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南アジアの考古学
単著『インダス文明の社会構造と都市の原理』(同成社、2016年9月)を何卒よろしくお願い申し上げます!

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最近は、自転車通学ではなく、リキシャーを利用しています。理由は、通学路である大通り(ナガール・ロード)において規模の大きい工事が至る所で実施されており、スムーズな自転車通学が妨げられているからです。以前までは「個人用リキシャー」を利用していたのですが、ついに「乗り合いリキシャー」を覚え、通学費の「100INRから16INRへ」という削減に成功した、今日この頃です。次の目標は、マラーティー表記のバスを利用した通学です。果敢にチャレンジしてみようと思います。
 
イメージ 1

*写真は(Parpola, Pande.& Koskikallio 2010)より転載。
 
イメージ 2

*図は(Sudai andKonasukawa et al. 2010)より転載。

さて、本題に入ります。「動物・植物」/「動物・人間」に関して。インダス文明社会を根底から規定していた「イデオロギー」が存在するとすれば、それはどういったものとして理解可能か。これは、博士論文の最終章に組込むべく、常に考えている問い掛けです。非常に抽象的な議論になりかねない問題設定であると思うし、現在進めている実証的な研究とどのように組み合わせれば、説得力をもった議論が可能となるのか。非常に難しい・・・。しかし、文明社会の論理を問題にするにあたっては、避けては通れない必要な議論だと思います。
 
私が研究対象に選択している遺物は、主にハラッパー式土器とインダス式印章です。現在製作中の博士論文においても、これらの研究がメインとなります。何故か。簡単に申し上げれば、「それらの主要キャンパスには、いろいろなモチーフが描かれたり、陰刻されるなどして表現されているから」です。インダス文明社会には、インダス文字という文字体系が存在するのですが、未だに解読されておらず、当社会のシステム、特に「イデオロギー」などの復元も、考古学的研究に拠らざるを得ないと言えます。ですから、ハラッパー式土器とインダス式印章に表現される「原始絵画」に注目する訳です。無論、それらの型式学的検討も博論の主要テーマの一つですが。このネタに関しては、本ブログにて度々言及してきました。ただ、最近のデータ整理で新たに気付いたこと(いや、見落としていた資料)がありましたので、それをメモしておこうと思います。見落としていた資料とは、添付した写真(上)の「護符」と理解される遺物です。インダス式印章に認められるモチーフの構造(デザインシステム)ばかりに注目してきましたが、改めて全資料見返すと、この手の資料が結構多く存在することに気付きました・・・。(Parpola,Pande. & Koskikallio 2010)をPDF化中だった一昨日の晩のことです。
 
私の基本的な考えは、インダス文明期における「都市無き社会=丘陵部」/「都市社会=平原部」という二項対立的な視点に基づきます。つまり、インダス文明社会を構成した「都市無き社会である丘陵部」と「都市社会である平原部」、それぞれに見られる「原始絵画」の構造的な読解とその対比です。言ってしまえば、レヴィ=ストロース氏の一連の神話研究や安藤広道氏の最近の弥生イデオロギー論の流れに乗っかってみようという発想です。
 
添付した図(下)は、「都市無き社会である丘陵部」に展開した土器様式に描かれる彩文です。いろんな所で述べてきましたが、この彩文様式の基本的構造は、ご覧いただけるように、「動物・植物」というものです。胴部上半に設定されたキャンパスに、「動物・植物・動物・植物・・・・」と連続的に描かれているのが分かります。その多くは、動物が紐で植物に繋がれ、「動物+植物」となります。さらに、一連のシーンに、「人間」は一切登場しません。つまり、この彩文様式の基本的構造は、「動物・植物」のみから構成される「自然との調和」のイメージを体現していると言えるのではないか、と読み取れます。(*メモなので、非常に簡潔に記しています)
 
