火山の独り言

時ならめ 風に挑みて 鯉のぼり

火山の履歴書

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<初恋>!それは人生の<最初>にして<最大>のドラマかも知れない。そして多くは実らない。儚い夢と消えてしまう。だが<想い出>だけは、長く記憶に留まる。

♪秋の日の ヴィオロンの ためいきの 身にしみて ひたぶるに うら悲し…♪
♪鐘のおとに 胸ふたぎ 色かえて 涙ぐむ 過ぎし日の おもいでや…♪
♪げにわれは うらぶれて ここかしこ さだめなく とび散らふ 落葉かな…♪

ご存知の<落葉>!上田敏の名訳は、あまりにも有名だ。「<初恋>がドイツ語、フランス語を勉強させた」とは火山が<古希>に書いた“想い出”話。高校1年の昭和28年4月から3年間、NHKの「ラジオ講座」でドイツ語を学んだ。講師は桜井和市。謹厳実直、いかにもドイツという感じ。シューマンの「蓮の花」の美しい前奏が今も耳に残っている。翌・高校2年からフランス語を学んだ。講師は前田陽一。洒落れていた。シャンソンの講義は、最高に楽しかった。いかにもエスプリ(機知)という感じ。そして学んだ動機は…。

ドイツ語はシュトルムの「みずうみ」を原語で読みたい。フランス語はヴェルレーヌの詩で上田敏の名訳がある「秋の日の ヴィオロンの ためいきの ひたぶるに…」を原語で味わいたいと強く願っていた。どちらも混血の美しい女生徒から借りた本だった。この美少女、中学2年の同級生。なぜか火山に親切だった。初対面は小学校6年の横浜市の「小学生<絵画>コンクール」!桜木町駅近くの小学校が会場。我が校代表二人の内、彼女は入選したが、もう一人の火山は落選。落魄の火山は憧れの目で彼女を見つめた。

中学2年の秋、ピアノのある音楽室はサロン風のたまり場。顔を出すと彼女と話ができる。火山も願いを込めて、よく通っていた。そんなある日、家に帰って国語のノートを取り出した火山、仰天!息を飲みこんだ。なんと裏表紙のウラ、最後のページに<落葉>の詩が“落書き”されていた。素晴らしい<麗筆>!一目で“彼女”と分かった。…♪秋の日の ヴィオロンの ためいきの…。ドッキリ、火山の胸は高鳴った。全身がカッと熱くなった。「恋が実った」かのような気分。翌日、どんな顔で彼女に会ったか、まるで覚えていない。

「水色のワルツ」――。高木東六(1904〜 2006)が戦後間もない昭和23年に書いた名曲。「君に会う嬉しさの、胸に深く…」。確か作詞は藤浦洸(1898〜1979)。彼女がアルトの憂いを秘めた声で、火山に聞かせてくれた。この歌も知らなかった火山、帰路、伊勢佐木町の楽器店を彷徨い、楽譜を買い求めた。風邪の高熱を圧しての“純愛”行動!

フランス語の“ヴェルレーヌ”は高校3年。独習を始めて2年目の秋に前田先生が教材に採用、解説してくれた。文法も一通り勉強していたので、バッチリ理解できた。感激!そしてドイツ語の「みずうみ」は、大学1年の夏休み、独力で読み通した。英語を含め原書1冊を独力で読む初めての体験だった。恋の力は恐ろしい。だが火山の恋は実らず、火山の手元には、彼女が<お別れ>記念に贈ってくれたミレーの<晩鐘>だけが残った。

大学では「独逸文化研究会」に入った。やはりシュトルムの影響だろう。仲間にドストエフスキーなどロシア文学に強いのがいて「『みずうみ』が好きだ」といったら「あんなのは『おとぎ話』だ」と笑われた。意味が分らなかった。最近、OB会(オンケル会)で再会したので、文句をいってやった。<半世紀の恨み>を晴らし、スカッとした。ウーン!

<大学出てから四十有余年>…といっても数年前の話。ドイツ語と再会した。ラジオ講座も日進月歩。教え方は<隔世の感>がある。文法よりも日常生活。すぐ使える会話が多い。暮らしが分るので理解が早い。もっともこっちの記憶力が衰えたので、すぐ忘れ<元の木阿弥>だが…。講師の増本浩子、声も若く、話し方が幼いので学生のアシスタントかと思った。独協大学講師、文学博士と知って仰天した。当然、テキストも自分で書くのだろう。

毎週のスキット(会話シーン)の主人公ナターシャはロシア人、ライプチッヒに音楽の勉強に来ている留学生。幼い頃をライプチッヒで過ごし、幼馴染の3人を探している。でも10数年の歳月を隔てているので、誰もいない。10月から探し、女友だち2人は連絡が取れた。だが彼女が一番会いたい初恋のミヒャエルは消息不明。そのナターシャを好きになる男子学生クラウス。いくらアプローチしても、ナターシャは気づかない。

ライプチッヒは旧東ドイツ。バッハが若き日、Kantor(合唱隊長兼オルガニスト)を務めたニコライ教会やドイツ二番目のオペラ劇場ゼンパー・オーパーの話、ベルリンの壁崩壊の前後の歴史なども出てきた。「テキスト」3月号を買った。ナターシャは初恋のミヒャエルと再会できるのか、夢中になってテキストを読んだ。幸い<昔とったキネヅカ>。読めば分る。結果は…ナイショ。学習の成果は…。これもナイショ。数年前の日記でした。

「<初恋>!それは人生の<最初>にして<最大>のドラマかも知れない」――。このエッセーの書き出し。火山が9年前に主催した中学<同期会>!いつもは50名前後のささやかな集まり。火山は<倍増><3ケタ>集めると、ぶち上げた。幹事一同が仰天。「絶対にムリ」と太鼓判を押す女性幹事も現れた。――火山、奮起した。

♪青春、初恋、師との再会。今日確かめる半世紀の歩み、一人一人が主役だった♪――。これがキャッチコピー。1年がかりの大プロジェクトは「中学卒業<50年>記念」だった。結果は…。ジャスト<100名>の盛会。火山も<初恋>との再会を果たした。バンザイ!
(平成24年6月2日)

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