モコモコ雲を探しに♪

ヤフーブログがなくなるなんて?

全体表示

[ リスト ]

    オーデュボンの祈り
         伊坂幸太郎   新潮文庫    
オーデュボンの祈り (新潮文庫)
http://ecx.images-amazon.com/images/I/5181BF5ZJ1L._AA160_.jpg
 


伊坂作品の登場人物は、作品を越えて暫しリンクし、それを探すのが私の楽しみの一つです。

本書を読んでいて『ハッ!?』
田中カカシ「神様のレシピ」…。
これは、「ラッシュライフ」でお目にかかったことがあるのでは…と、ウキウキ♪


フリーターの伊藤は、コンビに強盗をし失敗。
彼を捕らえ警察官は、元同級生の賢く残酷極まりない恐ろしい男・城山
パトカーが事故に巻き込まれたのを好機と城山から逃れたいがために逃走。

目覚めると「荻島」という島にいて、日比野と名乗る男が島を案内してくれる。
牡鹿半島の南の孤島・荻島は、百五十年前島の外部との行き来をなくしたため、島独自の価値観と常識が存在。
島には「未来が見える」喋るカカシの優午や、犯罪者を勝手に射殺するがいた。

残酷な城山は、伊藤を捕まえようと伊藤の元の彼女の静香に接触し、伊藤同様に静香もいたぶろうと画策。
と静香を脅し、伊藤のいる荻島を目指す。
伊藤の運命は!?

伊藤が島に来ることを予言していた優午は、何者かによりバラバラにされ殺され、を持ち去られる。
未来を見ることができるはずのカカシは、何故自分の死を阻止できなかったのか!?


幼くして両親としに別れた日比野喪失感を抱えて生きています。
その喪失感は、島民の抱えている漠然とした思いにも投影されています。
「ここには大事なものが、はじめから、消えている。だから誰もがからっぽだ」
「島の外から来た奴が、欠けているものを置いていく」   

その欠けているものとは「リアリティ」ではないかと考える伊藤

しかし、この物語自体に、リアリティが欠如しているという面白さ。

本土と鎖国状態の独自の文化や法律を持った島の存在や、喋るカカシや人殺しを公認されている人間の存在も今の日本には到底ありえないから。

そんな設定にも関わらず、読者にすんなり読ませ、知らず知らずのうちに容認させてしまう伊坂ワールドの恐ろしさ♪

リアリティが欠如しているかと思いきや、歴史上の二人の人物が物語の重要な鍵を握っているという不思議なミスマッチ。

その二人とは、島の孤立に影響を与えたかも知れぬと描かれている支倉常長と、百年以上前に『アメリカの鳥』という図鑑を出版した動物学者・ジョン・ジャームズ・オーデュボン

野生動物の絶滅を心配するキャラは、伊坂作品にはつきもの。

人間に絶滅されたかと思われていたリョコウバトが十億もミシガン州のパトスキーで発見され1878年「パトスキーの虐殺」が起き本当絶滅。
リョコウバトに惹かれたオーデュボンはその様を見ているしかなかった。
”リョコウバトに限らず動物の大半が絶滅に向かっていることは誰にも止められない”と言う田中

その田中の話を聞き、優午は言ったという。
『この島がリョコウバトと同じ運命をたどるとすれば、私はオーデュボンのようにそれを見ているしかないでしょう』

『ただ、私は祈りますよ』   

鳥を大切に思っていたカカシの優午が、たちから色々な情報を聞き未来を予想していた。
 「神様のレシピだ」日比野が表情を変えずに言った。「未来は神様のレシピで決まる」
 錯覚ではあったが、カカシはうなずいたかのように見えた。「神様のレシピにはとても多くの材料が並んでいて、贅沢です」    

伊坂作品に「運命」に関連して暫し出てくる「神様のレシピ」という表現のルーツはこれだったんですね。

優午殺しの疑いをかけられた伊藤は、未来を口にしないはずの優午が彼に話した言葉がひっかかり、真犯人を探そうと動き出す。

しかし、優午は伊藤だけではなく多くの島民に「役割」を与え、彼の思惑通り出来事が起こるように仕掛けていたのではないかと気づく伊藤。
優午が人々に仕掛けた「役割」は、パズルの欠片が次々とはまるように次々と人間を操ってささやかな「復讐」に至ったのかと考える。

しかし、優午の身になり考えると、”未来のことを喋らずに、見過ごしてきたことへの謝罪”という違った側面もあったのではと気づかされる。

推理小説に登場する名探偵は、事件が起きるのを防ぐためではなく、解き明かすために存在していることに触れ、名探偵は『自分がいるから事件は起きるのではないか?』『自分がいるから世の中は改善しないのだろうか?』と考えるのではないだろうかと?
その姿に優午を重ねあわすのだ。

