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最後が<TPP>――。2週間前の4月13日、新聞各紙は「TPP、日米協議が決着!」と一斉に報じた。TPPが<国益>なのは「自明の理」!でも抵抗勢力が幅を利かせた。
「TPPに多くの農家・農民が<不安>を持つ」とメディアは騒ぐ。だがここには大きなウソがある。実は私の家内は青森の<農家>の生まれ。兄弟姉妹、従兄弟が青森に住み、コメも作る。彼らの暮らし、気持ちは私も知っている。「五能線」の五所川原が家内の郷里。駅前の商店街はいわゆるゴーストタウンに近い。だが彼らの不安はコメではない。
「こんな農協はいらない」――。「WEDGE」(2008年9月号)で山下一仁が論陣を張った。山下は2008年まで<前農水省農村振興局次長>。著書に「農協の大罪」「農協の陰謀」がある。いずれも「宝島社新書」――。「農村社会を崩壊させている」のは<農政トライアングル>!「JA農協、農林族、農林官僚」…。これが「農協の大罪」のエッセンス。「『農協の大罪』に反論するものは<農水省>にはいない」と山下一仁は断言する。「大罪」が出版されたのは2009年1月――。既に4年が過ぎている。
「農業の衰退に歯止めがかからない。食料自給率は1960年の79%から40%までに低下。日本農業には<不変の三大基本数字>といわれるものがあった。農業面積600万ヘクタール、農業就業人口1400万人、農家戸数550万戸だ。明治初期の1875年から1960年までの85年間、この3つの数字に大きな変化はなかった。大きな変化が生じたのは農業基本法(農地維持と食料安全保障。零細農業の構造改善が目的)が作られた61年以降。それは農業にとっては好転ではなく、暗転だった」(「農協の大罪」・22頁)。
「60年から2005年までの50年の推移を見ると、GDPに占める農業生産は9%から1%へ、農業人口は1196万人から252万人へ、総就業人口に占める農業人口の割合は27%から4%へ、農家戸数は606万戸から285万戸へと、いずれも減少している」(22頁)。GDP<1%>の農業、いや農協に巨大な<政治力><利権>があって解決できなかった。
「参院選挙制度は農村部の小県が定数1の小選挙区で、中規模以上の都道府県が定数2以上の中選挙区であることにより、農村部を基盤とした政党が圧倒的に有利となる仕組み。勝者総取りの1人区は他党との差を稼ぎやすく、比例的な中選挙区では他党に差を広げられにくい結果、55年体制下の参院で自民党は圧倒的支配力を保つことができた。
現在の政党配置状況は農村を基盤とする自民党と、都市部に立脚する群小政党という、55年体制同様の構図」(菅原琢「55年体制の再来を避けるには」=PHP「Voice」3月号・35頁)。「TPP」というが、農村部を基盤とした<政治力><利権>との戦い。「昔陸軍、今農協」と山下一仁。私も同感。あの太平洋戦争の悲劇を二度と繰り返してはならない。
「メディアは日銀や財務省のポチか」(長谷川幸洋「運命の参院選へ霞ヶ関との死闘」・「VOICE」3月号・126頁)――。長谷川幸洋は第一次安倍政権で「政府税調」、今回の第二次でも「規制改革」委員で安倍に接し、個人的にも電話やメール、会食等で総理と率直な意見交換、内情に精通。その長谷川は「安倍政権が注力するのは、一つはデフレ脱却・景気回復。もう一つが日米関係の再構築。この二つが内政と外交の最重要課題」(126頁)。
「デフレ脱却のために、安倍は三本の矢からなる『アベノミクス』を用意した。2%の物価安定目標と徹底的な金融緩和、拡張的財政政策、それと『成長戦略』である。2%の物価目標付きの金融緩和+拡張的財政政策(ポリシーミックス)は必ず効く。経済学のイロハのイだ」――。「経済学のイロハのイ」!同じゼミに学んだ。呵呵大笑。全く同感。
「日本では『金融緩和も財政出動も効かない。経済の生産性を高めないとダメ』といったような話が大手を振って流れている。記者たちも一見もっともらしい話に毒されている。もっといえば日銀と財務省に毒されている。私は第一次安倍政権で政府税調はじめ審議会をいくつも経験して、経済学者やエコノミストの実態を見てきた。彼らの多くは日銀や財務省とケンカできない。学者は研究材料と機会を提供してもらっている。エコノミストは出身母体の金融機関が国債売買などで財務省や日銀のお世話になっている」(126頁)――。
「TPPへの対応は貿易自由化と日米関係の強化という二つの文脈がある。私はどちらの文脈で考えても、TPP交渉に参加すべきと思う。「国民皆保険制度が破壊される」「食の安全は大丈夫か」――。ウソとデタラメが氾濫した。片棒を平然と担いだのがメディア、ジャーナリズム。渡邉頼純「TPP<参加>の決断」(ウェッジ)で明快。
<渡邉頼純>は慶應大学<総合政策学部>教授。GATT事務局、欧州連合日本政府代表部、外務省経済局参事官、外務省参与を歴任している。結論を急ごう…。「営利目的の医療機関は適用除外。混合診療も健康保険制度が各国で異なるので、共通ルールにはなりにくい」――。「安全でない食品や農産物が輸入される」という恐れもない。TPPには『衛生植物検疫措置』(SPS)に関する作業部会があり、食品安全規制の在り方も議論されている。なぜ、ウソやデマで大騒ぎになるのか。この方がよっぽど不思議。
(平成25年5月6日)
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