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愚者の選択

 トランプ氏は、就任以降、様々な大統領令に署名を行いました。
大統領令とは、アメリカの大統領が議会の承認や立法を経ずして、連邦政府や軍に発令する命令のことです。
当然その行為は民主主義から最も遠い行為であり、多用すれば法治国家の根底を揺るがす事態にもつながりかねないのです。
にもかかわらず、就任以来トランプ氏はすでにこれだけの大統領令に署名を行いました。

1、オバマケア撤廃
 オバマ大統領がずっと進めていた医療保険の制度改革を完全に廃止するという大統領令です。
今までの大統領が、前大統領の政策を議会の承認抜きで廃止したことはただの一度もありません。
どこが悪いかを話し合って、次の政策が決まってから古い政策を廃止するのが当たり前だからです。
しかし、トランプ氏はとにかくオバマケアを廃止したいと就任当日に最初の大統領令として署名しました。

 15%の国民が無保険で暮らしていたアメリカ社会で、国民すべてに健康保険制度をもたらしたのがオバマケアでした。
しかし、当然保険料は高騰してしまいました。
見直すべきは高すぎるアメリカでの医療費であって、保険制度が悪かったわけではありません。
ここを見直さずにまずオバマケアを廃止したのですから、医者にかかれず死んでいく国民がまた増え始めるということになりますね。

2、TPP(環太平洋連携協定)からの正式離脱
 これも議会の承認を経ることなく、トランプ氏のツルの一声で完全離脱が決定しました。
これについては、判断だけは正しいと私などは思うのですが、問題となるのは「この協定はアメリカが言い出したものである」ということです。
大統領が変わったからと言って、自国が言い出した協定を勝手に離脱すればどうなるでしょうか?
当然国際社会における信頼はがた落ちになります。

 イラク戦争で「あいつは悪いやつなんだ!」と叫んでイラクを攻撃したブッシュ大統領の行為も、作戦終了後に生物兵器を作っていたという証拠が全く出てこなかったことでアメリカの信頼を失墜させまいました。
「世界の警察」を自称していたアメリカの主張は、この時より国際社会には信じてもらえなくなったのです。
まさかこの愚をもう一度やろうとは、本当にトランプ氏には驚かされてしまいます。
これで今後核廃絶だろうが二酸化炭素排出規制だろうが、アメリカの提言に耳を貸す国はなくなったでしょうね。

3、メキシコ国境地帯にグレートウォール
 一番驚いた(というかバカだと思った)のがこの大統領令です。
議会の承認も経ず、外交ルートでの話し合いも行わず、他国に「壁を作れ、金はお前らが出せ!」などと押し付けるのは、他国の行政に口を出す行為でしかあり得ません。
不法入国者が嫌なら、両国間で話し合って規制なり監視体制なりを作り上げればいいだけの話。
それもやらずに相手を非難し、金を出せなど、愚かとしか言いようがないですね。

 みなさんは米墨戦争をご存知ですか?
世界史の教師が学校の授業では決して教えない闇の歴史です。
19世紀前半、アメリカは着々と領土を拡大し続けました。
その時に目をつけたのが、テキサス(当時はメキシコ領)です。
ここにどんどんアメリカの移民を送りこんだんですよ。
優しいメキシコはすべての移民を受け入れたんですが、移民が過半数を超えたテキサスは、突如としてテキサス共和国として独立するとメキシコ政府に宣言したのです。
当然メキシコ政府軍が鎮圧のために出動しました。

 アメリカの恐ろしいところは、これを待ち構えていたということなんです。
当時民主党の党首であったポーク大統領は、「メキシコはテキサス共和国の国境を侵した。アメリカはテキサス共和国を支援する。」と宣言し、驚くほどの大部隊を派遣したんです。
当時、国際社会でテキサス共和国など認められていなかったにもかかわらず、ですね。
多勢に無勢で太刀打ちできないメキシコ軍は退却。
なんとアメリカは首都のメキシコシティまで進軍して占領しちゃったんですよ。
その後の講和会議でカリフォルニアとニューメキシコは格安でアメリカに割譲され、めでたくアメリカの領土が7%広くなったと。

 余談ですが、この時の占領軍を指揮していたのがペリー将軍。
そう、日本に開国をせまりにやってきたペリー提督の若き日の姿です。
ペリーは生涯いろいろな国を侵略・占領し続けた男で、さぞやいっぱい勲章をもらったことでしょうね。

 話を戻しますが、あの時と同じことが今回も起こるかもしれません。
「壁を作れ、その金はお前ら持ちだ、出さないなら35%の関税(普通は最高15%)をかけてやる!」と脅すのは、国際社会に米墨戦争を思い起こさせることでしょうね。
当然、国際社会の尊敬も承認も受けられるはずがありません。
PKO対アメリカ軍の戦いが見られるかもしれませんね。

 以上のように、トランプ氏の行動は常識がないのではなく、常軌を逸しているようにしか思えません。
いきなり権力を握った老人は、えてして「過去の失敗を正す!改革には痛みがつきもの!俺が正しい!」と言い、常識に当てはまらない行動を行います。
まるで新しいおもちゃ(権力)をもらった幼児のように。
短期で見ればうまくいくかもしれませんが、時間がたてばそんな手段で自分たちが尊敬されるはずもなければ繁栄するはずもありません。
いずれは嫌われ者としてその座を追われることになるでしょう。

 トランプ氏が追い出されるのが先か、暗殺されるのが先か。
はたまたアメリカが失墜するまで続くのか。
傍観者である私としては、とても楽しみですね。


 アメリカ史上、最も大統領令を発し続けたのは第2次世界大戦時のフランクリン・ルーズベルト大統領。
12年間の在職中に3,522件も発令!
だから第二次大戦中のアメリカはただのヤクザだったんだね。
こむりん先生
こむりん先生
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