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「ダスゲマイネ」のヴァイオリニストは火山の見るところ、かなりデフォルメされた虚構。ただ「親父は地主か何かで、かなりの金持ちであるらしく…様々に服装をかへたり…地主の倅の贅沢の一種…二人で飲み歩いてゐると勘定はすべて彼が払ふ…私との交際は、はじめっから旦那と家来の関係…その頃の私は金魚の糞…無意志の生活」というのは事実だろう。ダスゲマイネの世界は荒んだ青春。主人公の佐野次郎(太宰の分身)は事故で若死に。太宰も実名で登場するが、ヴァイオリニストも大学8年という放蕩ぶり。実像ではない。
太宰の生家は凄い金持ち。でも太宰の自堕落はもっと凄く、最初の「晩年」で「私はこの短編集一冊のために十箇年を棒に振った…数万円(今なら数億円)を浪費した…長兄(文治・後の県知事)の苦労に頭が下がる」とある。一年間で数千万円、十年間で数億円の浪費では勘当されて当然だろう。太宰の面倒を陰に陽にみた義弟の父。家内の話では正妻・美知子の著書に、その消息と感謝の言葉があるという。
太宰記念館の近くに銀行がある。運命の不思議、銀行マンの義弟は、ここの支店長で定年を迎えた。その妹夫婦と今回、青森で一夜、飲み語りあった。
ある時期を境に、火山は太宰を全く読まなくなった。嫌いになってしまったのだ。ただ太宰の生家・津軽から戻り、改めて「思い出」(全集第1巻)の<赤い糸>を思い出した。
<おわり>
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