コトコトつづり

涙が玉となってあふれる寸前に そこにのみ映る かけがえのない景色がある

全体表示

[ リスト ]

映画「横道世之介」

観たいと思っていた映画「横道世之介」を鑑賞。
とても良い映画でした。

内容としては
主人公・横道世之助(高良健吾)が大学入学のために長崎から上京して
そこで織りなされる人間模様というか、世之助の青春日記みたいな物語。

主人公・世之介は、どこにでも居そうな純朴で、人懐っこい青年。
もともとの人柄なのか、田舎育ちだからなのか、ひととの距離も近く、温かく、ちょっと図々しい。
けれど、世之介に出会うひとは、何だかみんな彼を好きになってしまうのです。
世之介の純朴さとおとぼけさ加減、オープンマインドで屈託のない感じが
「この人に会って、なんだか自分はちょっと得をしたなぁ」とニンマリさせてしまうような
独特の雰囲気を持っています。

大学で友人を作り、サークルに入り、バイトをして、恋をして…というような
日常的でありふれたできごとを世之介18歳から35歳までというスパンで描いている映画です。


字面にすると、どこにでもあるような青春物語で、
それを延々2時間半強にわたって見せられるのだけれど、これがそんなに長く感じないから不思議。

まず、映画の構成が良い、というのが理由の一つだろうと思います。
18歳の頃の世之介を描きながら、時折、それからずいぶん時間の経った場面がいくつも挿入されていきます。
なので、「ああ、この後、こんな風になるんだなぁ」というのが
ところどころで観客に伝わるようになっていて、“その間”を想像しながら観る楽しみがあるのです。

それから、主人公のキャラ設定が良いということ。
登場人物たちと同じく、観客はたぶん世之介のことをわりと早い段階で好きになってしまうんじゃないかなぁと思います。
私としては途中で「フーテンの寅さん」を思い起こしたのだけれど
人たらしという意味では、もしかすると坂本龍馬も実際にはこんな風に平凡で、流されやすいけど
人にはなぜか好かれてしまう…という人物だったんじゃなかろうか?という気までしてくるから不思議です。

次に、時代設定が面白いこと。
スタート(世之介18歳時)が1987年になっていて、計算上、世之介は私より1つ年上になっています。
同時代に大学生活を経験した私にとっては、映画のそこかしこに出てくるキャンパスの雰囲気、
街並みや流行していたもの、デートの様子など、当時を思い出して
なんだか懐かしいものに触れたような、切なくなるような、そんな魅力を感じたのです。

それから、初めてづくしな感じですかねぇ。
まあ、青春映画にはよくあるのですが、18歳前後からの数年って“初めてづくし”じゃないですか。
一人暮らし、アルバイト、深い恋愛関係、うんぬん。
その初々しく、不器用な感じがね、なんだかジンと来たりするわけです。
早い人は早いし、遅い人は遅いし、その“混じり合った感じ”が、なかなか青春だな、と(笑)。

映画の中で、
世之介の大学時代の友達・加藤(綾野剛)が数年後に恋人とバルコニーで語らっている、というシーンが挿入されるんですよ。
加藤は世之介のことをふと思い出して、クスクス笑いだしてしまう。
そのクスクスの理由を恋人に尋ねられて、なんとか説明しようとするんだけど
世之介の“感じ”がうまく言葉には出来ない。
言葉にしようとする端からまたクスクス笑いだしてしまう。
そして、最後に
「あいつと出会って、世之介を知らない人よりちょっとだけ人生得した気分になる」って言うのね。

その“お得感”っていうのは、物質的なお得感ではなくて
“その後を生きていくための、ちょっとした熱源”っていうのかなぁ。
その人のことを、その人といた頃のことを思い出すだけで、ちょっと心が温まって
「人生、そんなに悪くない」とか「人といるのも、そんな悪くない」とか
そんな風に思えてくる“お得感”なのかなぁって思うのです。
ひとって、そういうちょっとした熱源をいくつか持っていて
そういうので案外、支えられているような気がするのです。

