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     死因不明社会
        Aiが拓く新しい医療
                       海堂尊   
              ブルーバックス  講談社       
★「死因不明社会 ブルーバックス」は、ビーケーワンで★
http://img.bk1.jp/bibimg/0294/02942726.jpg

本書は、エーアイの必要性を訴え、そのための費用を国家が拠出することを提案し、働きかけを行っている書。

案内役は、なんと、あの、私の大好きな白鳥

海堂小説の世界の住人の、厚生労働省技官・白鳥圭輔と時風新報桜宮支社・別宮葉子記者が登場するというブルーバックスでは、初の試みだそうです。
架空の人物二人が会話形式で現実を語り、それに学術的な記載部分を加え、より理解が深まる構成になっているんです。

エーアイは、海堂作品中でガンガン魔人こと島津先生の専門として暫し登場するので、ご存知の方もいらっしゃることと思います。

Aiとは、Autopsy imagingの略号で、画像診断装置を用いて死亡時の医学情報を検索する死亡時画像診断のこと。
代表格は、X線を用いて生態の断層像を得るCTと、磁気を利用して体内を縦横に撮影できる磁気共鳴装置のMRI。
検案、解剖という伝統的な医学検索と、画像診断を融合させた、まったく新しい検査概念のこと。

『日本の解剖率は先進諸国中最低レベルの二パーセント台で、残り九八パーセントの死者は厳密な医学検索を行われないまま死亡診断書を交付されている』という事を知り唖然。

予算がないため、犯罪がらみの司法解剖は毎年きっかり五000体前後とのこと。
これでは、体表異常所見がない殺人は、かなりの確率で見過ごされていることになる…。

私は、死因不明の遺体には、パトリシア・コーンウェル「検屍官シリーズ」(→「異邦人」)のような解剖による検死がなされているかと思っていたので本書を読み、日本の現状を知り愕然としました。

例として、まだ記憶に新しい大相撲時津風部屋で起こった暴行により新弟子が死亡した事件を「死因不明社会」の象徴としてあげ、死亡時医学検索制度の構築がされていれば早い段階で摘発されていただろうと指摘。

行政解剖においては地域格差が著しく、実質機能しているのは東京二十三区のみという衝撃的事実。
しかし、無理解な都知事により、一時縮小撤廃方向の検討がなされていたことを一般市民は知らないと、「無知は罪」と苦言を呈す。

病理学会の試算では、解剖は一体当たり二五万円で、エーアイの一種、検死CTは一体あたり三万円
しかし、費用拠出が行われていないので、経済効率優先の医療者はどちらもやらないとのこと。

医療が経済効率優先の構造になっているため「死亡時医学検索」が蔑ろにされているという現実。

その上、解剖専門医は、司法解剖と行政解剖担当の法医学者百余名、病理解剖担当の病理専門医二〇〇〇人強しかいないという苦しい現状。

このように、経済的面でも苦しく、マンパワーも不足、遺族の了解を取るには心情的に難しい面もあることから解剖数は減少の一途を辿っているそうです。

このままでは、「医学の基礎は死から学ぶという」基本理念は崩れ、医療は崩壊、治安が破壊され、殺人や児童虐待死が見過ごされ犯罪天国へと化す。

そこで、注目されるのがエーアイ

二〇例の検死症例に対し、エーアイを行ったら四例に診断の間違いがあったことから、日本では年間一〇〇万人亡くなり、九七パーセントは解剖されないことを考慮すると、二〇万人の死因が間違われている勘定に相当。

「死亡時医学検索」は解剖に比べ、遺族に精神的にも経済的にも負担をかけず医学検索が行え、得られる医学情報終末期で苦しんでいる患者にも役立つというメリットも。

私は、父の死亡診断書の記載内容について、釈然としないものを感じていました。
もっと、詳細な死因を知りたかった
父を、あんなに苦しめた辛い治療の成果を知りたかった。

下の白鳥の言葉に、遺族として当たり前の感情だったのだと改めて気づかされました。

白鳥  遺族は、愛する家族がなぜ命を落とすことになったのか、ということは、いかなる場合でもきちんと知りたがるものなんだ。そのために死亡時医学検索は希望するんだ。たげど遺体を傷つける解剖には拒否反応を示す。これは人として自然な感情だよね。    

小児科では「死亡例は全例解剖すべき」だと教えられるが、心情的には困難な現状。
しかし、エーアイ活用により、小児病態の医学情報も抵抗なく取得できるし、何より虐待死も見逃すことがなくなることにも。

では、何故、こんなにも便利物のエーアイが、なかなか導入されないのか?

