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「日米の株式市場は楽観と不安が交錯する中で年を越した。米国の次期大統領にトランプ氏が当選して以来、減税やインフラ投資で景気が刺激されるとの期待が高まる。だがそれで昨年の世界を揺るがせた経済システムへの人々の不信が消えるとは考えにくい。米国や英国で噴き出た『自国中心主義』は経済のグローバル化への反発に深く根ざしているからだ。冷戦終結後、あくなき利潤の追求を推進力に、ヒト・モノ・カネの国境を越える往来を広げてきた資本主義。問われているのは、その未来の姿である」と「朝日」社説(1月3日)。
「資本と民主主義の衝突」と「毎日」社説(1月1日)…。「トランプ氏の勝利と先立つ英国の欧州連合(EU)離脱決定はヒトやカネの自由な行き来に対する大衆の逆襲。グローバルな資本の論理と民主主義の衝突と言い換えることもできるだろう。フランスの経済学者ジャック・アタリ氏は『21世紀の歴史』(2006年)で歴史を動かしてきたのはマネーの威力だと指摘した。その法則を21世紀に当てはめると地球規模で広がる資本主義の力は国境で区切られた国家主権を上回るようになり、やがては米国ですら世界の管理から手を引く。
「安倍政権が掲げる『働き方改革』の本丸『同一労働同一賃金』に関するガイドライン(指針)案が示された。非正規社員の待遇を抜本的に改善する内容が盛り込まれている。賃金は労使の話し合いで決めるべきもの。政府の関与は間接的かつ限定的にならざるを得ないが、政府と労使は指針案の趣旨が実現するよう協力して取り組むべきだ。指針案は(1)基本給。(2)賞与・各種手当。(3)福利厚生。(4)教育訓練・安全管理…に関してどのような待遇差のつけ方が不合理で問題があるのか示した」と「毎日」社説(12月27日)――。
「同一労働同一賃金」!最近、ほぼ連日のように目にしたり、耳にしたり…。火山、正直「隔世の感」を覚える。なぜか――。話は1957(昭和32)年4月に遡る。つまり約60年前…。火山20歳。慶大経済2年生。日吉キャンパスに「サブゼミ」という講座があった。「賃金論」で頭角を現し始めた俊英<K>助教授の担当…。当時、既に「世直し」の意気に燃えていた「若き血」の火山、「思い込んだら命懸け」とばかり、加入を申し込んだ。「日本資本主義発達史講座」というのが看板。当時でも「アカと疑われる」という<定評>があった。
だが当時もバカだった火山、「怖い者知らず」!いや「世間知らず」…。まさに「思い込んだら命懸け」だった――。だが今にして思えば、これも「資本と民主主義の衝突」の一つ。参加してみたら素敵な<美人>女子大生が<君臨>していた。<病弱>で1年留年という。だが火山と毎週<衝突>。激しい<バトル>の連続――。「要するに、君は<労農派>なんだ」と見かねた<K>助教授がポツリ。<無知>な火山、意味不明。だが日本資本主義発達史。明治維新が「絶対主義」か「プロレタリア革命」かを巡り戦前から大論争があった――。
「資本主義はこれまでも挫折を経験、曲折を重ねてきた。100年前野1917年にはロシア革命で世界初の社会主義政権が樹立。第2次世界大戦後の資本主義陣営は社会主義に対抗しつつ、雇用や社会保障を重視する福祉国家を築いた。だが財政負担の拡大やインフレが進み、米国や英国は『小さな政府』を掲げたレーガン・サッチャー路線に転じる。金融も自由化され、活力が戻ったかに見えた半面、貧富の差が再び拡大し、リーマン・ショックに至る暴走の素地も生まれた」と「朝日」社説(1月3日)…。火山、これらを見聞、思索してきた。
「前世紀の経験はソ連など社会主義の失敗も白日の下に曝した。岩井克人・東大名誉教授はチャーチルの民主主義論をもじって言う。『資本主義は最悪の経済システム。これまでに存在した全ての経済システムを除いては』。たとえブレーキの利きが悪い中古車でも当面は資本主義を使い続けるしかない。だとすれば少しでも良くするために何をなすべきか」(朝日)。
「5年前のリーマン・ショック以降、資本主義社会は立ち直ったかに見えます。もちろん景気が蘇ったというにはほど遠いのですが、株価を見る限り少なくとも前の状態に戻ったようにも見えます。バブル以降の失われた20年を体験した日本人にとって、少しでも経済成長の光が見えれば、安心感があるかもしれません。ガラパゴス化した日本から見れば、なるほど資本主義経済は落ち着きを取り戻したかのように見えます」(的場昭弘「マルクスとともに資本主義の終わりを考える」亜紀書房・18頁)…。著者・的場は火山のゼミ後輩――。
何を隠そう、火山は慶大経済学部<A>ゼミ出身。指導教官だった亡きA教授は戦後のマルクス経済学会に流星のように登場した俊秀の学者。東大の宇野弘蔵教授と激しい論争を展開した。当然ながら火山もマルクスの「資本論」を学んだ。卒論のテーマは「絶対的窮乏化法則とプロレタリア革命」…。簡単にいえば「資本主義の終わり」を研究した――。
的場昭弘は「1952年生まれ。神奈川大学経済学部定員外教授」…。「超訳『資本論』」全3巻(祥伝社新書)が有名。NHK教育テレビ「1週間de資本論」で森永卓郎、浜矩子、田中直紀らとも対談。火山の15年後輩だが、ピカピカのマルクス学者。学会に君臨している。彼氏と「ゼミの会」懇親会でワイン片手に議論した。「ところで、資本主義はいつ終わるんですか」…。「ウーン、200年か300年先でしょうか…」「えっ、ナ・ナヌッ」――。唖然!
