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「『小泉の件はまずかったな』。思わず苦虫を噛み潰したのは、鳩山邦夫総務相である。郵政民営化の推進派を不利に追い込む『かんぽの宿』疑惑。その追及で正義のヒーローとして勢いづいていたのに、『小泉のせいで、話がややこしくなった』と周囲に漏らしたのだ――。(2月)12日、小泉元首相が放った麻生批判が波紋を呼んでいる。オセロゲームの石を一気に裏返すような勢いで、党内の流れを一変させた」――。「『支持率ヒトケタ政権』の末路。ポスト麻生、小泉の決断」を総力特集した「週刊文春」2月26日号の冒頭だ。
小泉元首相を自民党幹事長で支えた自称<最強のイエスマン>武部勤・党改革実行本部長は「週刊文春」に語った。「麻生さんの発言は逆クーデターですよ。小泉(元)総理は政治生命を賭して、郵政民営化はあらゆる改革に繋がる本丸だと言って、選挙に打って出たわけです。マニフェストや法案には、郵政の4分社化も入っていた。それを麻生さんは多くの国民は知らなかったと言い、党内には小泉構造改革を全否定しようという動きがある。党内の造反組が意見して、完全に元に戻そうとしている」(「週刊文春」25頁)。
だが火山が見るところ、この逆コースの保守反動こそ国民の反感を買い、麻生内閣と政府・与党を<断末魔>に追い込んでいる。それに気付かぬトンチンカンは気の毒なほど。
「総選挙で混迷を断て」――。本日2月23日の「日経」1面。編集委員N氏の署名記事の見出し。「麻生内閣の支持率低下に歯止めがかからない。特に不支持率80%という今回の結果は衝撃的だ。麻生政権は世論から不信任を受けたともいえる水準である」と始まる。
「定額給付金や郵政民営化をめぐる発言のぶれ。盟友の中川昭一氏を財務・金融担当相に起用し、ろれつの回らぬ記者会見で、国際的な批判を浴びた人事の失敗。後手に回る危機対応と説明能力の弱さ……。低支持率の責めをまず負うべきは首相自身だ。『戦後最悪の経済危機』に処方箋を示すべき政治が本来の役割を果たせず、市場の足を引っ張る」――。火山も、まったく同感だ。
「日経」とテレビ東京が共同で実施した「世論調査」(2月20日〜22日)によれば<不支持>の理由は「指導力がない」――。前回から9ポイント上昇して60%で最も多い。続いて「安定感がない」が51%、「政策が悪い」が43%――。「景気悪化が深刻になる中、有効な対策が実行できない政府・与党への不満を反映している」と解説。まったく正しい。
麻生首相を筆頭に「郵政民営化」を見直そうという鳩山邦夫総務らの悪あがき!実は<造反組>の復権狙い。<特定郵便局長会>の<票>が目当て。国民70%以上が反対という「定額給付金」のバラマキも、彼らは<票>になると信じ込んでいる。だが本当は逆効果!
「麻生太郎首相は施政方針演説で小泉純一郎元首相の改革路線と一線を画す姿勢を示す。麻生カラーを強く打ち出す試みの一つが小泉改革との決別。象徴的なのが阿倍晋三元首相、福田康夫前首相が引き継いできた『国と地方の基礎的財政収支の2011年度黒字化』への言及が一切なくなること。代わり強調されるのが消費税を含む税制抜本改革。『11年度までに必要な法制上の措置を講じる』とし、経済が好転すれば11年度から消費税増税に踏み切る構えを示す。消費税をタブー視していた小泉元首相と大きく異なる」。1月28日の「日経」。
「郵政民営化の旗振り役である小泉純一郎元首相が(2月)12日、麻生太郎首相の度重なる民営化見直し発言への沈黙を破り、せきをきったように怒りをぶちまけた。このままでは次期衆院選は『戦えない』とまで言い切り、<反麻生>ののろしをあげた。首相と距離を置く『小泉改革継承』派を勢いづけるだけでなく、首相の求心力低下に拍車をかけそうだ」と2月13日の「日経」朝刊。誰だってそう思う。思わないのは<断末魔>の連中。もう何も見えない。聞こえないのだろうか。
なぜ<郵政民営化>か――。小泉純一郎にはこんなエピソードがある。昭和47年の初当選以来、昭和60年代まで小泉が財政や金融をエリアとする大蔵畑一筋で歩いてきたのは大蔵省出身何度も蔵相を務めた福田赳夫元首相の影響が強い。昭和50年代後半、党の財政部会長だった自民党の大原一三(衆院議員。元農水相)が、副部会長を務めた若き日の小泉を、こんな風に語っている――。
「リーゼントスタイルで洒落た若造がいると思った。言うことが面白かったよ。その頃から『財投をゼロにしろ』『こんなムダはやめろ』などと言っていた。二人で初めて特殊法人の整理みたいなことを手がけたが、成功しなかった」。当然だ。財投も特殊法人も官僚と族議員の<利権>の温床。一介の議員が手を突っ込めるようなものではない<聖域>だった。
だが<郵貯><簡保>を主要な<原資>とする<財投>こそ、今日の<1091兆円>(GDP
2倍>の国と地方の借金を生み出し、官僚の天下りなどムダと腐敗を作った<元凶>だ。
「小泉は自民党の派閥政治を否定しながら総理大臣になった。痛みを伴う経済改革の必要性を強調しながら爆発的な人気をえたのである」(ジェラルド・カーティス「永田町政治の興亡」新潮社・8頁)。「小泉改革が目指すものは旧来型の自民党政治の破壊。派閥による党内の秩序、当選回数主義による人事、下からの積み上げによる政策決定など55年体制を突き崩そうしている」(日本経済新聞社政治部「政治破壊(小泉改革とは何か)」・2頁)。
「前回の総選挙で与党が3分の2の議席を獲得できたのはどういうことだったのか」とロシア訪問中の小泉元首相が記者団に語った。麻生首相も鳩山総務相も深刻に反省すべきだ。
(平成21年2月23日)
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