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「A定食1000円、B定食2000円。店は利益が上がるB定食を多く売りたいが、思い通りにいかない。ところがメニューにC定食3000円を加えるとB定食が売れ出す。1番高いものは敬遠され、2番目は選ばれる。合理的な説明は難しそうだが、よく分かる。▼近年注目される経済理論といえば<行動経済学>である。人間は合理的ではないという前提に立ち、心理学を取り入れて考察する。今年のノーベル経済学賞に輝いたのも、この分野の第一人者、米シカゴ大のR・セイラー教授だった」と「日経」コラム<春秋>(10月22日)――。
「▼教授の著書には『第一印象が悪かったり、複雑な議論と統計データに訴えたりする候補者は苦戦する可能性が高い』とある。が、ここは合理的にいきたい。雰囲気や風に左右されず、訴えの中身を吟味して一票を投じよう。『自分一人が投票したところで何も変わらない』という考えは、合理的な選択からはもっとも遠い」(春秋)…。火山も棄権の誘惑を感じた。
「スウェーデン王立科学アカデミーは9日、2017年のノーベル経済学賞を米シカゴ大学のリチャード・セイラー教授(72)に授与すると発表した。授賞理由は行動経済学への貢献。授賞式は12月10日、ストックホルムで開く。賞金は900万クローナ(約1億2400万円)。セイラー氏は1945年に米国で生まれた。02年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン氏らと並び行動経済学の発展に大きな貢献をした」(日経・10月9日)――。
「人間がいつも合理的な判断をするという前提に立つ従来の経済学と異なり、行動経済学は経済学に人間の心理的な影響を反映させようとする。セイラー氏の貢献としては『心の会計』(メンタル・アカウンティング)と呼ばれる理論がある。例えば人は苦労して貯めたお金は慎重に使おうとするが、あぶく銭は簡単に使ってしまう。そのようにお金の色分けをして行動することを示した」(日経)…。昭和30年代の火山、マルクス、ケインズを学んだ。
「『自己抑制の欠如』にも注目。人間は『現在』と『未来』の時間差によって意思決定が変わる。例えば、すぐに1万円をもらえるのと、2年後に2万円をもらうのとでは、たとえ2年後の方が得だったとしても、人はすぐ1万円をもらうことを選ぶ。『今』という要素が大きく行動を左右することを示した。また消費者が公平性を求めると、企業の値上げを防ぐことがあることを、理論と実証で示した。金融分野では、政策よりも情報によって人間の行動が影響されることも示した」(日経)…。消費者の意向が経済を動かす。これは常識だろう。
「スウェーデン王立科学アカデミーは9日の記者会見で、こうした業績を挙げた上で『セイラー氏は経済をより人間的なものにした』と評した。依田高典・京大教授『行動経済学は2000年代から世界的なブームになっている。セイラー氏が果たした役割は大きい』」(日経)。
昭和30年代、マルクス、ケインズを学んだ火山、「入社面接で<景気対策>を問われ<賃上げ>を<社長>に提案」したことがある。昭和34年(1959年)秋のこと。素敵な背広の社長が火山に聞いた。「景気を良くするには、どうしたらいいか」。火山、専攻はマルクス「資本論」。「労働者の窮乏化法則」に凝っていた。簡単にいえば資本主義が独占資本主義段階に入ると<貧富の格差>が極大化、窮乏化した労働者が<革命>を起こすというもの。
ケインズも読んでいた。<有効需要>の法則。資本主義の発展には<有効需要>が決め手。消費者が買物すれば景気が良くなる。実際、大蔵大臣になったケインズは英国国民に「不況だから一杯買物をしてください」とラジオで呼びかけた。マルクスに聞いてもケインズに聞いても<賃上げ>しかない。火山は<熱弁>!社長は<首を傾ける>!当時、アベノミクスの<ア>の字もなかった。だが火山は<経済学士>。しかも<優等生>だった――。
景気好転、好循環が生まれないのは「アベノミクス」第三の矢<成長>戦略が始動しないから…。「企業統治改革の進展も株高要因との指摘がある。野村証券の若生寿一ストラテジストは、国内企業の内部留保が350兆円程度に積み上がるとみられる中、資本効率を重視する姿勢が強まれば『M&A(合併・買収)や設備投資による利益成長に期待が高まる』とみる。16年は製造業によるバイオ企業などの買収が相次いだ」と「日経」(1月2日)――。
「国内企業の内部留保が350兆円程度」!これが問題。だから<デフレ脱却>が遅れる。企業は収益が上がっているのに<内部留保>を優先。<賃上げ>に十分回さない――。「アベノミクスが始まって以来、3年間で企業の内部留保(利益剰余金)は73兆4千億円も増え、合計で約380兆円に達した。そのうち現金・預金は約200兆円もある。これに対し給料は年目は合計で3・4兆円減少、2年目は4兆円、3年目は2兆円それぞれ増えたが、合計すると3年で2・6兆円しか増えていない」と「東京」社説(2016年10月7日)――
「(企業の<内部留保>が“3年間”で73兆4千億円も増えているのに)<給料>は2・6兆円しか増えていない。これでは<デフレ脱却><景気回復>ができるわけがない。ケインズ経済学の“イロハのイ”!つまり<合成の誤謬>の典型。<有効需要>不足の典型――。
お立合いは<合成の誤謬>を、ご存じだろうか。最近のメディアは<先行き不安>を煽るのが得意中の得意!だから「アベノミクス」<第三の矢>“成長戦略”がちっとも始動しない。いくら「設備投資」「人材投資」「貯蓄から投資へ」と叫んでも<内部留保>や<家計貯蓄>が増えるだけ。「企業が“投資”を控える」…。ああ“ムダ遣い”を避け、<手元資金>が増えた。明日に備えた…。「家計が“消費”を控える」…。ああ“節約”できた。<貯金>が増えた。<老後>に備えた…。<個々>はトク…。だが<全体>では――。
(平成29年10月29日)
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