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「送り火」(重松清)

    送り火
        重松清   文春文庫       

本書は東京を走る架空の私鉄武蔵電鉄富士見線を舞台にした九編が収められた短編集です。

重松作品の短編集は、それぞれの章が少しずつリンクしている場合があり、そういう作品が私は大好物なのですが、本書の場合は残念ながらリンクしていません。

しかし、それぞれが甘く切なく、時にはゾクっとさせられる印象深い数珠の作品揃いで、読後なんとも言えない余韻を味わえることでしょう…。

フジミ荘奇譚

不倫がばれ家族を失いリストラされ『ひとりぼっち』になった孝夫がたどり着いたのは「富士見荘」、別名「不死身荘」という、曰くつきのボロアパート。
住人である化け猫のような五人の不気味な老婆の立ち退きに協力するよう不動産会社の社長から依頼されるが…。

ハードラック・ウーマン

雑誌のライターである慶子は、企画に困りつい通勤途中に見かけるホームレスの女おばさんを「富士見地蔵」と名付け、願い事を聞いてくれる不思議な存在と記事にでっち上げるが、おばさんの正体とは…?

かげぜん

英之、麻美夫婦のもとには、五歳で病死した一人息子・洋一郎へのダイレクトメールが届き続ける。
麻美は洋一郎の食事を用意し続け、ついDMで見たランドセルも買ってしまったことに不安を感じる英之は思う。

いないはずのひとがいたり、いるはずのひとがいなかったりする家は、どこかにあるんじゃないか──?    

漂流記

晴彦と絵里子夫婦は子育てに適した環境を求め郊外のマンションに転居。
初めて専業主婦となった絵里子は娘・歩美とともに公園デビューを果たすも、馴染めずストレスを抱え、他の公園に行くが…。

よーそろ

人身事故の多い、富士見追分駅員・原島は自殺者を何度も救ってきた。
彼は、駅のポスターなどにある<ムラさんの世界放浪日記>というホームページのURLを書き続ける。
題名の「よーそろ」とは「いじょうなし、このまままっすぐ進め」という船乗り用語。

シド・ヴィシャスから遠く離れて

高校生の時パンクに魅了され、書いた文章が評価されライターになった敬一だったが、パンクが下火になる共にライター生活を終え、シド・ヴィシャスから遠く離れた生活を送っていた。
娘の保育園のお迎えに行った時当時評価していたバンドの蘭丸と偶然再会し、敬一の書に心酔している堀田を紹介されるが…!?

送り火

弥生子の喘息にいい環境のマイホームを得るため苦労して働いてた父が過労死、その後は母子家庭で苦労して育つ。
実家のそばにあった「富士見ドリーム・パーク」という遊園地で見かける幸せそうな親子にいつも複雑な思いを感じていたが、その遊園地も閉園
老いた母を気遣って呼び寄せようとするが、母は父の思い出が残る家を捨てられず、なかなか応じない…。

「あの頃の親って、みんなそうだったよねねいまのひとたちみたいに、自分も楽しんで、家族も楽しんで、って考え方してなかったよね。家族のためになにかをする、家族を幸せにするために自分が苦労をする、そういうのがあたりまえだったんだよね…」   
昔のドリーム・パークを思い出していると、必ず聞こえてくる歓声…。

家路

離婚を考え別居中の浩輔だが、人恋しく、つい飲み歩く毎日。
そんなある日、ホームのベンチに座り続ける男が気にになり声をかけると、彼は、帰りたいのに帰ることが出来ない自分を憂い浩輔は帰る場所があるのに「どうして帰らないんですか─?」と問う。
彼の姿は、浩輔にしか見えないらしい!?

