組長の仕事がある度に、Sちゃんは大きなお腹を抱えて家々を廻っていた。 「体調はどう?」 「はい!大丈夫です。でも、お腹が重くって!」 何時もニコニコしていて元気そうだった。 玄関の電気は24時間点け続けてあった。 珍しい薄紫の大輪の薔薇や、濃い赤紫のアジサイや、真っ白のアジサイ、サツキ、都忘れなど、庭の花々は彼女がいたときのままに塀の外まで咲きこぼれていた。 主が居なくなっても咲き続けるその姿を見ると、嬉しいようでもあり、また悲しいようにも思えた。 不思議な想いで眺めていた。 月日は遠慮なく、巡っていった。 若葉香る5月、元気な男の子が誕生した。 Mちゃんと名付けられた。 Mちゃんはとってもニコニコして人なつこかった。 2〜3ヶ月になった頃には、声を掛けても、頭をなでても、手に触っても泣かなかった。 恥ずかしそうにしていたけれど、人を見て泣くという子ではなかった。 4〜5ヶ月になった頃には抱っこさせて貰った。 「泣いちゃうかなぁ〜。」 恐る恐る抱っこする私の両手の中で、すぐにニコッとしてくれた。 彼女が初めてAちゃんを抱っこしてくれたときの不安な気持ちがよく分かった。 ホットして話しかけると、目を見てニコニコしてくれる。 母乳育ちのMちゃんは色白で、パッチリお目々で、ずっしりと重かった。 赤ちゃん特有の優しく甘い匂いがした。 ふわふわの髪の毛が柔らかかった。 「あなたの孫を抱っこさせて貰ったよ。Aちゃんと同じで、泣かないで抱かれてくれたよ。ニコニコしてくれたよ。あなたの望んだとおりの孫よ!」 直ぐに彼女へ報告した。 他人にも泣かないで抱っこして貰う孫を、彼女はどんなに喜んでいるだろうと思った。 ただ、 彼女の手にその重さが伝わらないのが悲しかった。
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あのお友達にお孫さんが生まれたのね。
優しい友人をきっと天国からみてますよ。
2010/1/29(金) 午後 10:15 [ 一葉 ]
一葉さん、
冬眠に入られたのにコメントまで戴いて恐縮です。
覚えていてくださってありがとうございます。
彼女がどれほど抱っこしたかったかと思うと、残念でたまりませんでした。
Mちゃんを抱っこさせて貰って、彼女へ見えるように聞こえるように、いっぱい話しかけたものです。自分の孫以上に自慢して!
2010/1/30(土) 午前 10:19
pipiさん
この書庫(ページ?)は、胸に迫ってきます。とても深くて。
pipiさんの存在は、親友さんの〈やすらぎ〉ですね。お空の上で、あるいは風になって喜んでいらっしゃる。
Sちゃんが引っ越された後、花たちはどうなるのでしょう・・・。
2010/2/18(木) 午前 11:10 [ noni ]
noniさん、
そうなのですよ。彼女が愛した花たち、思いがけない素晴らしい結末が待っていました。彼女の魂が宿っているかのような・・・。
もうすぐその時のことを書くことになります。
2010/2/18(木) 午後 10:53