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今日の福岡地方は,昼から雨。 晩に会社から帰宅する頃, 街にはやや細かな雨が霧のように漂っていて, 無色透明なはずの空気がホンノリと明るく, まるで曇りガラスや,障子の向こう側から漏れてくる部屋の灯りのような, やや黄色かかった,柔らかい雰囲気に包まれていました。 もう少しまとまった雨だったら, 路面を叩く水の音や,水たまりをはねるタイヤの音が騒々しいのでしょうが, 今晩の雨は,程よく,心なしか静寂さえ感じさせてくれる雨でした。 気が付くと,もう12月も20日を過ぎ, 今週末はクリスマス,来週は仕事納めがあり,週明けには今年とお別れです。 気分的に区切りの良い年越しを迎えたいと, 貯まった課題の数々を少しでも多く片付けようと,せっせと仕事をこなす今日この頃で, 細々と電話をしたり,メールをしたり,出張に行ったりと, 「今出来ることは,迷わず,今のうちに済ませる」時間の過ごし方をしています。 そんな先日,私の部署にお歳暮が届きました。 皆の机に2つずつ配られたお品は缶ビールで, 送り主は,最近,ふとしたご縁で私の会社と付き合いが始まった設計会社。 社員を持たない,社長さん一人だけの小さな会社です。 普段も,他のお付き合いのある会社の方々から, お菓子や缶ジュース,ビール券などを頂くことがあるのですが, 今回の缶ビールには,私の感情を特別に揺さぶるものでした。 この設計会社は,一昨年までの私の研究中心の生活を支えてくれた会社です。 5年程前, それまで勤めていた東京の会社を辞して福岡の母校に学生として戻った時, 生活の糧は,それまでの乏しいキャリアを活かすべく構えた個人事務所の自営でした。 その時,とかく不安定になる自営業を心配していただき, 私に定期的な仕事を与えて,収入を保証してくれたのが, この社長さんだったのです。 その後,私が学生としての課程を修了し,今度は職員として大学に勤務するまでの間, 小さい会社にも関わらず,とても有難い配慮をいただきました。 でも,少々気難しく,気分屋の面もあり,気に入らない人間はとことん嫌う, それだからこそ,会社勤めをやめ,小さいながらも一国一城の主に行き着いたような方でしたので, 時々,私達の間でも意思の疎通に行き違いが生じ,時々,仕事に対するスタンスで衝突もあり, とうとう,お互いに少々冷めたような雰囲気で離れたのが2年ほど前, 私が県内遠方の別の大学に勤務先を籍を転じたのがきっかけでした。 その後,年賀状と現職への就職報告の葉書くらいは出しましたが, いずれも返事はいただけず, 「嫌われて,縁が切れたかな?」と思うようになっていたのです。 ところが,世間が狭いのか,私の活動範囲が狭いのか, 先月にふとした『縁』の連鎖によって, 部内の別の人間が,彼に仕事でお手伝いいただくことに。 最初に彼が会社にやって来て,仕事の打合せをした時, 私は出張で不在でしたので,内心,何故だか,安堵したのです。 何故だか。 でも,その際に,彼が私のことを気にしていたと聞いたので, 再開も時間の問題と思っていました。 それはあっけなく,今月半ばの彼の再来時に。 まずは会議前に私から挨拶を言葉を述べ, 会議終了後に,彼から簡単な近況の交換。 久し振りに面と向かってみると, 60過ぎで,人工透析を受けている社長さんの肌は相変わらず土色で, 人より苦労が多かったことを想像させるシワも増えたように感じましたが, 眼の奥には,何か引っ掛かっていた小さなものが取れたかのような, 安堵の表情が感じられました。 ほころびたのか,私が勝手にほころびたと勘違いしていたのか分からない, 少し微妙な関係でしたが, これから少しずつ,でも長くお付き合いが続いていくことでしょう。 いただく側からお願いする側へ。 仕事の流れが逆転した二人ですが, 技術者としてのキャリアが逆転したわけでもなく, まだまだ私が彼から教わることが多いはず。 昔,可愛がって仕事をくれた恩を,少しずつ返していければ。 1つのわだかまりが溶けはじめた安堵感。 『縁』という言葉がありますが, また1つ,『縁』のかたちを感じた出来事でした。 本日の画像:
今月初めの出張時に足を伸ばした,山陰本線『余部鉄橋』 惜しまれながらも,架け替え工事が始まっていました。 |
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