彼は言う。
「家族には『さよなら』っていう挨拶はないんです。別れるときは、いつも『行ってきます』と『行ってらっしゃい』で、それを言ったら、ちゃんと帰らなきゃ。私みたいに約束を破って、子どもに『さよなら』なんていわせてしまったら…だめですよ、ほんとに」   

もういくつ寝ると

一人娘の翠は、母の代理で両親の墓を探しに行き、若夫婦と、気難しそうな老人と出会う。
偶然にも、若夫婦の購入した墓と自分の両親の墓は隣同士、老人の墓は真向かいだった。
終の棲家である墓は、「また家族一緒になる場所だからマイホームと同じ気持ちで探す」と言う人、自分一人だけで入るために求める人、人様々の事情…。

翠はふと思う。
夫と一緒のお墓に入ることがどうしても嫌だから─というのは、正当な離婚の理由になるのだろうか?   

https://blogs.yahoo.co.jp/IMG/ybi/1/f7/46/dona_house/folder/1425073/img_1425073_30347147_12?20060319205416.gif

私も東京の、ある私鉄沿線で育ちったため、つい本書の登場人物たちに、自分を重ね、感情移入しながら読んでしまいました。

「もういくつ寝ると」の翠の実家のように、実家はその沿線の奥へと引っ込み、母は「送り火」のお母さんのように遊園地のそばで一人暮らしをしています。

亡き父は、その遊園地に、子ども時代の私、そして孫である私の子供たちも連れて行ってくれ、たくさんの思い出を作ってくれました。
確かに私の親たちの世代は、自分たちが乗り物に乗って楽しもうなどと思っていなかった気がします。

「もういくつ寝ると」の主人公・翠は、危篤状態の父のための墓を母の依頼を受け、母を案内した時、直に母もその墓で眠ることになろうだろうことを予感します。

本書を読んでいた炬燵の上には、墓石の見積書。
実は、先日、私も母を連れ、お墓の下見に出かけて来たばかりで、翠と同じように感じたものでハッとさせられました。

お墓の場所は、たぶん重松さんが小説のモデルにした地区だと思います。
駅前のロータリーに、墓地とニュータウンの見学用のバスと、大学のスクールバスが止まっているロケーション。
偶然、前を走るスクールバスは、母校のものでした。

夫の実家の墓に入るつもりだった翠は、自分の行き場を考えるようになり始める…。

私には弟もおり、嫁に出たのに実家の両親と入るためのお墓を自分たち夫婦が建立する事になるとは思っていませんでした。

墓地を見学した時、「○○家」と墓石に刻めない自分たちのようなお墓は許されるのかと不安でした。
しかし、新しいお墓には、「○○家」と刻まれていないものも多く(´▽`) ホッ
家族形態や、お墓への考え方も変わってきたのだと、つくづく思いました。

両親と同じお墓に入れるのかと思うと感慨深く、お墓は「また家族一緒になる場所」だと本書の中で語っていた若夫婦の言葉が心にしっかりと心に刻まれました。

そんなわけで、この章は大変感印象に残りました。

「漂流記」は、最近読んだ三羽省吾さんの「公園で逢いましょう」より、ずっと母親関係の難しさが生々しく描かれていて、自分たちにあった公園を探して求めて漂流し続ける母子に、つい自分の体験を重ねるママも多いのでは?

かくいう私も、『そんな事もあったなぁ…?』と、思わず苦笑い。
文京区の音羽であった衝撃的な事件にも触れられていて、公園デビューの難しさに焦点を当てた当時の風潮も思い出しました。

あとがきに、重松さんは遊園地の観覧車メリーゴーランド(そして黒髪の乙女( ̄ー ̄)ニヤリ)が大好きで、それを題材にした作品はこれからも書き続けると書かれていらっしゃいました。

残念ながら黒髪の乙女の印象は私の中では薄かったのですが、観覧車とメリーゴーランドの出てくる作品には、今までたくさん感動させていただきましたので、これから読む作品でそれらを探す楽しみも出来ました。

作品の題材は、友人との会話等で得たと書かれていただけに、私と同世代や三十代以上の方には、共感できる作品があるのではないでしょうか?

