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「なぜ、税制と社会保障の一体改革が必要なのであろうか。その理由として、まず財源不足の早急な解消が挙げられる。現在、社会保障給付費は94.1兆円(2008年度)であり、その財源は、年金保険料、健康保険料、介護保険料をはじめとする社会保険料のみならず、国および地方自治体の一般会計に大きく依存している。
もっとも、国も地方も、そうした社会保障給付への歳出である社会保障への歳出である社会保障関係費の全ては税で調達し切れておらず、国でいえば特例国債(赤字国債)を毎年度発行することによって賄っている。財政法第4条では、建設国債に限って発行が認められているにもかかわらず、特例法を国会に提出し、赤字国債を発行することが常態化している。将来世代に国債という重いツケを残しながら、年金、高齢者医療、介護などの給付を行うという極めてモラルの低い財政運営に陥っている。こうした状況は早急に解消されなければならない」(西沢和彦「税と社会保障の抜本改革」日本経済新聞出版社・19頁)。
「極めてモラルの低い財政運営」「(財政法が認めていない)“赤字国債”発行の常態化」…。ここに重要なメッセージが秘められている。西沢和彦は財界中枢に連なる「三菱総研」の“主任”研究員。一橋大卒で東大法ではない。だが2006年から「社会保障審議会年金部会委員」…。自民党元幹事長・中川秀直「官僚国家の崩壊」(講談社)が指摘する「日本の中枢に巣食う<ステルス複合体>」に連なっている。「ムラの掟」に逆らえばウラ八分を覚悟せねばならない。だからミエミエの「内部告発」ができない。だが黙ってもいられない。
「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹部が証言!今話題のベストセラー・古賀茂明「日本中枢の崩壊」(講談社)。「中枢」と「中枢」の連チャン。偶然だろうか。
「改革が遅れ、経済成長を促す施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、『政府閉鎖』すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる」と古賀。
2011年度の一般歳出の予算規模は「92.4兆円」。しかし、西沢は「54.1兆円」と書く。なぜか。差額38.3兆円は政府が自由にできない国債費21.5兆円と地方交付税交付金等16.8兆円だからだ――。政府の意思=政策を“反映”できる「一般歳出54.1兆円」のうち“53.1%”に相当するのが「社会保障関係費」。その7割強の“28.7兆円”が「年金医療介護保険給付費」…。つまり「極めてモラルの低い財政運営」の“元凶”――。「税と社会保障の一体改革」を“不可避”にしている“元凶”なのだ。
ではなぜ、深刻な状況に陥ったのか。「背景の一つは、経年の税収の低下と社会保障関係費の増加、および、その乖離を放置し続けたいわば不作為にある。一般会計の税収はピークであった1990年度の60.1兆円から2011年度は40.9兆円(予算ベース)まで落ち込む見通しだ。減少幅19.2兆円のうち3.1兆円は、2006年度の三位一体改革による国から地方への税源移譲によるものであり、(財政赤字とは無関係。いずれ解説)それを考慮しても約16兆円の税収減である」(西沢和彦「税と社会保障の抜本改革」日本経済新聞社出版会・20頁)。
では2011年度の歳出はどうなるか。社会保障関係費は1990年度の11.5兆円から28.7兆円へ17.2兆円増加する見通し。この社会保障関係費は2008年度22.6兆円だったものが、2009年度に一気に28.7兆円に急増、2010年度以降もそのまま高水準が続いている。「日本の社会保障給付は、対象が高齢者向けに偏重しており、社会保障関係費は、高齢者人口の増加と歩調を合わせて増える構造となっている」(西沢・21頁)。
高齢者は今後も増え続け、現在の2930万7千人(2010年5月)から2025年には3635万4千人になると推計されている。現行制度のままであれば、社会保障関係費はさらに増える。「もう一つの背景は、税制と社会保障が『同じテーブルに同時に』ではなく『異なるテーブルで異なる時期に』議論され、しかも議論全体が低調であることに求められる。その典型は、全国民共通の年金である基礎年金の『国庫負担』割合の引き上げであろう」(22頁)。
「基礎年金」には大問題がある。火山は「恨み骨髄」だ。「年金」とは名前ばかり。実は「国民年金」の慢性的赤字を「穴埋め」するため「厚生年金」と「共済年金」から“給付財源”を収奪するため、1985年にコッソリ新設された。火山を含むサラリーマンは“莫大”な損失を押しつけられた。いずれ解説するが、許しがたい極悪制度。国民年金保険料の未納は、加入者の“4割強”!厚労官僚の怠慢は「国家的犯罪」。だが「基礎年金」で解決された。
「社会保障制度審議会の委員であり共済組合連盟会長であった今井一男は次のように述べている。『制度審の案は最後に大河内会長(一男。東大名誉教授)と私が大平総理と会い、もし社会保障にもノーベル賞があれば、それをもらえる案だと大平君に吹きまくった』(西沢和彦「年金制度は誰のものか」日本経済新聞出版社・10頁)と自慢の極悪制度なのだ。
「2004年の年金改正で、基礎年金の給付財源に占める国庫負担割合を従来の3分の1から、2009年度までに2分の1へ引き上げられることが決められた。所要財源は、年間約2.5兆円である」(抜本改革・22頁)――。この「2分の1」がまた大問題。紙数が尽き、稿を改めるしかないが、「『税と社会保障の一体改革』というが消費増税で、一般会計の穴埋めだけではないか」と西沢が“弾劾”したくなる「大きな一因」となっている。ミエミエの「内部告発」はできない。しかし「良識と良心」を問われても困る。彼の苦衷は次回で…。
(平成23年9月19日)
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