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「『古い日銀はぶっ壊す』と宣言したのと同じだった。3月21日、東京・日本橋本石町の日銀本店。総裁に着任して早々、黒田東彦(68)は『日銀は物価安定という主たる使命を果たしてこなかった。こんな中央銀行は日銀だけだ』と訓示し、職員らは凍りついた。直後には企画局長の内田真一(50)らを総裁室に呼び、こう告げた。『2年で2%の物価上昇率は達成できる。まず職員自身が信じろ。政策を総動員してほしい』。黒田は財務官時代から日銀を公然と批判してきた」と「日経」(4月23日)――。痛快だ。面白い!
「アベノミクスは<パラダイム・シフト>だ。<ガラパゴス>に安住してきた種が、外来種と遭遇、絶滅するような<愚>は、さっさと脱却すべき」――。これが火山の<信念>。
だが今度、副総裁に就任した岩田規久男の「リフレは正しい」(PHP)を読んでビックリした。黒田日銀が打ち出した「異次元金融緩和」はアメリカのFRB(連邦準備制度理事会)がリーマンショック後に実施して4年が経過。最近<実証>データが揃い、成功は保証されているようなもの。なぜ白川日銀が<傲慢>に無視してきたのか、唖然!
「日銀は<注文>ばかりして自分は<責任>はとらない」と岩田規久男は手厳しい。「日本にインフレ率は1980年代半ばからのバブル期にも1%以下だったから、安倍首相の主張する2%インフレはムリだ」とか「日銀が国債をこれ以上買うと、市場が日銀による財政ファイナンスだと考えるため、通貨の信認が揺らぐ」などと日銀は国会や国民を脅す。国会議員は経済の素人だから、日銀の言いなりになってしまう。これも岩田規久男の指摘。
「日銀はデフレから脱却もできないし、ハイパーインフレも阻止できない。主要国の中央銀行は皆インフレ率を中期的に2〜3%程度に収めているというのに、日本だけは、デフレしかハイパーインフレしかなく、その中間の2〜3%はないという」(岩田・111頁)。
リーマンショックのような金融危機が起きると、需要が急激に減り、デフレになる恐れがある。だから日銀以外の各国の中央銀行は<大胆>な「金融緩和」に踏み切った。その結果、「消費者物価」は上昇。上昇率は2〜3%くらい。一方、日本はデフレに襲われ、2010年半ばにはエネルギー価格を除く消費者物価は前年同月比で<1.5%>下がってしまった。
「政府、日銀の責任から経済学者の罪まで、日本経済の深層を語りつくす」と「文芸春秋」の最新号(5月号)に「安倍首相の理論的支柱」とされる浜田宏一イェール大名誉教授と数学者・藤原正彦の「対談」が載っている。藤原正彦が鋭く語る。「経済学の背後にある論理構造は数学とも重なるところがある。私には日銀の主流派がずっと唱えてきた『金融政策はデフレには無力だ』という論理は理解しがたいものでした。
この15年にも及ぶデフレ不況によって、日本国民は辛酸を舐めさせられ続けてきた。大卒の若者でも3人に1人は職に就くことができない状況が続いた。小学校から一生懸命勉学に励んできた若者が、社会から拒絶される。彼らが味わった疎外感はいかばかりか。また経済的な原因で自殺者も多数生み続けた。デフレを放置し続けてきた日銀の責任は重い。なぜ日銀はデフレを放置したのか」――。藤原正彦は続ける。「日銀は『ゼロ金利では国債を買ってもデフレに効かないし、既に国債は充分買っている』と言っていましたね」――。
「黒田は財務官時代から日銀を公然と批判してきた。英国留学で経済学を修めたが、東大法学部の在学中に司法試験に合格した法律家の顔も持つ。日銀法は理念に『物価の安定』を掲げる。長引くデフレに『日銀は法律違反』との信念は固い」(「日経」4月23日)――。
「『新体制の評価は出足で決まる。最初の1ヵ月がすべてだ』。就任前、黒田は腹を固めた。勝手の知らぬ組織での最初の関門は、正副総裁のもとで政策をお膳立てする『チーム黒田』の結成。周到に布石を打っていた。大阪支店長だった理事の雨宮正佳(57)を企画担当に呼び寄せた人事。3月18日付で黒田の就任前。周囲には白川方明(63)が最後に決めた人事だと受け止められたが、黒田が副総裁に内定していた理事の中曽宏(59)を通じて要望。
2001年の量的緩和、10年の包括緩和――。日銀の政策転換にはつねに雨宮の存在があった。
白川との間に微妙な距離が生まれ、昨年5月に企画担当から大阪に転じた。白川体制からの転換にはうってつけだった。人脈も広い。かつて日銀側と対立して絶縁状態にあった副総裁の岩田規久男(70)とも『意思疎通できる数少ない人材』(日銀OB)」――。
「日銀の黒田東彦総裁が打ち出した『異次元』金融緩和と『円安ドル高』の加速が焦点となった<G20>財務相・中央銀行総裁会議は、共同声明で『脱デフレと内需支援のため』と一定の理解を示した。露骨な日本批判はなく、『G20が円安容認』と受け止めた市場で円が売られ、<1ドル=100円>に一時迫った。 元財務官の黒田氏は、国際舞台での対話力も買われて総裁に起用された。突っ込みどころに先回りして追及を封じる周到な弁舌で、まずは順当にデビュー戦を飾ったようだ」と「朝日」社説(4月21日)――。
「19日昼過ぎのワシントン。黒田は20ヵ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議後の写真撮影では満面の笑み…。政策転換は急速な円安をもたらしたが、黒田は『デフレ脱却による内需の刺激が狙い』と主張。メキシコ財務相のビデカライは『クロダの説明に異論は出なかった』。知った顔が並ぶG20。休憩時間には精力的に各国を説得する姿があった。もくろみ通りとなった1ヵ月。だが長期金利の動きが不安定になるなど暗い影も差す。黒田は破壊者か創造者か。まだ評価を下すのは早い」(「朝日」)――。この論評、マンネリだ。
(平成25年4月23日)
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