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地階(日本式にいうと1階)に瑞々しい花屋さんが入居していた私のアパート.
パリのアパートの典型的な建築スタイルでした.
建物の入口には暗証番号ロック付きの大きな木製の扉.
両手を突いて「ヨイショッ」と体重を乗せて開け閉めします.扉というよりも壁でしたね,アレは.(笑)
中に入ると郵便受けがあり,その先,やはり鍵付きのガラス製の扉の内側にエレベータ.
2,3人用の小さなエレベータで,明らかに後から付け足したものでしょう.
その周りをグルグルと,一見豪華な赤い絨毯が敷かれた趣のある螺旋階段が巻きついていました.
この建物の6階(日本式にいうと7階)の屋根裏に私の住まいがありました.
「えっ!屋根裏部屋?」と思われるかも知れませんが,
外観では灰色の屋根の部分にある階層で,中は普通の居住スペース.
通りに面した壁がちょっと傾いてはいますが,むしろパリらしい趣があります.
日当たりだって最高だったんですよ!
ベットもソファーもテーブルもテレビも揃った,家具付きの2DKになるのかな?
先ほどの小さいエレベータを降りて左側に分厚い木製の玄関扉.鍵が3つも付いていました.
玄関を入るとほんのり緑がかった水色の絨毯が敷かれた廊下.
廊下の右側にリビングダイニング,左側にトイレ.
さらに突き当たり右側のちょっと奥に寝室,寝室に行く手前左側がバススーム.
突き当たり左側には広々としたキッチンがありました.
このキッチン,中庭に面した大きな窓から優しい日光が入る真っ白な空間でした.
3面の壁に囲まれていて,左の壁側には大きな冷蔵庫と陶器製のシンク.
陶器製のシンクって初めてだったのですが,食器を落とすとすぐに割れるんですよね.
慌ててシンク用ラバーマットを買いに行きました.(笑)
このシンクの正面が空への玄関です.
次の壁側はゆったりとした調理スペースで,下にはドラム式洗濯機.
取扱い説明書も無く,取り付けもいい加減だったこの洗濯機.
はじめの頃は,洗濯しても,脱水はおろか濯ぎさえもしてくれない,なんてことがザラでした.
試行錯誤で使い方をマスターしましたが,その間に犠牲になった衣類も少々….
脱水の時には振動で暴れまくって,毎回位置を戻してやらないといけません.
さらに給排水用のホースが外れて水浸しになったことも数回.
でも,出来の悪い子ほど可愛いものです.
右の壁側には電気調理器と作業スペース.
この電気調理器,表面の強化ガラスが割れるんじゃないかとヒヤヒヤしました.
ですから炒め物でフライパンを返すことが億劫になって….
結果的にスープや煮込み料理を憶えるキッカケになったかも知れません.
電気調理器の下が大きなオーブン.
これも洗濯機同様,取扱い説明書なんてものはありませんでした.(笑)
でも,どうにか使い方やクセを把握して,お肉もお魚も豪快にロティしていましたよ.
今思い出しても,良い香りが漂ってきます.
この大好きなキッチンでは色々な料理を楽しみました.
友人とあるいは社用で外食すれば,同じようなものを試して,
スーパーやマルシェで珍しい食材を見つければ,やっぱり試して.
フレンチも,イタリアンも,中華も,和食も….
どんなに料理人の腕が悪く,食事抜きのピンチを迎えようとも,
最後はあの窓から見えるパリの空が,最高の味付けでフォローしてくれました.
もうひとつ,このキッチンでの大切な思い出….
スーパーで買ってきたブロッコリーについてきた青虫の「ミドリちゃん」.
初夏の清清しい雰囲気が出始めた5月頃の出来事です.
そのままブロッコリーを一株?プレゼントして,
窓際の冷蔵庫とシンクの間に居候させてあげました.
すぐにサナギになり,「生きてるのかな?死んじゃったのかな?」という状態が続きましたが,
我が家に来てから約2週間,綺麗なモンシロチョウになって私の帰宅を待っていてくれました.
翌朝,大きく開けた窓から青空に向かって巣立っていきましたが,当然その後の様子は知りません.
どこかで幸せに暮らしたと信じています.
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