コトコトつづり

涙が玉となってあふれる寸前に そこにのみ映る かけがえのない景色がある

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村上春樹の新刊「女のいない男たち」が18日に発売されました。
発売日に書店に立ち寄ったので、ついでに買ってみることにしました。
 
彼の作品は長編が好きなので、短編集にはあまり興味がなかったのですが
ちょっとしたきっかけがあって、読んでみることにしたのでした。
 
これらの短編が発表された文芸春秋などは読んでいなかったので
初めて目にする作品ばかりでした。
読み始めたら面白くて、週末にあっという間に読んでしまいました。
 
この短編集には珍しく「まえがき」が付いていました。
私は作者の手による「まえがき」や「あとがき」が
読者へのお手紙のようで好きなのですが
村上春樹氏はこれまでほとんどの小説に、そういうものを付けたことがありませんでした。
 
本書のモチーフはタイトルどおり「女のいない男たち」だ。
いろんな事情で女性に去られてしまった男たち、あるいは去られようとしている男たち。
 
まえがきにはそう書かれています。
 
実際、物語の中に登場する男たちは思いもよらぬ形で女性に去られてしまい
ある人は途方に暮れ、ある人はこれまでとは別の人生を歩み始めます。
 
物語はどれも面白いもので、早く続きが読みたくなるような
さすがはストーリーテラーだと感心するようなものばかりです。
 
しかし、すべて読み終えた時、作者は何を描きたかったのだろうか…という思いにとらわれました。
いや、面白かったならば、面白い!でいいじゃないか。
そういうことに考えを巡らせるのは無粋だ。
そんな思いも同時に湧くのですが、やっぱり無粋なことを考えてしまうのです(笑)。
 
愛を失った人たちを、何度も形を変えて描くことで
愛の本質を描こうとしたのか?と、はじめは思いました。
 
たとえば、健康そのものについて描くのは難しいけれど
病によって(あるいは不慮の事故によって)健康を失ったひとがモチーフとなった作品は
おのずと健康について考える機会を与えることになる。
そういうの同じように。
 
ジグソーパズルでいえば、周りのピースが組まれることによって
失われたピースの形が明らかになるように。
 
けれど、そうして考えてみると
いくら輪郭が明らかになったところで、失われたピースに何が描かれていたのかは
永遠に分かりません。
周りの模様を見て、推測するしかないのです。正解は永遠に失われたままです。
 
となれば、この女(あるいは愛)を失ったひとをどれだけ精緻に描いても
失ったものの輪郭が明らかになるだけで、その本質は永遠に謎のまま…というわけです。
 
こんなことをつらつら書きながら思ったんですけど
もしかすると、そこがこの本のミソなのかもしれませんね。
だって、描かれないからこそ読者が自分で埋めるしかなわけです。
たとえ、それが間違っていようとも。
 
そこは作者と読者の共同作業というか。
その組み合わせの数だけ、最後のピースの模様は違う。
 
そう考えると、なんとも趣のある感じがしてきます。
そうか〜そうかもしれない。
だんだん、そんな気がしてきましたよ〜(笑)。
 
…というわけで、面白い本でした。
 
ささ〜っと読んでしまったので、あと2、3回読み直してみようと思います。
 
個人的には「イエスタデイ」が好みでした。
「木野」はこの本の主題といえるかもしれません。
 
まあ、そんな私個人の意見は忘れて、頭からゆっくり味わってみてください。
その上で、またこの記事を読み直して、コメントなどいただけると嬉しいです。
 
 

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閉じる コメント(4)

私ね〜、「多崎つくる〜」は正直「勘弁してよ(笑)」と言う感じだったのですが、これは素直によかったです。

私が一番好きなのは「独立器官」かなぁ。

人生に答えがないように、小説に書かれる人間の生き様にもまた答えはない。・・・それでいいと思うんです、よね。

2014/4/21(月) 午後 6:25 [ - ] 返信する

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こんにちは。amazonで購入済みなんですが、まだ読んでいません。
楽しみながら読みます。

2014/4/21(月) 午後 8:04 瀧野川日録 返信する

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ラプンツェルさんもさっそく読まれましたか。
「独立器官」も好評のようですね。

私は「独立器官」を読むと、ある人物を思い出して
少し哀しくなってしまいます。

2014/4/22(火) 午後 7:23 [ リリカ ] 返信する

アバター

瀧さん、こんばんは。
少しずつ楽しんで読んでください。
私はどうも急いで食べてしまうタイプのようで(笑)。

2014/4/22(火) 午後 7:24 [ リリカ ] 返信する

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