二人の後ろ姿を見送りながら、不覚にも涙がにじんだ。 決してSちゃんに見せてはいけない涙だった。 4月になったら、あの玄関の明かりも消えてしまう・・・。 車で彼女の家の角を曲がりながら、無意識に玄関の明かりが消える日をカウントダウンしていた。 辛くなると写経をした。 2時間かけて書き終え、最後に為書きをし、○○ ○○書と自分の名前を書いては落ち着いたものだった。 12月に、三回忌の法要を済ませ、 1月に、町内会の新年会を執り行い、 2月に、総会で新役員の選出を終え、一年間の協力に感謝の言葉を述べ、4月に転出していくことを報告した。 この地で、今まで育み見守って貰った組の人たちにお礼を述べ、今後の益々の発展を望んでくれる事も忘れなかった。 3月に、地区の春祭りを取り仕切って、組長としての仕事を全てやり終えた。 「引っ越し前後にお手伝いすることがある?」 と聞いた私に 「大きい物は兄と相談して事前に運び出します。細々とした物はMもいるのでプロの業者にお願いしました。『何もすることは無いですよ。』と言われてはいるのですが・・・。」 「うん。分かった。何かあったら連絡してね。力になれることが有るかも知れないから。」 彼女が愛した鏡台やチェスト、飾り棚、文机、収集していたコーヒーカップ等は誰のところへ引き取られるのか知るよしもない。 彼女をこよなく愛した彼女のご兄弟、Sちゃん、お兄ちゃん、お孫さん達の元に貰われ、大切に使い込まれていくのだ。 本音を書くなら、私も何か貰いたかった。 「形見の品」 でも、そんなこと言えるわけもなく、 Sちゃんとしても「もらって。」など、言えなかったと思う。 彼女が使い込んだハンカチでよいから欲しかった。
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親友に捧げる
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2005年12月、突然逝ってしまった親友。
2008年7月7日、初めて夢の中で会いに来てくれました。
彼女に後押しされたようで書庫を作りました。
彼女との思い出を綴っていこうと思います。
2008年7月7日、初めて夢の中で会いに来てくれました。
彼女に後押しされたようで書庫を作りました。
彼女との思い出を綴っていこうと思います。
「あなたの孫を抱っこさせて貰ったよ。Aちゃんと同じで、泣かないで抱かれてくれたよ。ニコニコしてくれたよ。あなたの望んだとおりの孫よ!」 直ぐに彼女へ報告した。 他人にも泣かないで抱っこして貰う孫を、彼女はどんなに喜んでいるだろうと思った。 ただ、 彼女の手にその重さが伝わらないのが悲しかった。 そんな平穏と思われる日々にも、リミットは確実に近づいていた。 Sちゃん達が組長の役目を終わる3月31日。 それは多分お別れの日。 12月の小春日和の日、抱っこベルトにMちゃんを入れて、各戸の郵便受けに配布物を配りがてら、Sちゃんが声を掛けてくれた。 思いがけない訪問に私が小躍りしたのは言うまでもない。 Mちゃんと戯れる私を暫く見守っていたSちゃんは、おもむろに言った。 「来年4月に引っ越すことになりました。」 やっぱり・・・ 分かっていた。。。 分かっていることだった。 当然だった。 「・・・そうね。ここからではお仕事に通うの大変だものね。 どこに住むことになるの?」 「○○です。母の生前、一緒に私たちの土地を探していたこともあって・・・。」 「そんなこともあったの。。。」 「・・・やっぱり・・・・・。 話していなかったのですね。 母は絶対に同居はしないと言っていましたから、話さなかったのでしょうね。 近くですから遊びに来てくださいね。子育て、教えてくださいね。」 別れを寂しがるであろう私の気持ちを十二分に分かっているSちゃんの、精一杯の言葉だったと思う。 別れはすなわち彼女たちの門出だ。 私はあえて明るく言った。 「うん! ありがとう。 お邪魔させて貰うね。引っ越しの日が決まったら教えて。お手伝いが出来たら嬉しいし・・・。」 「はい。またお世話になるかと思います。」 二人の後ろ姿を見送りながら、不覚にも涙がにじんだ。 決してSちゃんに見せてはいけない涙だった。 4月になったら、あの玄関の明かりも消えてしまう・・・。
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組長の仕事がある度に、Sちゃんは大きなお腹を抱えて家々を廻っていた。 「体調はどう?」 「はい!大丈夫です。でも、お腹が重くって!」 何時もニコニコしていて元気そうだった。 玄関の電気は24時間点け続けてあった。 珍しい薄紫の大輪の薔薇や、濃い赤紫のアジサイや、真っ白のアジサイ、サツキ、都忘れなど、庭の花々は彼女がいたときのままに塀の外まで咲きこぼれていた。 主が居なくなっても咲き続けるその姿を見ると、嬉しいようでもあり、また悲しいようにも思えた。 不思議な想いで眺めていた。 月日は遠慮なく、巡っていった。 若葉香る5月、元気な男の子が誕生した。 Mちゃんと名付けられた。 Mちゃんはとってもニコニコして人なつこかった。 2〜3ヶ月になった頃には、声を掛けても、頭をなでても、手に触っても泣かなかった。 恥ずかしそうにしていたけれど、人を見て泣くという子ではなかった。 