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汚染原因者に対する指示及び措置命令
ア.趣旨等 知事は、土地の所有者等以外の汚染原因者が明らかな場合であって、当該汚染原因者に措置を講じさせることが相当と認められ、かつ、当該汚染原因者が措置を講ずることにつき土地の所有者等に異議がないときは、汚染原因者に措置を指示することとした(法第7条第1項ただし書)。 「汚染原因者に措置を講じさせることが相当」については、①を参照されたい。 また、指示の手続、指示措置等の実施義務及び措置命令並びに指示措置等に関する技術的基準については、土地の所有者等に対する指示と同様である。 イ.汚染原因者の特定 (イ) 汚染原因行為 汚染原因行為には、特定有害物質又は特定有害物質を含む固体若しくは液体を埋め、飛散させ、流出させ、又は地下に浸透させる行為が該当する(規則第34条第1項本文)。 その結果、汚染原因行為には、特定有害物質を当該土壌中に移行させる行為については、意図的、非意図的のいかんにかかわらず、すべてが含まれることとなる。また、汚染土壌の飛散又は流出を防止するための設備が設けられている場合において、当該設備を土壌汚染を生じさせる程度に損傷し、又はその機能に障害を与える行為についても、汚染原因行為に含まれる。 いずれにしても、これらの基準に適合する廃棄物の埋立処分等が行われた土地については、規則第41条の規定により、汚染の除去等の措置を行ったものとみなされることから、形質変更時要届出区域に指定されるが、そこから土壌汚染が漏出し、かつ、人の暴露の可能性がある場合には、「これらの基準に適合する廃棄物の埋立処分等が行われた土地」とはいえないことから、要措置区域に指定された上で、指示がされることとなる。なお、漏出に伴い措置を指示する場合の汚染原因者は、適切な漏出防止措置を講ずる責任がありながら、これを講じなかった者となる。
(ロ) 汚染原因者の特定の方法
汚染原因者の特定は、水質汚濁防止法の届出記録等の特定有害物質の使用状況、当該工場・事業場等における事故記録等の汚染原因行為の有無等に関する情報の収集を行い、汚染原因者である可能性のある者を絞り込み、当該特定有害物質の土壌中での形態や土壌汚染の分布状況等から、その者が当該特定有害物質を取り扱っていた期間内に生じさせた土壌汚染の可能性について検証して行うものとする。 なお、その土地でその特定有害物質を使用していた者が一者に限られ、かつ、自然的原因(天災及び戦災を含む。)による汚染が考えられない等、各種の情報からみてその者の行為により汚染が発生したと推定することにつき十分な理由があるときは、汚染原因行為の具体的内容の確定まで行う必要はなく、その者を汚染原因者とすることができる。 都道府県は、汚染原因者の特定について、汚染原因者と目される者等の任意の協力を得つつ、自らの負担により行うこととする。 汚染原因者が明らかな場合は汚染原因者に措置を指示することとした法第7条第1項ただし書の趣旨を踏まえ、土地の履歴、周辺の土壌や地下水の汚染状況、特定有害物質の使用等の位置及び化合物形態等の把握をできる限り行う等、できる限り汚染原因者の特定に資する情報を収集し、汚染原因者を特定するよう努めることとされたい。 ウ.指示の手続等 (イ) 指示の手続 汚染原因者に対する指示の手続が土地の所有者等に対する指示と同様であることは前述したとおりである(ア参照)。 これに加え、同一の土地について汚染原因者が複数存在する場合の指示は、当該複数の者が土壌汚染を生じさせたと認められる程度(以下「寄与度」という。)に応じて行うものとする(規則第34条第2項)。 指示に当たっては、これを迅速に行うことが適当であることから、寄与度に応じて責任を果たすことを求めるのみで足り、汚染原因者ごとに果たすべき責任の内容を具体的に定めることは要しない。 なお、汚染原因者の一部が不存在である等によりその者に対する指示ができないときは、その者の寄与度に相当する分の措置は、土地の所有者等に指示することとする。土地の所有者等が措置を行うために要した費用については、法第8条の規定により、当該汚染原因者に対し請求することができる。 汚染原因者の特定や寄与度の算定については、一定の科学的根拠に基づき的確に行うとともに、汚染原因者への指示において当該科学的根拠を示す必要がある。 複数の汚染原因者に対する指示においては、(ロ)によりそれぞれの寄与度を算定し、指示文書に記載することとする。指示を受けた当該複数の汚染原因者に対し、示された寄与度の割合に応じ措置を分割して実施する方法、当該複数の汚染原因者のうちの一部の者に措置の実施を委ね、それ以外の汚染原因者は応分の費用を負担する方法等により、指示措置等を講ずべき義務を履行するよう指導することとされたい。 (ロ) 複数の汚染原因者の寄与度の算定
寄与度については、次の考え方により算定するものとする。 ⅰ)複数の者により同一の原因物質による汚染が発生している場合の寄与度については、汚染の位置と特定有害物質を取り扱っていた場所との関係、汚染物質の形態と取り扱っていた特定有害物質の形態の比較、当該
