韓国でも不動産神話が崩壊
ロンドン五輪の金メダルラッシュとは裏腹に、韓国経済がきしみ始めた。輸出に次いで内需も怪しくなってきたのだ。日本型デフレの兆候も現れている。ひょっとすると今年の実質経済成長率は14年ぶりに日本を下回るかもしれない。
韓国各紙の1面は毎日、自己賛美の記事で埋まる。韓国選手が金メダルを
“量産”、その数は現地時間8月7日現在、中国、米国、英国に次いで4位だからだ。それとは対照的に、経済面では景気失速への恐怖が語られている。
同紙によれば住宅バブルが激しかった首都圏の人気地域では、ピーク時と
比べ30〜40%値下がりした物件が相次ぐ。新築マンションのうち売れ残り物件は全国に6万2200戸もあり、当初の分譲価格を30%下回る価格で投げ売りされるケースもある。
返済不能に陥った個人のマンションが競売に付された件数は、昨年、首都圏だけで3万戸弱に達した。世界同時不況の起きた2008年と比べても2倍に達する。
住宅取引も低迷する。今年上半期の取引件数は、過去最多だった2008年上半期の68%の水準にとどまる。「今、住宅を買っても値下がりするだけ」と皆が思い始めたのだ。 韓国でもついに不動産神話が崩壊した。
政府系研究所の韓国開発研究院(KDI)も8月3日「家計部門の負債償還余力の評価と示唆点」という「懸案分析報告書」を発表した。
報告書は「今後の景気低迷や欧州危機の深化などを考慮し、最悪のシナリオに備える必要がある」としたうえで「返済不能の可能性が高い世帯の数が多いことに注目すべきだ」と警告した。
「韓国の世帯数は1757万世帯。この報告書から計算すれば、借金があり、かつ赤字の世帯は(21%弱の)365万世帯に達する」 (朝鮮日報8月5日付)。
「今は1997年と同程度の危機」
韓国の家計の不良債権問題は以前から不安材料として語られてきた。例えば、経済危機のたびに“リリーフ投手”として起用され、火消しに成功してきた
李憲宰・元副首相は以下のように語っている。
「(1997年の)通貨危機は企業発の危機で解決法が比較的簡単だった。しかし、現在の危機は家計の負債が原因であるため解決は容易ではない。当時並みに深刻な状況だ。今からでも短期中心の住宅貸し出しを中長期に替えるなど対策に力を入れるべきだ」 (中央日報・4月19日付)
李憲宰・元副首相は「李明博政権は、外貨部門での危機再発を防ぐべきだという考えにとらわれて政策の優先順位を誤った」とも厳しく批判した。
不良債権の増加は徐々に進行するので危機感が起きにくい。また、解決には国民の負担を求めざるを得ない。政権も手を付けにくかった、ということだろう。それが今、経済の縮みが現実のものとなって、ようやく「“時限爆弾”が破裂するかもしれない」と皆が騒ぎ始めた構図だ。
ただ、李明博政権の任期は来年2月まで。任期末であるうえ実兄の収賄容疑も立件されるなどレームダック状態に陥っている。果たして政府がこの問題に本腰を入れて取り組むか、疑問視する向きが韓国では多い。
「日本型衰退の兆し」
「韓国経済に日本型デフレの兆候」――。朝鮮日報8月2日付の記事の見出しだ。7月の消費者物価上昇率が1.5%、というニュースの解説記事で「日本の後を追い、20年近いデフレの泥沼にはまるのではないか」と率直に懸念を表明した。
「不動産バブルが崩壊し、その後は少子高齢化により経済規模が縮小し続けた日本になってはいけない」が韓国人のコンセンサス。また、韓国のエコノミストには「少子高齢化こそが日本のバブル崩壊の原因だった」と見る人もいる。
その韓国も今、日本の1990年代と同様に少子高齢化時代を迎えた。生産年齢人口(15―64歳)は2016年ごろピークアウトする。そして、高齢化の速度は日本よりもはるかに速い (「『7番目の強国』と胸を張る韓国のアキレス腱」参照)。
そもそも、短期的な景気後退で不動産神話は崩壊しない。住宅価格が下がり取引が減っていることこそ、住宅を購入する年齢層の減少という少子高齢化の典型的な症状だ。
ことに韓国の場合、年金制度が未成熟のため、不動産の賃貸や転売で生活費を確保する退職者が多かった。今後、彼らが不動産を売りに出し、相場がますます下がると危惧する人も多い。
消費の低迷も景気要因だけではなく、少子高齢化が影を落とし始めたのかもしれない。(後略)