さて、次は写真(上)です。これは、「都市社会である平原部」にみられる護符と理解される遺物上に表現される基本モチーフの一つです。上述の「動物・植物」という基本構造との違いは、「植物」が「人間」に置換されている点です。さらに、人間が角飾りを付けた「動物と人間の融合」のイメージも登場します。つまり、「都市社会である平原部」では、「動物・人間(有角の人間)」という構造が認められる訳です。しかも、その「人間」は「動物」を狩っている(殺そうとしている)。言い換えれば、「動物」との対比関係において「人間(有角の人間)」が登場する場合、そのイメージは、動物に対して優位性を持った形で表現されることになります(例えば、槍で攻撃中など)。つまり、護符にみられるモチーフの基本的構造は、「動物・人間」から構成される「自然の超克」というイメージを体現していると言えるのではないか、と読み取れます。
*「都市社会である平原部」には、ハラッパー式土器に描かれる彩文とインダス式印章に陰刻されるモチーフという「原始絵画」も存在します。今回は簡易メモなので、省略します。
 
以上を図式化してみますと、以下のようになります。
 
「都市無き社会=丘陵部」/「都市社会=平原部」
「動物・植物」/「動物・人間(有角神)」
「自然との調和」/「自然の超克」
 
この二項対立的に展開するイメージは、ある一定の範囲、つまり丘陵部と平原部に、それぞれ分布しており、特定の時期に特定の社会あるいはその構成員に共有されたイメージであると理解することが可能です。「都市社会=平原部」は、都市建設のために、新たな土地の積極的な開発を余儀なくされた社会構成体(=インダス文明社会)が展開した場でもあります。そうした意味で、平原部における「自然の超克」というイメージの共有は、矛盾が無いものと考える訳です。反対に、丘陵部は平原に進出することなく、既存の文化伝統を保持しようとし続けた社会構成体が展開した場です。「自然との調和」を体現するイメージは、まさにその文化傾向を反映しているものと思われます。
 
文明社会の成立とともに、平原部では広大な範囲に広がる都市社会としての統合原理=「自然の超克」が新たに「創出」され(伝統の創出!)、丘陵部では既存の文化伝統を保持した統合原理=「自然との調和」が「保持」された。ここには、あえて、近接する社会との差異を強調することで、自己のアイデンティティーを際立たせようとする意図もあるのではないかとも思います。この二項対立的に展開する統合原理の成立プロセスに関しては、また今度。ポイントは、両絵画を構成する基本要素は、同一の彩文様式にその起源を遡れるということです。
 
このような「原始絵画」の構造分析から、インダス文明社会のイデオロギー(インダス・イデオロギー)を読み解ければと考えています。まだまだ、妄想段階ですが、これに環境関連の情報と現在進行中の実証的研究を効率良くミックスできれば・・・。とりあえず、実測しながらも、頭の片隅で思考実験を繰り返そうと思います。今年の目標の一つ。いずれにしろ、Ph.D.論文の最終章でご披露できればと考えています。
 
さてさて、例の「書評」を送らねばなりません。ちゃんと、「ニュース」前に完成しましたよ。明日、お送りします。それでは、また。

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    壮大な構想(妄想)、ドキドキします!
    自然との関係が「調和」/「超克」の二項対立になるのか、私自身は「受動」/「能動」のようなキーワードではないかとも思います。
    レヴィ=ストロース的に言うなら「冷たい」/「熱い」、「静かな」/「動きのある」社会でしょうか、なんちゃって。
    私のテーマはイデオロギーにはなかなか届きがたいのですが、かわりにインフラを解明して見せますよ(嘘)

    [ anoguchi ]

    2011/1/5(水) 午後 9:04

  • 顔アイコン

    壮大な妄想を展開してみました(笑)。しっかりと外堀を埋めつつ、このような議論もしてみたいなという願望でもあります。レヴィ=ストロース氏の神話論理における二項対立的視点(「自然」/「文化」)を応用すると、結果的にすべての構造は、「自然」/「文化」という対立に至るという指摘があります(この指摘自体は、レヴィ=ストロース氏が展開する厳密な意味での構造主義に対する批判なのですが・・・)。安藤氏の弥生イデオロギー論も、結論的にはその二項対立構造を浮き彫りにしています。そこで、インダスの事例にも適応してみたらどうかなと。「冷たい社会」/「熱い社会」=「丘陵部」/「平原部」=「受動」/「能動」です。実測しながらも、頭の片隅で、思考していく所存です(!)。anoguchiさんから、地形・環境に関する議論をお聞きしていましたら、この「妄想」もそれらの議論と上手くリンクしてくるのではと思ったりもしています。

    [ Indus-Saraswati ]

    2011/1/6(木) 午後 3:34

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