特定有害物質の取扱いの態様、周辺地域の状況等からできるだけ正確に寄与度を算定する。 ただし、それが困難な場合は、当該汚染原因者が当該特定有害物質を取り扱っていたと推定される期間のうち土壌汚染が発生し得る可能性を否定できない期間を基に寄与度を推定する。 ⅱ)汚染原因者によって原因物質が異なる場合の寄与度については、他の原因物質がなかったとした場合に必要となる措置内容及び当該措置に要する費用を勘案して算定する。
ただし、覆土と原位置封じ込めといった個別に措置を行うことが可能な場合には個別に各々の措置を行うものとする。 人為的原因による汚染以外の汚染がある場合には、その汚染部分を除いて寄与度を算定することとする。なお、当該人為的原因による汚染以外の汚染については、原則どおり、土地の所有者等が責任を負担することとなる。 (ハ) 措置命令の手続 (イ)により指示を行ってもなお、当該指示を受けた汚染原因者が指示措置等を行わないときは、当該指示措置等を講ずべきことを命ずることができることとしたのは、③で述べたとおりである。 命令に当たっては、指示の場合と異なり、措置が講じられることなく放置されていることが通常であると考えられるため、措置の実施を具体的に促すべく、汚染原因者ごとに果たすべき責任の内容を定めることが適当である。 汚染原因の一部をなすそれぞれの者に対し、汚染の全体についての措置の連帯責任を課すことはしない。 ⑥ 都道府県知事による指示措置等の実施 都道府県知事は、指示をしようとする場合において、過失がなくて当該指示を受けるべき者を確知することができず、かつ、これを放置することが著しく公益に反すると認められるときは、その者の負担において、指示措置を自ら行うことができることとした(法第7条第5項)。 ここにいう「当該指示を受けるべき者を確知することができず」及び「その者の負担」については、法第5条第2項の都道府県知事による調査と同様であり、第3の3(4)を参照されたい。 (7) 汚染の除去等の措置に要した費用の汚染原因者への請求 法第7条第1項本文の指示を受けた土地の所有者等は、指示措置等を講じた場合には、汚染原因者に対し、指示措置に要する費用の額の限度において、当該指示措置等に要した費用を請求することができることとする(法第8条第1項本文)。 ただし、汚染原因者が既に当該指示措置等に要する費用を負担し、又は負担したものとみなされるときは、請求することはできないこととする(法第8条第1項ただし書)。
これは、汚染の除去等の措置に要する費用については、他の環境汚染に関する費用負担と同様に汚染者負担の原則が採用されるべきところ、私法のみによる調整に委ねると、請求権の消滅時効やその特約の存在、汚染原因者の故意又は過失の立証の困難性等により、請求することができる場合が限定されるものになることから、行政法により特別に創設された請求権である。 汚染原因者が特定できず、土地の所有者等に対して指示を行った場合には、土地の所有者等が費用の請求について相談することができるよう、都道府県において、相談の窓口の設置、汚染原因者の特定に資する情報の提供等の支援を行うよう努めることとされたい。 「既に費用を負担し、又は負担したものとみなされる」とは、具体的には、例えば以下のような場合が該当するものである。 ⅰ)汚染原因者が当該汚染について既に汚染の除去等の措置を行っている場合 ⅱ)措置の実施費用として明示した金銭を、汚染原因者が土地の所有者等に支払っている場合 ⅲ)現在の土地の所有者等が、以前の土地の所有者等である汚染原因者から、土壌汚染を理由として通常より著しく安い価格で当該土地を購入している場合 ⅳ)現在の土地の所有者等が、以前の土地の占有者である汚染原因者から、土壌汚染を理由として通常より著しく値引きして借地権を買い取っている場合 ⅴ)土地の所有者等が、瑕疵担保、不法行為、不当利得等民事上の請求権により、実質的に汚染の除去等の措置に要した費用に相当する額の填補を受けている場合 ⅵ)措置の実施費用は汚染原因者ではなく現在の土地の所有者等が負担する旨の明示的な合意が成立している場合 請求できる費用の範囲は、前述のとおり指示措置に要する費用の額の限度に止まり、指示措置を行うために通常必要と認められる費用の額に限られるものである。 「通常必要と認められる費用の額」とは、土地の現況を前提として、必要以上の内容でない措置を実施し、土地を現況に復帰させることに要する費用が該当するものである。例えば、建築物等があることにより、更地の場合に比べて費用の額が高くなる場合であっても、その額を請求できることとなる。 一方、建築物等の価値を高める行為を併せて行った場合のその費用については、請求できない。また、例え
ば、舗装を行う場合に、必要以上の厚さ及び強度の舗装を行った場合は、通常の厚さ及び強度の舗装を行った場合に要すると見込まれる費用との差額については、請求できない。 なお、土壌汚染状況調査や汚染の除去等の措置に要した費用の他者への請求については、瑕疵担保による損害賠償請求、契約上の関係に基づく請求、不法行為による損害賠償請求等、法第8条の規定以外にも民法等の規定によるものも考えられる。 法第8条の規定以外の民法等の規定による請求の例としては、土地区画整理事業、市街地再開発事業等の施行者が、法第3条、第4条、第5条又は第7条に基づく義務を負う土地の所有者等に代わって調査や措置を行った場合に、本来の義務者である土地の所有者等に対して請求できるといったことも考えられる。 |
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