それは、経済的な事情と、医師側の中の反対者の存在が、大きな障壁となっているというのです。

経済的な面は、導入は国民の利になるとして、費用を国家が拠出することを提案。

エーアイ導入に反対する医師とは、「学会上層部にいる臨床医」(厚生労働省と仲がいいため、いい医療制度を作るための阻害要因)と、「解剖学会上層部の人達」(長年虐げられていた為エーアイ導入によりより冷遇されるのではと懸念)。
いずれにせよ、反対派は患者主体の医療を重視していない経済効率や自分の学問業績を優先した人達だと批判。

「死因不明社会」は、市民に様々な不利益を齎しているのに関わらず、霞ヶ関の官僚情報操作にあい、問題認識すら出来ずにいる現状にメスを入れる。

決して官僚を敵視しているわけではなく、「思考停止した官僚」と「硬直した一部アカデミズム集団」が、より良い社会作りのための最大の阻害要因だと批判。

度重なる医療行政のミスにより、疲幣が激しい医療現場の悲鳴を現役医師として警告。

https://blogs.yahoo.co.jp/IMG/ybi/1/b4/b7/popkun_55/folder/1458312/img_1458312_38444829_1?2006-07-04.gif

海堂作品では、首都圏の端の仮想都市桜宮市にある東城大学付属病院を舞台に、事件が起こるたびに医療が崩壊していく様を「チーム・バチスタの栄光」「ジェネラル・ルージュの凱旋」「ナイチンゲールの沈黙」で描いています。

「螺鈿迷宮」では、死亡時医学検索システムが確立されていなかったため起こった悲劇。

「ブラックペアン1988」では、現在の医療崩壊の源流をたどっています。

「ジーンワルツ」では、産婦人科と生殖医療に問題提起し、それにより誕生した命が主人公となった「医学のたまご」では、論文捏造問題にスポットを当ています。

「ジーンワルツ」のマリア病院院長の一人息子の事件のモデルは、二○○四年の「福島・大野病院事件」ではないかと思っていました。

「大野事件」は、本書の中で、エーアイが行われなかったから起きたと思われる不幸な事例として取り上げられていて、医師を逮捕したことに対し、警察官僚による人災と強く非難されていることから「ジーンワルツ」は本件を頭に書かれたのだと確信。

偶然にも、「大野事件」に関しては、この記事を書いている最中の、九月四日御前零時医師の無罪が確定しました。

今まで、海堂作品をミステリーとして楽しまれていた方が大半だと思いますが、本書を読むことにより、社会をよりよくするための筆者の深い考えを知る事が出来、作品への理解もより深まるのではないかと思います。

私は、作品の中で書かれていた様々な事に対し、隠されていた多くのメッセージに気づかされました。

最後に覚え書き
「検視」…警察官が行う。
「検死」「検案」…医師が行う。ほぼ、同意義の言葉であるが法律上は「検案」という言葉が使われることが多い。
上記、三つの用語は似ていて、概念的に死体を体表から観察して異常の有無を調べるもの。

閉じる コメント(22)

日本って遅れてるんですね。検視官では解剖場面がよくでてきますけど日本ではそうじゃないんですね。骨を煮て余分の肉を取る場面よく出て来ましたよね。これは読みたいですね。

2008/9/5(金) 午後 3:48 ひまわり 返信する

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金平糖さん、海堂さんを読破しているんですね♪
海堂さんも、初志貫徹AIに命かけてますよね!!

白鳥、なつかしいなぁ…

2008/9/5(金) 午後 6:25 ばんび 返信する

YUKOさん。えっ!?新作出たんですか?知りませんでした。早速図書館に予約を入れてきました。三十人待ちでしたが、教えてくださってありがとう。書店にはなかなか行かないので、新刊情報に疎いのでこれからも教えてくださいねm(u_u)m
本書のいいたいことは、要はエーアイを活用し費用は国が出せという内容です(*・∀-)☆

2008/9/5(金) 午後 7:45 金平糖 返信する

ラブリさん。本書の言いたいことは二点なんだけど、その背景とかの説明が丁寧でボリュームが出ちゃった感じかも?
ご自身が国を相手に働きかけをされているだけあり、大変熱意が感じられます。
備忘録がわりのブログなので、つい覚えていたいことを要約してしまいまうの…。

2008/9/5(金) 午後 7:49 金平糖 返信する

ひまわりさん。ケイの検屍の様子は衝撃的でしたよね。遺体と丁寧に対話しているような神業でした。なので、警察でも予算の関係で体表からの検死が大半と知り愕然としてしまいました。

