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農協の大罪

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「横浜みなとみらい」で開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議は11月14日、首脳宣言「横浜ビジョン」を採択して閉幕した。議長を務めた菅直人首相はTPP(環太平洋経済連携協定)の交渉参加を表明している米国など9カ国の会合にオブザーバーとして出席、関係国と協議を開始するとの政府方針を説明した。
オバマ大統領は14日のTPP首脳級会合の議長を務め「来年のAPECまでに結論を出したい」と呼びかけ、他の首脳の賛同を得たという。だが日本は…。

「いまTPPに参加すべきか」(「日経」11月4日)で全国農業協同組合中央会(全中)の富士重夫専務理事は「TPPと農業は両立しない」と「開国と農業再生を両立させる大戦略」と胸を張る菅直人首相の方針に<猛反発>している。「日経」記者とのインタビュー。

――なぜTPP参加に反対なのですか。「(農産物生産が大きく減り)政府が掲げる食料自給率向上の目標と矛盾するからだ。TPPは原則、関税をすべて撤廃しなければならず、生産規模が大きく価格優位性もある米国などの農業は対抗できない。TPPと農業を両立させる手立てはないのではないか」。

――農業の生産性向上を進めても保護は必要なのでしょうか。「ある程度必要だ。米国などと同等の国際競争力を持てといわれても、地形などの条件が違う。だからといって、他の国に食料供給を頼って自国の農地をつぶしてしまうのも食糧安全保障上、不安がある」。一見、もっともらしい。だが<巨大>なウソがある。山下一仁「農協の大罪」(宝島社新書)は大変な良書。山下氏は、なんと<前農水省農村振興局次長>――。

「農業の衰退に歯止めがかからない。食料自給率は1960年の79%から40%までに低下した。日本農業には、かつて不変の三大基本数字といわれるものがあった。農業面積600万ヘクタール、農業就業人口1400万人、農家戸数550万戸だ。明治初期の1875年から1960年までの85年間、この3つの数字に大きな変化はなかった。大きな変化が生じたのは、皮肉にも農業基本法(農地維持と食料安全保障。零細農業の構造改善が目的)が作られた61年以降だった。それは農業にとっては好転ではなく、暗転だった」(22頁)――。

「60年から2005年までの50年の推移を見ると、GDPに占める農業生産は9%から1%へ、農業人口は1196万人から252万人へ、総就業人口に占める農業人口の割合は27%から4%へ、農家戸数は606万戸から285万戸へと、いずれも減少している」(22頁)。

「貿易自由化には反対」と農業関係者は抵抗している――。「なぜか。800%近い米の関税の削減を最小限にとどめ、高い関税率を維持したいからである。なぜ高い関税が必要なのか? 国内の高い米価を維持したいからである。高い米価は誰のため、何のために必要なのか? 農協は米価が高ければ販売手数料も高くなるし、肥料や農薬も農家に高く売れ、また手数料を稼げるからである」(18頁)。

「米の減反政策は、1970年までに344万ヘクタールまで増加した水田面積を、254万ヘクタールにまで減反させてきた。農政トライアングル(JA農協、農林族、農林議員)は、米の既得権を確保したい農協の圧力に押され、需要が低下する中でも高米価を維持しようと減反をさらに拡大させようとしている」(169頁)。――これが「食料自給率」だの「食料安全保障」だのと、騒いでいる農政トライアングルが実際にやっていること。こんな<欺瞞の仮面>を、剥ぎ取らないとダメ。

TPPと騒ぐが、貿易自由化とは関係なく、日本の農業は再生させないとダメ。山下一仁「農協の大罪」(宝島社新書)を読むと、<専業農家>の育成、<農地>の集約・大規模化、<国際競争力>の強化、<法人化>など新規参入の奨励など、ヒントが一杯ある。<農政>を変えれば<再生>は十分可能。それを妨げる<利権構造>が「農政トライアングル」…。GDP<1%>レベルの農業。そこに巨大な<政治力><利権>があって解決できない。「総理ならできる。総理だからできる」。小泉純一郎の言葉だ。菅直人よ、蛮勇を奮え!

「自民党は環太平洋経済連携協定(TPP)の参加について、本格的に党内議論を開始する。TPPへの対処方針をまとめ、来春の統一地方選で農業振興を訴える。近く石破茂政調会長をトップとする『TPP対応検討会』の初会合を開く。自民党内にはコメ市場の部分開放を決めたウルグアイ・ラウンド合意に伴い、6兆円の対策費を投じたにもかかわらず、農業の衰退を止められなかった反省がある。TPPの議論や統一地方選の公約作りをきっかけに、党の農業政策を振り返り、改めて農業の強化策を考える狙いもある」(「日経」11月21日)。

「2008年9月に行われた自民党総裁選で、後に農林水産相となった農政通の石破茂候補は、汚染米問題の核心は高い関税で農業を守るという農政の根幹にあり、これを見直すべきだと主張した。汚染米と関税はどのように関係しているのだろうか」(「農協の大罪」3頁)。

農業を保護することと関税は別。「目的とすべきは農業の発展と国民への食料の安定供給。にもかかわらず、WTO(世界貿易機関)やFTO(自由貿易協定)交渉で、政府はGDPに占める割合がたかだか1%にすぎず、また生産額もパナソニック1社にも及ばない農業のために、他の経済セクターの利益を無視してまでも、さらに世界の中で孤立してまでも、徹底的に米などの農産物の関税削減に反対している」(3頁)――。「農政トライアングル」の<呪縛>からの脱却!菅直人政権の覚悟・決断が求められる。
(平成22年11月21日)

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