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「与党も野党も、政治の責任を放棄している。そう言わざるを得ない」(朝日)…。「なぜ、全会一致とならなかったのか。情けない国会というほかない」(毎日)…。「この程度では『一票の不平等』をなくすには不十分だ。抜本是正はどうなったのか」(東京)…。いずれも4月24日「社説」書き出し。「0増5減…食い逃げは許されぬ」とは「朝日」タイトル。
衆院の小選挙区定数を「0増5減」する新区割り法案が23日、自民、公明両党の賛成多数で衆院を通過、今国会の成立が確実になった。法案は参院送付から60日経てば、憲法の規定で否決とみなされ、衆院の3分の2以上の賛成で再可決できる。成立は確実――。「だが、これで終わりだと考える国会議員がいるとしたら、心得違いもはなはだしい」と「朝日」が指摘する。火山も同感。翌24日3紙の「社説」をチェックしてみた。
「0増5減」は<違憲状態>を早急に解消する<緊急避難>措置にすぎない。国民や司法が求めているのは「抜本改革」――。「一票の格差」を根本から是正する。加えて「定数削減」「小選挙区と比例区のバランス」「衆参のあり方」も問われている。だが「与党内からは0増5減を実現すれば事足れり、という声さえ聞かれる」と「朝日」社説――。
「野党は反発。例によって責任のなすりつけ合いの様相。国民の国会不信は深まる一方だろう。野党が主張している抜本改革はまちまちで与野党が一致できる保証はない」(毎日)。「各党の意見はバラバラ。そんなことでは数の少ない野党の主張が通るはずがない。まずは野党同士が連携、妥協してでも与党を議論の土俵に引き込む。そのうえで、期限を切って改革への道筋をつけるべきだ。安倍首相のリーダーシップも見えない」(朝日)――。
昨年暮れの衆院選、各地高裁で「違憲」や「選挙無効」の判決が相次いだ。「0増5減」さえ実現できないようでは<最悪の事態>。だから「緊急避難措置」として「0増5減」が求めてられた。各紙もこれを押した。――「批判されるべきは民主党など野党。伊吹文明衆院議長に収拾を求めたにもかかわらず、強硬論が勝って歩み寄りのチャンスを自ら逃してしまった。民主党が提起した小選挙区で30、比例代表で50の定数削減。小選挙区は『1人別枠』を完全に廃して厳密に人口比例で配分する案は一つの考え方」(毎日)――。
「各種世論調査を見ても国民の関心が高いのは衆院の大幅定数削減。<5減>でお仕舞となれば、いずれ批判の矛先は自民党にも向かう。それを考え、自民党も野党に謙虚に歩み寄るべきだ。本来、全会一致が当然な法案で、衆院の数を頼みとする強引な再可決は避けるべき。与野党とも頭を冷やすことだ」(毎日)――。素直に読めば「与野党とも頭を冷やし、民主党案に結集すべき。安倍首相のリーダーシップに期待したい」ということ。
「同じ民主主義国なのに」(「産経」・3月7日)――。「『一票の格差』を米国では、どうとらえているだろうか。実は日米の間では、雲泥の差がある。米下院議員選挙で、ニュージャージー州の選挙区割りを違憲とした、1983年の米連邦最高裁判決がある。ある選挙区の投票価値を<1>とした場合、ある選挙区は<1.007>だった。わずか1.007倍の格差でさえ、連邦地裁は違憲と判断し、連邦最高裁もそれを支持したのだ」…。♪ナンタルチーア。
「新聞は最高裁裁判官を監視しているのか」(牧野洋「官報複合体〜権力と一体化する新聞の大罪」講談社・133頁)――。牧野洋は慶大卒のジャーナリスト。「日経」本社編集委員も務めたが、<メディア>の日米<格差>に愕然。職をなげうって米国に移住した。
「新聞報道で『裁く側』の扱いが小さい。司法権の頂点に位置する最高裁裁判官の任命を巡る報道でも、日米に雲泥の差が出る。個人的にも次の経験がある」(牧野・133頁)。
「総選挙日程が決まり、『今度こそ国民審査できちんと投票しよう』と自分に言い聞かせる。
『大幅な一票の格差はおかしい』とかねて感じていたので、『一票の較差に合憲判断を出したことがある裁判官を不信任にしよう』と思う。ところが、忙しさにかまけて下調べしないまま投票日を迎えてしまう。慌てて当日の朝刊を調べるが、案の定、一票の格差を合憲と認めたことがある裁判官が誰なのか、紙面のどこにも書いていない」(牧野・133頁)。
「ジャーナリズムの重要な機能は『権力のチェック』だ。司法は三権の一翼を担う巨大権力。その頂点に位置するのが最高栽裁判官。報道機関が大臣や国会議員を監視するのと同じように、最高裁裁判官を監視するのは当然のはずだが…。大新聞はそうは思っていないようだ」(牧野・135頁)――。この後、牧野洋は各社<社説>を紹介、チェックする。
「(最高裁裁判官の国民審査)裁判官の氏名さえ知らず、判断のしようがない、という人も多いだろう。『形骸化した制度』と指摘される所以」と結ぶ。火山も同感。だが――。
<既得権益>を巡る対立。「党利党略が絡む抜本改革の議論は、政党同士の話し合いで結論を導くのは難しい」(「朝日」社説・4月24日)――。「ならば首相の諮問機関である選挙制度審議会を立ち上げ、根本から検討するほかはない。残った国会会期をムダにしてはならない。与野党協議の場を設け、打開策を探るべきである。現在の定数配分をめぐる訴訟でも、全国の高裁から違憲や無効判決が相次いだ。今秋にも最高裁で決着がつく。国会が<自浄能力>を発揮する機会は、今しかない」――。「朝日」は結ぶ。
「自浄能力」…。好きな言葉だ。だがいつもここで<カベ>にぶつかる。党利党略に走り、バラバラを口実に<先送り>を繰り返す国会――。「この国民にして、この政府あり」(福沢諭吉「学問のすすめ」)。「自浄」は儚い期待か。でも今回こそ毅然と向き合ってほしい。
(平成25年4月26日)
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