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「補正凍結、3兆円超」――。「政府が18日着手した2009年度補正予算の一部凍結で、3兆円超の財源が捻出(ねんしゅつ)できるとの見方が浮上してきた。地方自治体向け以外の基金(2兆2千億円)の一部や官庁・独立行政法人の施設整備費6千億円などが対象。政府はこれらを子ども手当など民主党のマニフェスト(政権公約)実現のための財源に充て、2010年度予算に反映させたい考えだ」(9月19日「日経」トップ記事)。
早くも<脱>官僚の成果が出てきた。スピード感は重要!しかも的を射ている。「後期高齢者医療」廃止。「八ツ場ダム建設」中止。「核密約調査」を命令――。「私たちはまず、旧来の行政の悪弊を絶つことが新政権の役目だと考える。つまり、行政の大掃除である。目に余るムダ遣い。『省あって国なし』のタテ割り行政。前例踏襲主義。政治家、官僚、業界のもたれ合い。ここからの脱却は既得権益とはしがらみのない新しい政権だからこそ可能であり、政権交代の大きなメリットでもあるからだ」(9月17日「毎日」<社説>)――。
「閣議を事前におぜん立てしてきた事務次官会議を廃止する点も注目したい。会議は全員一致が原則で一省庁でも反対すれば成案がえられず、改革が進まない要因と指摘されてきた。廃止されれば首相や閣僚の権限は間違いなく強まるはずだ」と続く。火山、大賛成!
<脱官僚依存>を掲げる<鳩山>内閣。目玉「国家戦略室」は副総理の菅直人の担当。菅が厚生労働大臣を務め上げた体験を活かして書いた「大臣」(岩波新書・1998年5月)を読んだ。火山、11年前に大いに共感。菅直人には存分にウデをふるってほしい。「大臣」(岩波新書)には、官僚に取り込まれ、操られる大臣の実態が克明に綴られている。菅直人は当時から「事務次官会議」の弊害を痛烈に批判していた。いよいよ「改革」の時が来た。
「政治主導へ政策通起用」――。「政府は18日、鳩山内閣の副大臣22名と政務官25名の人事を決めた。それぞれの政策分野に精通する専門家や論客を配置したのが特徴だ。内閣の政策決定の一元化に向け、与党側の窓口にもなり、政権内の重みも増す。『脱官僚』の担い手として、閣僚―副大臣―政務官の政治主導ラインを強化する狙いだ」(19日「日経」)。
「民主党は、政権を取れば、与党議員百人以上を副大臣、政務官などとして政府に入れ、政策立案を主導し、国会審議は国会議員だけで行うとしている」(大下英治「民主党政権」−鳩山民主、新政権運営シナリオとその舞台裏―KKベストセラ−ズ・27頁)。事務次官会議を廃止、<脱完了依存>=<政治主導>を実現する決め手が、このチーム運営だ。
「閣議は国の行政の最高意思決定機関である」(菅直人「大臣」岩波新書・24頁)。だが実際の閣議、議論はない。「(次々と回覧されてくる書類(案件)に署名する)サイン会だけの閣議と、その後の閣僚懇談会の『二部構成』になったのは、細川内閣からという。それまでは、案件処理の間に、けっこう議論というか発言があったそうだ(これを不規則発言というそうだ)。それが細川内閣の時、総理からの発案で案件処理(つまり署名)は効率的に手早くすませ、その後で自由に議論しようではないか、となったという」(菅・31頁)。
細川総理としては、自由な議論に重きをおきたかったはずだが、現実には案件処理が重視され、議論は消えてしまった。「不規則発言」と決め付けられては、自由な発言ができるはずがない。「閣議は内閣法で決められた会議だが、閣僚懇談会には法的根拠はない。極端にいえば、大臣が集まっておしゃべりをしているだけの話である」(菅・31頁)。
「国の最高意思決定機関がこのように形骸化してしまっているにもかかわらず、何の不都合もないかのように国の行政が動いているのはなぜか、よく言われてきたのが、『官僚が優秀だから』という政治家不要論である」(菅・32頁)。
「現実には、事務次官会議が国の行政の最高意思決定機関となっている。それが、事務次官会議で全員一致で賛成したものしか、次の日の閣議に上げられないからだ」(菅・33頁)。
恐るべきは、事務次官会議には何の法的根拠もないこと。慣例で開かれているに過ぎない。
菅直人「大臣」(岩波新書)によれば、細川元総理の「決断」を石原信雄(元官房副長官。細川内閣から宮沢内閣まで、6人の総理に仕えた)が高く評価したという。「それは彼ら官僚にとって仕事がやりやすくなったからであろう」(菅・31頁)。実にフザケた話だ。
石原信雄は著書「首相官邸の決断」中央公論社)で「『総理大臣はいなくても代理がいれば閣議はできるんですが、官房副長官がいないと閣議ができないんです』と述べている。閣議の前日に行われている事務次官会議には、閣僚は誰も出席していないが、事務の官房副長官は、出席し、会議を主宰する。つまり、事務次官会議と閣議の両方に出ているのは、事務の官房副長官だけであり、副長官がいなくては閣議が段取り通り進まない」(菅・29頁)からだ。だが、菅直人が指摘するように「まさしく変な話である」(29頁)。
「問題なのは閣議が現在のシステムでは各役所から上がってきたものを了承する場にしかならない点だ」(菅・32頁)。小泉・竹中平蔵コンビの「経済財政諮問会議」は<官邸主導>(トップダウン)を狙った。事務次官会議(ボトムアップ)の問題を克服しようとした。
「閣僚は本来、国務大臣として国政全般について意見を述べることができるが、事務次官はあくまでその役所の代表。国政全般に責任を持っていない」(菅・35頁)。それなのに「全員一致」が原則。<拒否権>がある。だから<国益>より<省益>が優先されてしまう。
(平成21年9月19日)
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