私には、まさにストライクゾーン。
そのため、この記事が、すごく私事寄りになってしまったことを、ちょっと反省。

閉じる コメント(16)

読んでいないわたしにももろストライク〜〜!どうして重松さんの持ってくる題材ってこんなに惹かれるのかしら・・・って思うくらい。わたしも新潟にくるまで遊園地の見える団地に住んでいたの。観覧車とかニュウタウンとか聞くだけできゅん!だわ〜。これは娘の学校に予約だわ(笑)

2009/1/24(土) 午前 8:43 たまごアイス 返信する

私も重松さんと同世代。重松さんの本はストライクゾーンにくるものが多いです。出てくる人達が30〜40代で、置かれた立場が自分と似ているから、読みながら、いろいろ考えてます(^^)
これはまだ読んでないので、早速探します!

2009/1/24(土) 午前 9:34 くろねこ 返信する

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またまた感動できそうな作品ですね。
最近はすっかり重松さんファンになりました。
「希望が丘の人々」と言う新刊も気になっています。

2009/1/24(土) 午後 5:32 YUKO 返信する

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読みました。
「死」がテーマになってませんか?この世のものでないものとか
重松さんはほぼ同世代なのでどの話を読んでも
「こんなことあるよな、、、」って思います
遊園地の話、懐かしい感じがしていいですよね

2009/1/24(土) 午後 6:46 [ - ] 返信する

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あ〜またまた読みたい本が増えちゃった!!
予約入れます(^^)

読んだら、帰ってきますネ!

2009/1/25(日) 午前 9:42 く〜みん 返信する

たまちゃん。人生の悲哀を感じさせる作品ばかり。この世にいないはずの「流星ワゴン」の橋本さんみたいな人も出てきて、ゾクリとさせられ、奇譚集の趣きもある。読んだら、感想聞かせてね(*・∀-)☆

2009/1/25(日) 午前 11:54 金平糖 返信する

くろねこさん。公園の人間関係とか、妻として、娘としての作品は女性に、仕事や家庭の不満は男性のストライクゾーンだと思います。男女問わず共感できる作品があるのでは?感想、お待ちしていますね(*・∀-)☆

2009/1/25(日) 午前 11:57 金平糖 返信する

YUKOさん。重松さんは年末から、数冊新刊を出しているんですね。まだ、図書館には蔵書がないので、絶対リクエスト、いれて来ます。

2009/1/25(日) 午前 11:58 金平糖 返信する

nazuさん。遊園地、それもテーマパークといった感じじゃない遊園地って、悲哀があり、いいですよね。人気はないけど、たくさんの人の心には色々な思い出が詰まっている…。

2009/1/25(日) 午後 0:01 金平糖 返信する

く〜みんさん。私たち世代には、感慨深い作品ばかりです。
トラバ、お待ちしていますね(*・∀-)☆

2009/1/25(日) 午後 0:02 金平糖 返信する

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読みました。私の中では「よーそろー」が印象的でした。

2009/1/26(月) 午前 10:47 [ mc ] 返信する

これは新刊ですか?うへぇー、重松さんはどんどん作品が出るので全然ついていけません^^;;過去の本から読むか、新刊を追っかけるか・・・

2009/1/27(火) 午後 11:17 紅子 返信する

mcさん。「よーそろー」みたいな、駅員さん…(T_T)命って、気づかないうちに、誰かの愛によって支えられているのかもしれませんよね。

2009/1/28(水) 午前 9:09 金平糖 返信する

紅子さん。本書は文庫なので新刊ではあありませんが、比較的新しい作品。重松さんの執筆のスピードはすごいです。

2009/1/28(水) 午前 9:11 金平糖 返信する

何度か涙しました〜〜。「かげぜん」「漂流記」「送り火」「もういくつ寝ると」でつい涙がぽろりと。。。。やはり家族間の話に感情移入しちゃうわ〜〜。重松さんは読んでも読んでも尽きなくてうれしいです(^.^)トラバするね(^_-)-☆

2009/1/31(土) 午後 5:08 たまごアイス 返信する

たまちゃん。やっぱ、私たち似てるわよね…。泣けるポイントが同じ…。どうしても、娘として、そして母として読んじゃうんでしょうね…。トラバありがとう。でも、二作トラバしているからなぁ…。ちよっと、遠慮(*・∀-)☆

2009/1/31(土) 午後 9:23 金平糖 返信する

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