名探偵と優午を結びつける所に『なるほど…』と、思いました。

喋るカカシといって連想するのは「オズの魔法使い」
オズのカカシは「頭の中が空っぽで知恵がない」という悩みを抱えていたから。

本書の中では、そのような空虚感を抱えているのはカカシの優午ではなく、日比野を初めとした島民たち全員という、コントラストも興味深い。

彼らの喪失感(=「リアリティ」)を埋めるものの意外な正体は、伊坂さんらしいチョイスに思えました♪

新興宗教観や運命論、絶滅危惧種の野生動物、音楽、警察官等のモチーフに伊坂作品のルーツを感じた作品です。


本書でも多くの登場人物がいるため、今後、リンク探しをしながら伊坂作品を楽しむためにも、忘れないよう覚え書き。

伊藤:28才、元システムエンジニアのフリーター。コンビに強盗をし、城山から脱走。

城山:伊藤の同級生の警察官。「精神の虐殺」に至極の快感を感じる。
日比野:荻島の住人。幼い頃父母を亡くし心に消失感を抱いている。
:荻島で唯一人、本土と行き来する貿易商。伊藤を助け島へ連れて来る。
曽根川:伊藤より少し前に轟が島に連れてきた人物。何者かにより殺される。
優午・カカシ:1855年、禄二郎が死ぬ間際に作った案山子。
   話すことができ、未来がわかる。伊藤が島に来ることを予言。
園山:五年前妻が殺害され、狂人に。反対のことしか話さない画家。
静香:五年前伊藤と別れたシステムエンジニアで二歳年上。
若葉:荻島に住む少女。道に寝転び大地の音を聞く。
草薙:荻島の郵便局員。
百合:草薙の妻。死に行く人の手を握るのが仕事。曽根川を毛嫌い。
:拳銃で人を殺すが、島の法律、ルール、規則であるため島人は容認。倫理と道徳。
ウサギ:体重300圓梁臀。そのため歩くことが出来ず亭主が世話。
:ウサギの祖母。夫と子どもを落雷で亡くし、知っていて教えなかったと優午を責める。
佳代子:日比野が好意を寄せている美人だが、残酷。
希代子:佳代子とは双子の姉妹。
田中:生まれつき足が悪く、鳥をこよなく愛する男。
小山田:荻島の警察官。日比野の幼なじみ。
禄二郎:二百年前の荻島の住人。死に際に鎖国する荻島を、時代遅れにさせまいと、「考えるカカシ」を作る。
徳之助:日比野の祖先。禄二郎の遺志を継ぎカカシにスペイン人の医師・ベラルクの残して行った服を着せ、頭をつける『未来』と名付ける。
:徳之助の妻。カカシの服に『未来』という意味の『FUTURE』と書く。    

が、「ゴールデンスランバー」の轟煙火の社長・と関連があるのかどうか気になっています。

閉じる コメント(38)

紅子さん。轟ってちょっと珍しい名字だから、気になって。偶然?でも、伊坂さんに限って偶然なんてねぇ…(・ω・)?

2008/7/21(月) 午前 8:33 金平糖 返信する

メロディさん。この作品を受け容れることができた読者は絶対伊坂ファンになっちゃうこと、間違いなしって感じですよね。
『大人の童話。でも、毒あり、注意!』って感じ?

2008/7/21(月) 午前 8:35 金平糖 返信する

顔アイコン

こんばんは。これだけ荒唐無稽に広がった話をきちんと収束させる(当時)新人・伊坂幸太郎。ただ者ではありませんね。乙一さんといい、天賦の才というものがこの世には存在するんだな〜とつくづく思います

2008/7/28(月) 午前 1:13 [ たいやき ] 返信する

ミリアムさん、こんにちは。
今、手元にいさか作品が三冊あり、ワクワクしています。
でも、油断ならないので、メモを取りつつ読もうと気を引き締めています。
構成力にいつも感服させられる作家さんです。

2008/7/28(月) 午前 10:26 金平糖 返信する

顔アイコン

金平糖さんの書評の登場人物を見ましたが、こんなに登場していたんですね〜!!そしてみんな個性的♪それだけとっても伊坂さんはすごいですね、やっぱり、
トラバさせてくださいね!

2008/9/6(土) 午後 6:42 ばんび 返信する

ばんびさん。これから出されるだろう伊坂作品はに備え、せっせと人物の覚え書きをしています。
リンク探しは、私の楽しみの一つですから(*・∀-)☆

2008/9/7(日) 午後 5:23 金平糖 返信する

顔アイコン

こんにちは。
このように人物を抜き書きしてくださると、いいですね〜
早速、覚えたてのトラバ、してみます!