それと、ネタバレになるから詳しくは書けないんだけど、世之介と交際する女性が出てきます。
世之介はたぶんそんなに好きなわけじゃないんだけど
彼女のほうから積極的にアプローチがあって、まあ、なんだかんだ流れで付き合うことになるんですけど
そういう「好きでもないのに付き合う」みたいなのって、女子からするとアレなんだけど(笑)
それでも、その一見、軽く見える交際の中にも、ちゃんと世之介らしさというか素敵な部分がいっぱいあって
世之介は野望も夢も、恋愛へのパッションも低くて、一見流されて生きているんだけど
(サークルの勧誘でサンバ・サークルに入ってしまうあたりなんかも結構、流されている!笑)
それでも世之介流の生き方がそこにはあって
「人生って、ふつうそんなもんなんじゃないかなぁ」という気がしてきます。
誰しもパッショネイトに生きてるわけじゃないものねぇ。

ふつう映画って、野望とか夢とか愛とか成長とか、そういうものがドラマチックに描かれているものなのですが
この映画にはそういうところが一切なく、その脱力感がリアルで、観る人に親近感を与えるのかなぁとも思います。

世之介のような人が世の中に5%くらい居たら、この世の中は面白いんじゃないかなぁと思うのですが
同時に、私たちの日々の生活の中にも、5%くらいは“世之介的な日常”があるのに
そのことを忘れて(というか、とくに取り立てて良いものと思わずに)生きているだけなのかもしれないなぁ
という気もしてきます。

戦争や病気、事故、事件、不倫…そういう非日常を描いて、映画をつくるのは比較的簡単なのですが
この手の“ありふれた日々”をモチーフに、ここまで面白い映画をつくるのって難しいんじゃないかな、と思います。

なので、原作も脚本も演出も監督も俳優さんも、みんな素晴らしいんだろうなぁと
しみじみ感じる良い映画でした。

閉じる コメント(4)

顔アイコン

あいつ、今ごろどうしてるかなあ〜、と思わせておいて、ビックリするようなラストシーン。あの事件の人物だったのか…。
誰にでも友だちに世之介みたいないい奴いたんじゃないですかね(笑)
わたしもお気に入りの映画でした。

2014/3/23(日) 午後 1:25 瀧野川日録

アバター

瀧さん、ありがとうございます。
私、記事の中で5%っていうのを書きながら、
もしかすると実際、5%くらいは実在してるんじゃないかなぁっていう気になってたんですよ。
だって100人に5人ですから、20人に1人となれば
友達にひとりくらい居そうですもんね。

瀧さんのところの紹介記事も、なんだか沁みました。

2014/3/23(日) 午後 1:48 [ リリカ ]

顔アイコン

リリカさーん、TBするって書いてくれたけどTBできてないですよぉ(笑) で、仕方がないから、黒ヤギさんからお手紙もらった白ヤギさんみたいに、こちらからこの記事にTBしてみたんですが、何故かできません(-公- ;)

2014/3/23(日) 午後 7:24 [ yama_eigh ]

アバター

yama_eighさん、ごめんなさい。
お昼に何度かトライしたんですけど、うまくいかなくって(汗)。
何度もクリックしちゃったので、ものすごい数になってたらどうしよう!とか思いつつ。
また、あとでトライ…と思っている間に、こちらに来ていただいたんですね。
この黒ヤギさん、白ヤギさん加減が、デジタルなこの現代に
ちょっとだけ顔をのぞかせる人間くささ、みたいな感じで
かえって良くないですか?笑

とはいえ、この度はお手数をおかけしました。
今後ともよろしくお願いします(^o^)。

2014/3/23(日) 午後 10:43 [ リリカ ]

開く トラックバック(1)


.


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事