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「なぜ税と社会保障の一体改革なのか」(西沢和彦「税と社会保障の抜本改革」日本経済新聞社・19頁)――。社会保障給付費は現在94.1兆円(2008年度)。「財源」は年金保険料、健康保険料、介護保険料をはじめ社会保険料だけでなく、国と地方自治体の一般会計に大きく依存している。国と地方で1000兆円超!膨大な借金と運命共同体なのだ。
2011年度一般歳出の予算規模は92.4兆円。しかし、西沢は54.1兆円と書く。差額38.3兆円は政府が自由にできない国債費21.5兆円と地方交付税交付金等16.8兆円だからだ――。しかも一般歳出54.1兆円の53.1%が「社会保障関係費」の28.7兆円。うち「年金医療介護保険給付費」が21.0兆円。これに対し「税収」は40.9兆円しかない。「その他の財源」で7.2兆円を捻出しても、税収を上回る44.3兆円は「公債金収入」。つまり「借金」――。この現状を西沢は「極めてモラルの低い財政運営」(20頁)と呼ぶ。
なぜ、こんな深刻な状況に陥ったのか。「一つは経年の税収低下と社会保障関係費の増加。乖離を放置し続けた不作為。一般会計の税収はピークだった1990年度の60.1兆円から2011年度は40.9兆円(予算ベース)まで落ち込む。減少幅19.2兆円のうち16兆円は税収減。3.1兆円は2006年度の三位一体改革による地方への税源移譲である」(西沢・20頁)。
2011年度の社会保障関係費は、1990年度の11.5兆円から28.7兆円へ17.2兆円増加する。2008年度22.6兆円だったものが、2009年度に一気に28.7兆円に急増、2010年度以降も高水準が続いている。「日本の社会保障給付は対象が高齢者向けに偏重しており、社会保障関係費は、高齢者人口の増加と歩調を合わせて増える」(西沢・21頁)。
なぜ「税と社会保障」の一体改革なのか――。「単に諸外国比で低水準にある消費税率の引き上げにより、国の一般会計の穴埋めという狭い意味だけに用いられていることも少なくない」(西沢・18頁)。一方で「社会保険料の行きづまり」もある。これが「深刻」――。西沢は「負担と受益の対応関係の希薄化」(負担しても受益が期待できない)が原因と指摘。これが「社会保険」への不信による空洞化(不払い・脱退・未加入)と分析する。
「負担と受益の対応関係の希薄化」の原因は3つ――。第一は「社会保険料が社会保障制度間の所得移転に用いられるようになった」(西沢・24頁)。モットモらしく聞こえる。だが簡単にいえば<流用>。特に許せないのが「公的年金における<基礎年金拠出金>(1986年)導入」…。国民年金「未払い」が激増。赤字がサラリーマンにしわ寄せされた。基礎年金拠出とは厚生年金と共済年金のピンハネ――。本質を知って、火山「怒り心頭」。
原因の第二は「少子高齢化に伴う、年金の収益率の低下」(西沢・24頁)――。年金は約40年保険料を払い続ける。だが生涯に払い込んだ保険料(負担)と「元本+利息」(給付)は見合っているか。厚労省は「若い世代でも2.3倍の給付負担倍率になる」と公表している。だが実際は「単身世帯なら0.5倍、夫婦世帯(妻は専業主婦)なら0.8倍かそれ以下」(西沢・25頁)が等身大――。恐るべきアンバランス(対応関係の希薄化)が起きている。
「(アンバランスの)根本的な原因は、著しい少子高齢化が進むもと、公的年金財政が賦課方式を基本に運営されているためである。賦課方式とは平たくいえば、当該年度に集められた保険料は、将来のために積み立てられるのではなく、そのまま当該年度の高齢者の年金給付に充てられる財政方式である。このように、年金の負担と受益の関係は、若い世代にとって、もはや大きく崩れている」(西沢・25頁)――。恐ろしい「空洞化」だ。
「負担と受益の対応関係の希薄化」――。原因の第三は「基礎年金、全国健康保険組合、国民健康保険および後期高齢者医療制度などに『政府部門間移転』(後述)として『国庫負担』や『公費負担』が投じられていること。この仕組みによって負担と受益の対応関係はより一層希薄化している。国の一般歳出(社会保障関係費)のうち年金医療介護保険給付費21.0兆円がそれである」(西沢・25頁)――。ブラックボックス!利権の温床かも…。
<希薄化>の具体例と「弊害」――。「たとえば、中小企業に勤める被用者が加入する協会けんぽには、6.7兆円の健康保険料のほか、約1兆円の国庫負担が投じられている(2008年度)。しかし、被保険者の側に立ってみれば、医療サービスという受益にかかる費用を認識するの『健康保険料』と『窓口負担』である。自分の財布から、その目的のために支払うお金で、費用を実感するのだ。約1兆円の国庫負担によって、協会けんぽの被保険者は、医療サービスという受益の費用を実際よりも低廉に感じてしまう」(西沢・26頁)――。
「即ち財政錯覚だ。これは医療サービスに対する過剰な需要の原因ともなる」(26頁)――。西沢はサラリと書く。だが火山、重大な「疑惑」を抱く。「過剰な需要の原因」…。「診療所待合室が溜り場」「乱診乱療」「薬漬け」――。患者や老人のモラルにすり替えているが、実態は政官業の癒着。族議員の「票とカネ」に化ける。医師会の既得権益。役人の天下り…。おいしい話に化けていないか。これら国家負担はすべて法制化されている。ウーン!
「政府部門間の資金移転」――。「税と社会保障の全体像を俯瞰するには、政府を中央政府、地方政府、社会保障基金政府の3部門に分けているSNA(国民経済計算)統計を用いるのが有効である」(西沢・34頁)――。残念ながら、紙幅が尽きた。詳細は次回に譲る。だが結論だけを急ぐと、3部門で「資金をタライ回し」…。これが「負担と受益の関係」を不透明にさせ、族議員・医師会の「既得権益」や役人の「天下り」の温床となっている。
(平成23年9月29日)
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