2008/9/23(火) 午後 3:51 [ とくだ ] 返信する

プラチナさん♪早速、トラバ返しを頂き、お役に立てたみたいで嬉しいです(*^_^*)
伊坂作品は、作品を超えてリンクしている場合が多いので登場人物を書き留めるようにしています。

2008/9/24(水) 午後 0:34 金平糖 返信する

こんちゃん、わたしたち親子・立て続けに伊坂さん読んでるよ〜!(^^)!どっぷり〜〜。萩島での不思議ワールドはメルヘンを感じつつ読み、城山みたいなのがででてくる場面では恐怖に怖じ気づきながら恐る恐る読み、時にはここグロいから飛ばそうかな〜〜と思いながら読み(>_<)それでもページをめくる手は止められない。娘が伊坂さん読んでると警察とかマスコミとか今まで信じていたものが信じられなくなるぅ〜〜と言ってました(笑)

2008/10/31(金) 午後 3:56 たまごアイス 返信する

たまちゃん。本書を読んでみて『ああ、原点だなぁ…』って、しみじみしてしまいました。伏線の張り方等、まだ現在の作品に比べると凝っていませんが、今でも繰り返し使われる人物や出来事が詰まっている作品でした。仙台人にはたまらない作家さんですよね(*・∀-)☆

2008/10/31(金) 午後 5:20 金平糖 返信する

顔アイコン

こんちゃんが読んだのは文庫なのね。わたしが読んだのは単行本で最後に新潮ミステリー倶楽部賞の選評が載っていたの。これが受賞作だったんだけど結構・酷評されていた。その後に大幅加筆訂正があってそれが本となって発表されたらしいけど、その加筆訂正前のを読んでみたいな。。。

2008/11/1(土) 午前 8:34 たまごアイス 返信する

たまちゃん。「大幅加筆訂正」は、その後出た様々な作品への伏線作りだったのかしら?それでは、読む本によって、この作品の評価は分かれるのかもね?

2008/11/1(土) 午後 6:31 金平糖 返信する

顔アイコン

ごめんね。説明不足だね。世に出ているオ―デュポンは「大幅加筆訂正」後だけよ。単行本の選評は加筆訂正の前の評だから「指摘との若干の差異があります」・・・って書いてあったの。

2008/11/2(日) 午前 7:10 たまごアイス 返信する

たまちゃん、なるほど。それなら、「大幅加筆訂正」前の作品を読んでみたいよね。図書館の蔵書は古いものもあるからもしかして…?

2008/11/2(日) 午前 7:40 金平糖 返信する

アバター

読みたくて、読みたくて…
まずは、一作目かな〜と思って、読めました(死の精度は別物かな?)
面白〜〜い。話に組み立て方が面白い!伊坂さん、読み始めると、はまりますね
トラバさせてくださいね

2009/1/27(火) 午後 3:11 く〜みん 返信する

く〜みんさん。本書には伊坂作品のモチーフのルーツがギュッと濃縮されていますよね。ああ、ここから派生していったんだなぁ…って思いました。
構成の妙には、毎度感服させられます。
「死神」は、短篇で少しテイストが違いますが、構成の妙は健在でしたよね(*・∀-)☆
トラバありがとう♪

2009/1/28(水) 午前 9:30 金平糖 返信する

“神様のレシピ”“カオス理論”まさに伊坂幸太郎の原点、ここにありでしたね♪ 『不思議の国のアリス』のようでもあり、『オズの魔法使い』のようでもあり、独特の世界観でした!

2009/4/30(木) 午後 9:42 やっくん 返信する

やっくんさん。アリスもオズも好きな作品です。それらに共通性を感じてしまう大人の童話といった面持ちを持つ伊坂さんは、春樹さんに似ている気がして、大好きです♪

2009/5/1(金) 午前 7:57 金平糖 返信する

「オーデュボン〜」は登場人物が多いのですが、今まで読んだ作品の中で一番登場人物に力を入れ特徴あるキャラつくりをした作品のようで読みやすかったです。
そうかやはりリンクしてるのですね^。
トラバさせてくださいね〜。

2009/12/6(日) 午後 3:03 ヨねこ 返信する

ヨねこさん。人の一時記憶は7だそうですから、多い登場人物を覚えさせるにはキャラ立ちは必要だったのでしょうね。
ええ、本書がルーツなり、他の作品に関連人物やワードが多々見られます。
トラバありがとうございました♪

2009/12/7(月) 午前 9:59 金平糖 返信する

コメント投稿

顔アイコン

顔アイコン・表示画像の選択

名前パスワードブログ
絵文字
×
  • オリジナル
  • SoftBank1
  • SoftBank2
  • SoftBank3
  • SoftBank4
  • docomo1
  • docomo2
  • au1
  • au2
  • au3
  • au4
投稿

開く トラックバック(10)


.


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事