2008/9/5(金) 午後 7:52 金平糖 返信する

ばんびさん。エーアイで詳しい死因がわかるなら、大半の遺族はそれを望むと思います。
今の状態では、殆どが「心不全」や「肺炎」なのでは?
海堂さんの新刊は知らなかったので、楽しみです。

2008/9/5(金) 午後 7:54 金平糖 返信する

財政的な問題は、遺族の費用負担で解決するかしら。健康保険制度が破綻しつつある中では、それしか解決方法はなさそうです。防衛費や国際貢献を削減するウルトラCが出来れば別でしょうが・・。
学会上層部の臨床医問題は、世代交代を待つ? でも世代交代しても、同じようなメンバーなんだろうな。

2008/9/5(金) 午後 11:53 りぼん 返信する

りぼんさん。三万円の実費となると渋る遺族も出る気もするので死体検索を義務化した上で保険適用を検討するのが得策かしら?防衛費はほとんど米国への貢物。税は、より良い社会作りのために国民のために使うべきものですよね。

2008/9/6(土) 午前 8:38 金平糖 返信する

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金平糖さんの詳しいレヴューと海堂作品の解説、参考にさせていただきます。まだ海堂さんの小説は一冊もよんでいないので、楽しみです。

2008/9/6(土) 午後 10:59 retro 返信する

retroさん、トラバありがとうございました。
作品を読むと、本書の中での主張がとても理解できる気がします。
私も、再読したくなりました。

2008/9/7(日) 午後 5:27 金平糖 返信する

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今はまだジーン・ワルツ読書中です。チーム・バチスタの栄光も購入しました。今回の著書も気になるテーマですね。また本屋さんに行きます。

2008/9/14(日) 午前 5:41 [ mc ] 返信する

mcさんなら、本書を私なんかよりずっと理解できるのでしょうね。お読みになったら、現場に携わる方の生のご意見を聞かせていただきたいです。

2008/9/14(日) 午前 7:44 金平糖 返信する

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はい!プログで発表します。

2008/9/14(日) 午前 11:04 [ mc ] 返信する

mcさんの記事とトラバ、楽しみにしていますね(*^_^*)

2008/9/15(月) 午前 6:59 金平糖 返信する

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なるほど。勉強になりました。
どなたか書かれていたように、金平糖さんのレビューで本を読んだ気分です。
Aiだけ考えたらメリットのほうが多いので、導入推進が好ましいのでしょう。
でも、バチスタに出てくる手術死などの医療過誤を考えた場合に、進んで医者が導入するとは思えないですし、医療費抑制のなか、導入目的を優先するなら、一旦患者負担で定着をはかるとか。

2008/9/16(火) 午後 11:57 シーラカンス 返信する

シーラカンスさん。新書等の本は、後から、見返し、思い出せるよう筆者の講義を聞きながらノートを取る感覚で読んでしまうので、つい…。
医療ミス発見、今後の医療の学術的サンプルとして、必要だとよくわかりました。仰るとおり、ミスが疑われる場合、病院側は隠蔽もしかねないし、家族の虐待の場合は遺族も承諾しませんよね。義務化をし、保健負担でどうにかならないのかと思いました。

2008/9/17(水) 午前 9:24 金平糖 返信する

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こんな記事がありますからやってきました。
エーアイ、興味深いですね。
私も白鳥のキャラが好きです。
TBさせて下さいね!

2008/11/10(月) 午前 7:47 iruka 返信する

iruka さん、はじめまして♪トラバありがとうございますm(u_u)m
本書を読むと、より、海堂作品を理解できる課と思います。白鳥が解説してくれるのですが、常識人に感じられて、それが、ちょっとだけ違和感でした( ̄ー ̄)ニヤリ

2008/11/10(月) 午前 8:32 金平糖 返信する

Aiが日本全国で一般化されると、医師の肉体的精神的負担や自治体の経済的負担の軽減されるなら、医師不足や財政難に悩むここの県もうれしいことです〜。
TBさせてくださいね〜。

2010/4/28(水) 午後 4:55 ヨねこ 返信する

ヨねこさん。今まで死因不明の遺体はすべて解剖されているのだとばかり思っていたので、本書により驚く真実を知り、怖くなりました。五万円ほどであればAIによる死亡検索を願う遺族も出ると思いました。
トラバ返しありがとうございました。

2010/4/29(木) 午後 4:04 金平糖 返信する

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