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「前首相の無知」(村上尚己「『円安大転換』後の日本経済〜為替は予想インフレ率の差で動く」集英社新書・205頁)――。「民主党政権末期の11月25日、野田首相と安倍総裁がテレビ朝日の番組で討論をした際、安倍総裁による金融緩和強化の要請を、野田首相は以下のように批判した――。『安倍さんのおっしゃっていることは極めて危険です。なぜなら、インフレで喜ぶのは誰かです。株や土地を持っている人は良いですよ。一般の庶民には関係ありません。それは国民にとって大変、迷惑な話だと私は思います』」――。
これに対し、自民党の安倍総裁(当時。現首相)は「びっくりしましたね。名目経済が上がらなければ、税収も増えない。そのことが総理には基本的にわかっていなかったということ。<驚き>ですね」(206頁)――。そう!この討論で明白になったのは、野田総理が「インフレになると、株や土地を持っている人だけが豊かになり、一般庶民にとってはむしろ迷惑なこと」と認識していたことである。<危険>なのはいったいどっち!?」(村上・206頁)――。政府のリーダーが「脱デフレすれば庶民が困る」と<誤認>している。
「日銀が『脱デフレに踏み切るために最低限必要とされる米欧の中央銀行と同様の金融緩和政策を行わない』というのである。こうした状況では、円高デフレの悪循環から抜け出すことができないのは当然の帰結だ」(同・206頁)――。野田バカ総理の<薄痴>ぶりは<脱デフレ>論に限らない。<消費増税>も到底<許容>できない。
「野田政権の性格は一言で表現するならば、財務省の傀儡政権であり、『大増税内閣』である。野田政権の誕生は、増税路線が本決まりとなり、近い将来、日本の大増税時代への突入が決定づけられた…。復興増税を皮切りに、消費税増税へとなだれ込むという財務省の思惑が既定路線となった」(高橋洋一「財務省が隠す650兆円の国民資産」講談社・1頁)。だが驚くなかれ!高橋洋一は、そもそも「<消費増税>は不要」というのだ。ウーン!
高橋は「(政府が保有する)金融資産300兆円は今すぐ使える!野田総理は(恩師)松下幸之助の『無税国家論』を殺すのか?日本には消費税50年分の資産がある。しかも埋蔵金は、毎年、膨大に生まれている」と説く。1980年に大蔵省に入省、理財局資金企画室長、国交省国土計画局特別調整課長、内閣府参事官(経済財政諮問会議)、内閣参事官を歴任、著書の「さらば財務省」(講談社)は「山本七平賞」を受賞。財務省のオモテもウラも熟知…。
野口悠紀雄「消費増税では財政再建できない」(ダイヤモンド社)を読み、さらに納得。
「長らく日本では、金融政策に対するひどく誤った認識を持った人物が日銀総裁の職に就き、実際に日本を円高とデフレのさなかに叩き込む格好に終始した。そして、日銀執行部の誤りに気づかず、それどころかその誤りを言論などを通じて世に広めてきたのが、『ガラパゴス経済学』を信奉する、日本の多くの学者やエコノミストといった識者、そしてマスコミだったのである。筆者のように、日銀の適切で大規模な金融政策の必要性を訴える『リフレ派』と呼ばれる人間は、本当にごく一部に限られていた」(村上尚己・210頁)――。
「デフレを止めれば、新たな成長が待っている」――。岩田規久男「リフレは正しい〜アベノミクスで復活する日本経済」(PHP)の<帯>に躍る。――「日銀副総裁に就任したリフレ派論客・岩田規久男」と「日経」(4月1日)は紹介。「『世の中、本当に何が起こるかわからないね』。2月下旬、日銀副総裁への起用が固まった直後、しみじみ語った」。
「今、最も責められるべきは日銀」と民主党・野田政権時代に数学者の藤原正彦が「週刊新潮」(2012年2月16日号)に発表。「デフレ不況を十数年も放置してきた責任の大半は日銀。リーマン危機以来、アメリカは通貨供給量を3倍に増やすなど、米英中韓その他の中央銀行は猛然と紙幣を刷り、景気を刺激した。日銀は微増させただけで静観――。
この3年間で円がドル、ユーロ、ウォンなどに、3割から4割も高くなったのは、このせい。日銀が数十兆円の札を刷り国債を買い、政府が震災復興など公共投資を大々的に行い、名目成長率を上げるべき。札が増えれば<円安>になる。工場の海外移転にも歯止めがかかる。この14年間、経済的困窮による自殺者が毎年1万人も出ている」――。驚くなかれ、アベノミクスの<ア>の字もない1年2ヵ月前。数学者の藤原正彦が語っていた。
今やアベノミクスの理論的支柱・イェール大名誉教授の浜田宏一。「まさに私が唱えていた意見が簡にして要に描かれている。当時は日銀はじめ、学者には私の意見に反対する声が強かった。勇気づけられ、非常に嬉しく感じた」と「文芸春秋」(5月号)。「残念ながら日銀には、金融政策が庶民の生活に直結しているという意識がなかった。デフレでモノの値段が下がると、雇用減や賃金低下を招く。庶民生活を直撃する。日銀は動かなかった」。
「円安基調がこのまま続けば、『(ガソリンや食品など)モノの値段が上がるのはイヤだ』『これまでのように円高が続いてくれた方が生活がラクになっていい』と考える人も出てくるだろう。しかし、過去円高が続いてきて、われわれの暮らしは本当にラクになっただろうか。現実にはそうはなっていない。円高によってモノの値段が下がる以上に、われわれの給料が落ち込んでしまった」(村上尚己・16頁)。特に2008年以降、乖離が大きい――。
グラフが示す給料の数字は、民間のサラリーマンの平均給与。失業者や自営業者などの収入は含まれていない。デフレ不況の進行を考えると、日本人全体では、グラフが示す以上に下がっている可能性が高い。<ガラパゴス経済学>の論調を<鵜呑み>にはできない。
(平成25年6月4日)
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