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米ロサンゼルス・タイムズ紙の原発報道です。拙訳にて。 福島第一原発に溜まった何百万ガロンもの高濃度放射能汚染水をどうしたら安全に処理することができるのか誰にもわからない。アメリカの専門家は「これほどのスケールの出来事をわれわれは以前試みたことはなかった」と語る。 約4週間にわたり、日本の救急隊員は全面的メルトダウンという災難を回避するための必死の努力として、破損した福島第一原発の原子炉に水を散布してきた。 原子炉1基の悪夢に対するその間に合わせの解決策が、現在あらたな問題を生んでいる。高い放射能を含んだ何万ガロンもの水が原発から流れ出ようとしている時、この汚染水をどう処理するかという問題である。 原子炉と危険な使用済み核燃料棒を冷やそうとして使われている水は、原発内部の亀裂から漏れ出て、トレンチや通路を通して下層に染み出し、おびただしい死の廃棄物となって蓄積している。 これをどうしたら安全に除去することができるのか誰にもわからない。 「これほどのスケールの出来事をわれわれは以前試みたことはなかった」 アメリカエネルギー省次官補Robert Alvarezは言う。 日本の当局者は、すでに約1500万ガロンの高濃度放射能汚染水が溜まっていると算定する。漏出の危険性のある原子炉に東京電力が冷却材を投入し続けるにつれ、何十万ガロンもの放射能汚染水が日々増産され続けている。 結局は、水に含まれる高レベル放射性物質は安全に貯蔵され、処理されて固体化されねばならないだろう。ほぼ間違いなく、専用に設計されたコンビナートで処理されねばならない作業であると専門家は言う。水を除去するプロセスは、完了するまで数年ないし数十年かかるとみられる。その費用は数百億ドルに上るとみられる。 原子力規制委員会の元委員であり核廃棄物に関する長年の顧問であるVictor Gilinsky氏は、日本が直面している問題は、汚染度が最も高いワシントン州の合衆国核兵器施設Handford核保留地をさえ上回ると言う。 外部見積もりによれば、エネルギー省は、Hanfordにある8つの原子炉を廃炉にしているところであり、現在漏出のみられる地下タンクにある5800万ガロンの放射能を含んだ汚泥をすべて、算定費用1000億ドルから1300億ドルかけて処理する計画である。しかし福島第一原発とちがい、Handfordの原子炉はいずれもメルトダウンを起こしておらず、事実上すべての敷地に作業員は危険レベルの放射能に曝されることなく近づくことができる。 アメリカの費用は不必要に高額で、日本はもっと経済的に作業を行うことができるだろうと断った上で、Glinsky氏は「福島原発での作業はHanfordを上回る大変な作業となるであろう」あろうと言う。 日本が直面している緊急の問題は、どのようにしてこれらの水を全て貯蔵し、原子炉および使用済み燃料プールを制御下に置くかということである。原発内の主力貯蔵タンクはほとんど満杯である。スペースを作るため東電は放射性レベルが最も低い汚染水200万ガロンを大洋でその放射性要素が希釈されるだろうとの予想のもとに、今週海に放出した。 しかし国際法は、先に実行可能な技術的解決が見込めるのであれば、日本は海洋への汚染水投棄をしてはならないとしている。 そこで東電は、約250万ガロンの放射能汚染水を搭載可能な「メガフロート」とよばれる人工浮島を含め、はしけやタンクを導入することを検討している。日本はすでにロシアに、太平洋のウラジオストック港でロシア原子力潜水艦を解体するのに使われた「スズラン」とよばれる放射能処理の水上施設を送ってくれるよう要請したと伝えられている。「スズラン」は10年前日本で建設された。 だが放射能汚染水を一時的に取り扱うためにはしけやタンクを使用することさえ、それらの汚染された船をどう処理するのかという将来的な問題を生み出す。 処理問題解決の鍵には、放射性要素が凝縮してより安全な乾燥した形態の固体になるよう、大量の汚染水を減少させることが含まれると日米の専門家は言う。しかし厳密にどのようにしてそれを行うかについては、廃棄物専門家の間で意見が分かれている。 汚染物質を凝縮させて固体にする難作業は、水の中にどれだけの放射能が含まれているのか、同位体の型は何か、また福島の施設でその作業を行うことができるのかどうか等にかかっている。 カリフォルニア大学バークレー校のエドワード・モース工学教授は、汚染水が早急にコンクリート棒の並ぶ溜池に転換される必要があり、その形態になれば自然の蒸発が汚染水の量を減じる助けとなるだろうと語った。 日本の専門家は概して密閉プールの必要性について語っているが、名古屋大学の核化学工学の専門家榎田裕一氏は、汚染物質が蒸発を通して凝縮されるような形で貯蔵されるべきであると同意する。 「液体を凝縮しなければなりません」と榎田氏は言う。 溜池をもってしても、放射性物質が扱えるようになる程度に放射能が分解するまでには10年かかるだろうとモース教授は言う。その間に貯蔵池の建設を進めることで「時間稼ぎにもなる」。 しかしこの意見に強く反対する専門家もいる。汚染物質を外気に晒すことには、原発から数10マイル離れた地点にまですでに拡散している遠隔汚染に加え、放射性ヨウ素やその他の揮発性物質が施設を吹き飛ばす危険性があると言う。 問題をきわめて複雑にしている要因は、核分裂の過程で生み出される重水トリチウムの存在である。トリチウムは水で濾過することができず、代わりにきわめて高額な処理過程を必要とする。 「もし汚染水に比較的高濃度のトリチウムあるいはトリチウム水が含まれているとしたら、汚染水の処理はより複雑になりうる」とカリフォルニア大学バークレー校の核廃棄物専門家Joonhong Ahnは述べた。 原子力発電所には通常トリチウムをその場で処理するシステムが備えられているが、福島原発のシステムの状態と性能は不明である。 もし水を凝縮させることができるならば、Hanfordや世界中の核汚染施設で計画されたように、次にそれを乾燥した形態に変えるかあるいはガラス状にさえ変えることが可能になると榎田教授とモース氏は言う。しかしガラス化とよばれるこのプロセスは高額であり、小規模な産業施設が必要となる。 代替案としては、汚染水の処理を日本以外の別の場所で行うことが考えられるが、論争を呼ぶことは必至で、「漁業関係者は強く抗議するだろう。これは避けられない」と榎田教授は語った。 原子力発電所は少なくとも6カ月の緊急安定化と約2年の一時的修復、そして2年から30年の全面的除去作業が必要となる。さらに、原発施設の土壌の高濃度放射能汚染は、今後数十年にわたり施設で働く作業員の生存に不安を投げかけている。 除去作業を行うには数年あるいは数十年にわたり、何百人何千人という作業員を必要とする、と専門家は言う。 アメリカの当局者はいまだ日本の当局者と汚染水管理の問題について話し合ってはいないが、原子力規制委員会審議官のスコット・バーネル氏は、これほどの損壊を被った原発では初めてではあるものの、原子力産業は放射能汚染水から放射能を濾過することにかけては長い経験があると語る。スリーマイル島の事故では、トリチウムもまた拡散することを覚悟で、トリチウムに汚染された水を蒸発させることが決定された。 しかしいずれかの時点で、日本は放射性物質を合金の容器に貯蔵できるようガラス棒か他の乾燥形態にガラス化するため、既存の処理施設に加えて新施設を建設しなくてはならなくなるだろう。これらのガラス棒や容器は、どこかに埋められなくてはならなくなる。 その埋蔵施設がどこに建設されるかは、日本人が考え始めたばかりの問いである。 (ロサンゼルス・タイムズ 4月7日) |

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