火山の独り言

時ならめ 風に挑みて 鯉のぼり

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中学の頃、指揮者に憧れていた時期があった。授業中に棒振りに熱中、手が上がり過ぎて怖い教頭先生に見咎められたことがあった。問題を出し挙手を求めたわけでもないのに手を上げた生徒がいた。すっかり忘れていたが、15日の会で久しぶりに会った同級生の「行く白雲」さんにからかわれた。50年が過ぎても覚えていたのだ。

コンサート通いも1月から数えて50回を超えた。指揮者もカブリツキでずいぶん見てきた。まさに10人10色だが、最近になって気づいた。コンサート当日の指揮者は本当は気楽、ダンスでもやっているような気分でよいのだ。もちろん大真面目で演技をしている。音楽を演出しているのだから。でも当日になって「棒振り」一つで演奏が大きく変わるなどということはないはず。戦略とは「戦う前に勝つ」こと。戦術とは「戦って勝つ」こと。戦う前に勝負を決めるようでないとダメ。戦わずに勝つのが名将・名指揮者なのだ。

スコア(楽譜)を読み、曲想を練り、オケ・メンバー、一人一人の能力・持ち味を最大に引き出し、演奏の満足感を極限まで追及する。練習の時に全てを伝え、「仕込み」を済ませておく。当日はその成果を確認するだけ。要所要所の「締め」はもちろん大事だが・・・。

小沢征爾の「ボクの音楽武者修行」を42年振りに読んでみた。ブザンソンは「ああ無情」のユゴーの生まれた美しい街。連日連夜、楽譜の勉強、金もなく、ふらふらだったとある。イギリス、ドイツ、イタリア、ソ連の応募者には通訳がつくのに日本人はダメ。言葉が通じない。「よし、五体でぶつかってやれ」とクソ度胸を固めた。

「自分の好みの練習でオケの連中を仕込む」とあった。これだ。「誰にでも分かるように派手に身振り手振り、表情も見せて。後はアレグロとかフォルテとか世界共通の音楽用語を連発した」。審査員やオケのメンバーがこの敢闘精神に驚嘆、ブラボーと喝采してくれた。

二次試験は間違いがいくつもある楽譜を初見で見破り、訂正しながら指揮。最終予選は新曲の楽譜を初見の5分で読み取り、作曲者の指揮で演奏を聞いた後、自分で曲想を掴み、演奏する。要は限られた練習で自分の表現したい曲想をオケに伝え、最高に仕上げる。メンバーの心を短時間で掴み、共感を得て「自分の思い」で自由自在に演奏する。

後で知ったそうだが、小沢の最終試験の指揮中に立ち上がってブラボーと叫んだ男がいた。実はコンクール用の新曲を作った男だった。自分の意図した以上の曲想の演奏に感動したのだ。優勝は当然でしょう。

小沢の楽譜を読む集中力は非凡。「ボクの音楽武者修行」を読んでいて随所で気づく。あとはオケのメンバーを信服させる人柄・手腕だ。オペラのオケは舞台が進むにつれ流麗な響きになるという。実際、何回も経験した。第一幕より第二幕が良い。さらに次・・・。オケも自分の演奏に酔うそうだ。指揮者の役割は重大。でも戦う前の仕込みが「勝負」だ。

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