「マルクスとともに資本主義の終わりを考える」という彼氏の著書、そんな先の印象から、ほど遠い――。「資本主義の終焉と歴史の危機」(水野和夫・集英社新書)…。「資本主義崩壊の首謀者たち」(広瀬隆・集英社新書)…。「資本主義という謎〜成長なき時代をどう生きるか」(水野和夫・大澤眞幸・NHK出版新書)――。水野和夫は「1953年生まれ。日大国際経済学部教授、三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストを経て、内閣府大臣官房審議官(経済財政分析担当)など歴任――。いかがでしょう、お立合い!
「資本主義の最終局面にいち早くたつ日本。世界、史上極めてまれな長期にわたるゼロ金利が示すものは、資本を投資しても利潤の出ない資本主義の『死』だ。他の先進国でも日本化は進み、近代を支えてきた資本主義というシステムが音を立てて崩れようとしている」(水野和夫「資本主義の終焉と歴史の危機」(集英社新書・扉)…。第1章のタイトルは、ナント「資本主義の延命策でかえって苦しむアメリカ」――。水野和夫の指摘だ!ウーン。
だがお立合い!火山の意見は、ちょっと異なる…。「窮乏化論とプロレタリア革命」という卒論を火山が書いていたのは昭和34年(1959年)秋。今を去る約55年前だが、同じ火山が<就活>に励んでいた。「60年安保」の国会デモに励み、「平和の会」委員長としてハッスルする火山、<アカ>と疑われ、財閥系企業から軒並み<門前払い>…。だがやっと中堅電機メーカーに拾われ、三次の「社長面接」へ…。当時、松下幸之助と並び称された名物社長が質問した。「景気を良くするには、どうしたらいいか」…。火山、即座に答えた――。
「簡単です。労働者の賃金を上げてください」…。ナント今から<55年>前。「アベノミクス」の<ア>の字もない。社長、ビックリ!「君、そんなんじゃ、ダメだ」。だがもっと驚いたのが陪席していた人事課長…。ドアを閉め、廊下に出ると火山に聞いた。「一つだけ確認したい。君は思想は大丈夫か」(<アカ>じゃないよね)…。火山、即座に答えた。「大丈夫です」(ホントは「危険です。生涯を労働運動に捧げる覚悟…」。でもそう答えたら、またも不合格!もう、イヤだ)…。途端に人事課長、ニッコリ!「よし、合格だ」――。
「『貿易と技術がもたらす利益が平等ではないという現実を経済学者は認めるべきだ』。英国の中央銀行、イングランド銀行のカーニー総裁は昨年末の講演で述べている。国全体にはプラスの変化であっても一部には職や所得を失う人々が生まれる。セーフティーネットが不十分であれば変化そのものが敵視されてしまう。貿易の拡大や技術の進歩に伴って生じる格差は再分配による修正を徹底すべきだ」と「朝日」社説(1月3日)…。火山も賛成。
「グローバル化そのものに背を向ける保護主義的な主張も見られるが現実的ではない。情報や技術、生産体制など基盤は既に国境を越えて広がっている。貿易を通じた新興国の成長は世界的な格差解消を考えれば前進といっていい。国際的な課題にも市場任せでは解決できないものがある。多国籍企業が制度の隙間をついて税負担を逃れようとする動きに対抗するには国同士の協力が必要だ。金融機関の過剰な投資や劣悪な労働条件、環境への悪影響を防ぐための規制にも国際協調が欠かせない」(朝日)…。だがやりよう、いくらでもある。
「この国民にして、この政府あり」。福沢諭吉「学問のすゝめ」(1872年)。信頼し合おう。(平成29年1月3日)
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