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Lieben Sie Musik?(音楽はお好きですか)と女性の綺麗なドイツ語。バック・グラウンド・ミュージックはメンデルスゾーンの「歌の翼に」。ピアノとオーボエの美しい旋律が流れます。火山が半年間、勉強したラジオ講座「歌で楽しむドイツ語」。とうとう「リリー・マルレーン」を勉強する日が来た。
それにしても講師の田辺秀樹(一橋大教授)は凄い。東大のドイツ文学科修士課程を卒業、ボン大学に2年留学、著書に「モーツアルト」に関するものが2冊ある。音楽には強いのです。NHKも良い講師を発掘した。語り口もソフトで重厚、好感が持てる。
さて「リリー・マルレーン」。聴いていて震えが来る。歌うのはラーレ・アンデルセン。1938年(昭和13年)吹き込みのオリジナル盤。ベルリンの酒場やキャバレーで歌っていた目立たない歌手だった。兵営ラッパが鳴り、軍靴の響きが聞こえそうな演奏。
歌詞は文筆家で美術評論家でもあったハンス・ライプ(1893〜1983)。第一次大戦中のドイツ軍兵士の時代に書いた。軽音楽のノルベルト・シュルツェが1938年(昭和13年)に詩集で発見、曲をつけたが、発売した年には700枚程度しか売れなかったという。
ところが第二次大戦が泥沼となった1941年(昭和16年)の頃、ドイツ占領下のベオグラードのラジオ局が「若い歩哨の兵士の歌」として放送した途端に大ヒット。ドイツ兵士の間だけでなく北アフリカ戦線、敵側の英国軍兵士の間でも人気が高まった。秘められたロマンが敵味方の別なく、胸を打ったのだ。
兵舎の 大きな門の前に 街灯が立っていた
それは今も そこに立っている
だから そこで ぼくらは再会しよう
街灯の傍らに 立つことにしよう
以前のように リリー・マルレーン
以前のように…
<以前のように>はドイツ語で<wie einst>。ヴィー・アインストと発音する。wieは英語ならas。そしてeinstはonce; one or some day<かつて 以前>という過去の意味の他に、実は<いつの日か>という将来の意味もある。ここが<たまらない>ところ。
歌詞には<かつての日の忍び逢い>の思い出が切々と歌われている。<Da sagten wir auf Wiedersehn>(また逢おうと言って別れた)。アオフ ビーダーゼーン(さよなら、またお逢いしましょう)。お馴染みのドイツ語です。
でも最後の第5節には<静かな空間から 大地の底から 夢のように 君の恋する唇が 僕をいざなう>とある。死の寸前に戦地で見た一瞬の夢なのです。胸に迫る。
第二次大戦が生んだ最大のヒットソング。しかし内容は好戦的なものとはほど遠く、愛する者との別れの悲しみを歌っています。
放送では、かのマレーネ・ディートリッヒのレコードも聴かせてくれました。一世を風靡したディーバ(歌姫)の懐かしい歌声。1960年(昭和35年)の録音。戦後15年、ナツメロ復活でしょう。ひたすらロマンチック。甘く切ない妖艶な響きがします。
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