4〜5ヶ月になった頃には抱っこさせて貰った。 「泣いちゃうかなぁ〜。」 恐る恐る抱っこする私の両手の中で、すぐにニコッとしてくれた。 彼女が初めてAちゃんを抱っこしてくれたときの不安な気持ちがよく分かった。 ホットして話しかけると、目を見てニコニコしてくれる。 母乳育ちのMちゃんは色白で、パッチリお目々で、ずっしりと重かった。 赤ちゃん特有の優しく甘い匂いがした。 ふわふわの髪の毛が柔らかかった。 「あなたの孫を抱っこさせて貰ったよ。Aちゃんと同じで、泣かないで抱かれてくれたよ。ニコニコしてくれたよ。あなたの望んだとおりの孫よ!」 直ぐに彼女へ報告した。 他人にも泣かないで抱っこして貰う孫を、彼女はどんなに喜んでいるだろうと思った。 ただ、 彼女の手にその重さが伝わらないのが悲しかった。
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書きかけのままになっていたこの書庫 「続きを書いて」とでも言うように 2010年1月10日 彼女が夢の中に現れた そう! 10日は彼女の月命日 夢の中の最後のシーンは鮮明だった。 親友とどこかへ出掛けた帰り道、先に車から降りた私は、車で去っていく彼女を見送っていた。 いつものように、笑顔で大きく手を振って「またね〜〜〜。」と。 車中の彼女が天井のハッチから大きく身を乗り出して、満面笑顔で手を振っている。 もう、声は届かない距離。 「そんなに乗り出すとあぶないよ〜〜〜。」 私は大声で叫んでいた。 彼女はいたずらっぽく笑って身を乗り出したまま、まだ手を振り続ける。 「そうだった! 運転しているのは彼女ではないんだ!」 その事に気がついてホットした。 大声で叫びながら、いつまでも二人で手を振り合っていた。 運転しているのはSちゃんだと気がついて安心したから。 と、その時 「ガ・ガ・ガ・ガ・ガーーー」 路肩にハンドルを取られて、車が土手ののり面を滑るように降りていく。 「あ〜〜〜〜〜」 車は水際で止まった。 彼女はいつの間にか車から降りていた。 顔面蒼白で車とSちゃんを見つめている。 砂煙の中、横転した車から、Sちゃんが出てきた! 照れくさそうな困ったような顔をして。 かすり傷一つ無かった。 奇跡だ! 「良かった〜〜〜。」 私は彼女の元へ走った。凄いスピードで走れた。 あぶない!! 速すぎる!! ブレーキを掛けなくっちゃぁ!! 目が覚めた。
そうだったね
書きかけのままでごめんね
最後まで書くから、また会いに来てね。
残りわずかになったけれど、親友と私のために書き残しておきたいと思います。
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内玄関の電灯は24時間点けてあるようだった。 「お母さんが一人で寂しくないように」との思いやりなのだろうと一人で納得した。 Sちゃんの思いやりが嬉しかった。 それは今年の4月、転居する日まで2年4ヶ月間、灯り続けていた。 私たちの町内は組長という仕事が家順に回ってくる。 1年間、組の雑用全てを引き受けることになる。 運悪く2007年はSちゃんの家が当たることになっていた。 Sちゃん夫婦が1年後にここを出て行くことは、私以外には誰も知らなかった。 みんなは、「2006年に引っ越してきたばかりのSちゃん達には大変だから、免除してあげよう。」と話していた。(二人とも医師なので生活時間も不規則だったから) 私は「私が代わりに務めてもいいよ。」と言ってもいたし思ってもいた。もし翌年も住んでくれるなら・・・と。 しかし総会の日、Sちゃん夫婦は 「十分には出来ないかも知れないけれど、皆さんに手伝って貰いながら務めたいと思います。」 と、引き受けた。 二人でメモ用紙を持って来ていて、役員名、行事予定、具体的な方法等をせっせとメモっていた。 「あの人は誰?」 「その件はどの人に報告すればいいの?」 「**さんって、どの人?」 私を頼ってくれる事が嬉しかった。 役目を果たしてから出て行こうとするSちゃん夫婦が誇らしかった。 「○○さん、さすがにあなたの娘は立派よ!!」 私は心の中で彼女に自慢して報告していた。 自分の娘夫婦であるかのように! 親友が逝ってしまったのが2005年12月。 2006年はSちゃん夫婦が帰って来て、この家が大好きだった亡き彼女と同居した。 同居は一年間の予定で、2007年には仏壇と共に遠く離れた長男M君のマンションへ行くことになっていた。 しかし2007年度は組長の責務を果たすためもう一年ここに住むと言う。 思いがけない展開に、運命のようなものを感じないではいられなかった。 というのは、嬉しいことに2007年5月にSちゃんの赤ちゃんが誕生することになっていたのだ。 もし組長が当たっていなかったら、Sちゃんは引っ越し先で出産し、私は赤ちゃんにもあまり会えなかっただろうと思う。 私も抱っこできるかも知れない。彼女の代わりに・・・。 泣かないで抱かれてくれるだろうか・・・。 組長の仕事がある度に、Sちゃんは大きなお腹を抱えて家々を廻っていた。 「体調はどう?」 「はい!大丈夫です。でも、お腹が重くって!」 何時もニコニコしていて元気そうだった。
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