〈統治機構の変革を小沢先生は考えていらっしゃる。(国歌斉唱時の)不起立教員の思想良心よりもはるかに重い政治的信条だ〉
露骨に小沢氏を持ち上げたのは橋本徹大阪市長だ。前夜のツイッターで、選挙を経ずに消費税率の引き上げに突き進む野田佳彦首相を批判。消費税を地方に移譲して地方交付税を廃止する自身の考えが、小沢氏と一致していると訴えたのだ。
小沢氏側近は、消費税政局でナニワから吹く“追い風”をコピーして配った。小沢氏は会長として率いる勉強会「新しい政策研究会」の幹事会でこれを目にすると、満面の笑顔でこう喜んだという。
「そうか、そうか。頼もしい援軍だな」
ただ小沢氏の上機嫌な素振りは、橋下氏をはじめ周囲の甘言だけが理由ではなさそうだ。資金管理団体「陸山会」の土地購入に関する政治資金規正法違反(虚偽記載)事件の公判で、自らの関与を示す証拠の大半が東京地裁によって却下され、4月26日の判決は「無罪が濃厚」との憶測が広がっているからだ。
ほかならぬ小沢氏の言葉を借りれば「政治生活の最後」を懸けた政争に邁進できる環境が整いつつある。民主党関係者が語る。
「小沢グループの議員は検事総長まで務めた大物検察OBに接触し、無罪の確証を小沢氏に伝えています。いきおい側近たちは、小沢氏を強制起訴した東京第5研検察審査会の判断に改めて疑問を抱き、審査の実態調査に乗り出しました。小沢氏は意趣返しと受け取られるのを避けるため黙認しています」
小沢氏サイドが検察審査会(検審)を目の敵にするのは、中立性が担保されていないという見立てが発端だ。2010年11月の参院予算委員会で仙谷由人法相(当時)は検審の位置づけについてこう答弁した。
「検察審査会法で独立して職権を行うものと規定しており、独立した行政機関であると理解する」
だが実情は異なるようだ。検察関係者が重い口を開く。
「大半の検審員は法律に関して素人で、検察から提供される膨大な資料を読み込むだけでも困難です。検察には事実関係を整理して示す段階で、検審員の心証を方向付けるノウハウがあります。公判が維持できないと判断して起訴を見送った案件を検審に簡単に強制起訴されるのは検察のプライドが許さない。このため検審でも起訴できないように誘導する資料を出すことがあります。逆もまた然り。小沢氏に象徴されるように、強制起訴させるために検審向けの資料が作成される可能性はあります。
検審は検察の意を酌んだ“代行役”を担っているという見立てだ。もしそうなら、仙谷氏の言うような独立機関とは言い難い。小沢氏周辺の指摘も頷ける部分がありそうだ。
本誌が取材を進めると、検審を舞台にしたある疑惑にたどり着いた。それは「検察審査会ハンドブック」の怪しい契約だ。