)の目を盗んで「大宝令」を制定、天皇を宗教的存在に祭りあげ、政治の実権を有力貴族の合議体の太政官に移し、自分が実権を握った。しかし、天皇は<象徴>ではあっても必要な存在だった。

不比等最大のピンチ。文武の後継…。不比等はもちろん<草壁>系にこだわっていた。実権を手放したくない。だが後宮に送り込んだ娘・宮子が生んだ<首>皇子はまだ7歳。
衆目の見るところ皇位を継ぐべき人物は<長屋王>だった。持統と不比等が与えた縁組で得た<高貴>な血筋(地位)は天皇の<文武>を陵駕するほど。しかも長屋王の正妻・吉備内親王は文武の妹。長屋王は34歳の男盛り。誰が見てもこれ以上の適任者はいない。

だが不比等は長屋王を拒否した。<政界の最高実力者>だった不比等が望んでいたのは権力から遊離、象徴化・宗教化された天皇。不比等の<傀儡>となり、すべてを彼に委ねる人物。32歳の長屋王には大きな<個性と実力>がある。不比等が<許容>するはずはない。

不比等は長屋王を拒否、自分が側近として仕えた草壁系の維持を狙った。文武の遺児<首>皇子はまだ7歳。幼少の天皇の先例はない。草壁が死んだ時の<軽>皇子も奇しくも同じ7歳。不比等が思い出したのは7歳の<軽>の成長に期待、祖母<持統>を女帝に擁立したこと。
今回も7歳の<首>に代え、祖母を即位させる。簡単にいえば<中継ぎ>。実力者・不比等の意思は直ちに実行に移された。亡き<草壁>正妻の即位。<元明>女帝の誕生だ。

だが<元明>と<持統>との間には決定的な違いがあった。持統女帝の場合、草壁はたった一人の子ども。だが元明女帝には氷高・吉備と娘が2人いた。しかも吉備の<夫>は<長屋王>だった。
不比等にさらに不利だったのは長屋王の妻<吉備>皇女には<子ども>=元明女帝の<孫>が大勢いた。<元明>が不比等の期待通り、皇位を<首>皇子につないでくれる保証はなかった。

最近、長屋王邸跡の発掘調査で大量の木簡が発見された。学会をあげて解読に取り組んだ結果、707年の平城遷都の際、貴族に与えられた邸宅の模様が分かった。なんと<元明>女帝は氷高・吉備の娘2人を内裏の間近に住まわせ、家政を共にしていた。つまり<長屋王>と一緒に生活していた。非常に親密な関係。―――「不比等がこの関係を知らなかったはずはあるまい」と大山誠一教授(「聖徳太子の<誕生>」112頁)。
しかし、他に<選択肢>はなかった。不比等は長期的視点に立って戦略的な布石を打つ。それこそが<聖徳太子><伝説>の<捏造>。大山教授は「聖徳太子の<誕生>」と呼ぶ。

大山教授は不比等と長屋王の2人を次のように評している。「権力に執着し、それを法と制度と時には謀略を駆使して実現しようとした不比等と異なり、生まれながらにして文武・聖武を上回る高貴性を有して、いつの間にか権力中枢に身を置くことになった長屋王は本来政治権力そのものであるはずの法と制度に対する認識を欠いていたようである」―――。

不比等は「大宝令」を定め、天皇中心の<律令国家>=<君・臣・民>の階級秩序を構築。「日本書紀」で「憲法17条」を聖徳太子が作ったと主張。「和を以て尊し」と臣下の<精神>を説いた。<美化>した<聖徳太子>伝説も「日本書記」で描き、推古<女帝>を補佐する<偉大>な<皇太子>と讃美した。聖徳太子が<皇太子>なら<皇太子>の重要さが徹底できる。
しかも聖徳太子が補佐したのは推古<女帝>―――。皇太子<擁立>に苦労した不比等。<女帝>を利用した不比等。<法と制度と謀略>の不比等。
―――これが火山の<主張>の中核…。明日からさらに具体的に追求します。(続く)

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