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土地取引に有用な土壌汚染情報の提供に関する検討会
はじめに
国民共通の財産ともいえる限られた国土を、適正かつ有効に利用するためには、土地を有効利用しようとする者が円滑に土地を取得し、利用を開始しやすくすることが必要である。 しかしながら、工場跡地等の用途転換などの局面において土壌汚染の存在が顕在化するケースが増加してきており、有効活用されるべき土地のブラウンフィールド化による全国的な損失が懸念される。
土壌汚染問題に対する社会的関心は高く、このようなリスクを少しでも軽減することにより、ブラウンフィールド化した土地を土地市場に再登場させ、既存ストックの有効活用を図ることは、土地政策上取り組むべき重要な課題であるといえる。
また、コンバージエンスの一環として減損会計の導入など時価会計への一本化が進められている中、 CRE戦略の一環としてのリスクマネジメントは重要性を増しており、企業活動においても土地取引に関するリスクを可能なかぎり軽減することが必要となっている。
国土交通省では、平成14年10月に「宅地・公共用地に関する土壌汚染対策研究会」を設置し、翌年6月、土地取引の安全性と円滑化の確保を目的とした土地売買契約に当たっての留意事項や、宅地建物取引業者の留意事項に関する基本的な事項等を体系的にとりまとめ、公表した。
しかしながら、土壌汚染対策については一般的に多大な費用を要することが多く、今なお土壌汚染問題についての正しい認識が共有されていないことによる過剰な反応・対応が指摘されているところであり、それが土地所有者による汚染事実の公表を消極化させ、市場にそれらの情報が公表・集積されない状況を生んでいる。
さらに、土壌汚染の判明した土地については、依然として土地取引が忌避される事態になっている。
こうした現状を踏まえ、国土交通省においては、土壌汚染地の土地取引の円滑化による土地の有効利用促進等の観点から、具体的な方策につなげることを目的として、土壌汚染地について現状と課題を整理し検討を行ってきた。 また、平成20年度においては、土壌汚染地の有効活用を促進するためには土壌汚染情報の提供を行うことが必要との認識のもと、土壌汚染地の有効利用の促進に資する事業所立地履歴マップ等の作成方法をとりまとめた。
こうした流れの中、平成21年3月31日に閣議決定された「規制改革推進のための三カ年計画」において、平成21年度中に「土地取引に有用な土壌汚染情報を整備し、開示するなど、消費者の負担が増加しないよう合理的で適切な対策が実施されるための対策について、早期に結論を得るべきである。」とされたこと、平成22年4月からの改正土壌汚染対策法の全面施行により、都道府県や土壌汚染対策法上の政令市が保有する土壌汚染の情報量の大幅な増加が見込まれることを踏まえ、本年度においては、土地取引に有用な土壌汚染情報のデータベースの構築に向けた検討を行うこととした。
検討にあたっては、土壌汚染関連の専門家・実務家・自治体関係者などからなる「土地取引に有用な土壌汚染情報の提供に関する検討会」を設置し、4回の会合を開催した。本報告書はその成果であり、データベースを作成・公表することについての意義や課題、データベースの内容等を整理したものである。
土地取引に際しては様々な情報が必要となるが、土壌汚染に関する情報は現在体系的には提供されておらず、土壌汚染に関する情報を提供するデータベースを構築し、充実した情報を提供することにより、多くの土地取引関係者や国民が土壌汚染情報データベースにアクセスし土壌汚染に対する認識が深まるとともに、土地取引に際しての情報収集コストの低下等を通じて土地取引が円滑化・活性化することが期待される。 また、土壌汚染地についての情報が広く共有されることで市場での取引等を考慮して適切に土壌汚染対策を講じようとするインセンティブが生じ土壌汚染対策が促進される効果も期待できる。
本報告書を踏まえた土壌汚染情報データベースの速やかな構築・運用が望まれる。 4.7 データベースに係る今後の課題
4.7.1 データベースの信頼性 データベース情報は、利用者にとって内容が充実しており、より使いやすくしていくことが重要であるが、データベースで提供する土壌汚染情報が網羅的でなく、部分的に欠落があると、欠落に気づかないことで支障が生じたり、また他所で情報を補完する手間が生じたりして、扱いにくく、十分に信頼できない情報となってしまうおそれがある。 データベースで提供する情報については、可能なかぎり網羅的な情報収集に努めるとともに、欠落のある部分は注意書きを加えるなどして、内容の信頼性の向上を図っていくことが重要である。 また、データベースの利用状況等を把握し、利用者のニーズ等を踏まえながら必要な見直しを行い、データベースの信頼性を高めていくことも重要である。 4.7.2 自主調査情報の取扱い
利用者が期待するデータベース情報として、土壌汚染対策法や条例に基づく指定区域やその解除の履歴情報の他に、法や条例に基づく調査や自主調査も含めて土壌汚染調査の実施履歴がわかる情報がある。土地取引においても土壌汚染調査が実施されたかどうかは重要な情報である。 この調査実施履歴情報に関しては、個人の土地資産に係る情報という性格から提供者の了解を得る必要がある。特に自主調査についてはその内容の正確性の担保がないことから、今すぐ提供することは困難な状況にある。 しかしながら、自主調査も公開を前提に受理した情報はホームページで公開している自治体もあることから、改正土壌汚染対策法の施行状況も踏まえつつ公開に向けて検討を進めていく必要がある。
4.7.3 個人情報についての課題
土壌汚染情報は、周辺地域に健康被害、地域イメージの低下、土地資産への影響など、環境的、社会的、経済的な影響が及ぶおそれがあることから、きわめて公益性が高い情報であるが、一方で、個人資産に係る情報でもある。 土壌汚染対策法では、健康リスクの観点から指定区域及びその台帳については公表及び閲覧に供することを規定しているが、その他の情報については公開の取扱いについて規定されていない。自治体によって土壌汚染調査情報等の取り扱いに差異があるが、多くの自治体では情報開示請求により氏名等の個人情報を除いて閲覧又は写しの入手が可能となっている。 データベースで提供していく情報はこれまでに既に公開されている情報を基本としながらも、自主的に情報提供していくことと情報開示請求により開示していくこととは意味合いが異なることから、個人情報に係る土壌汚染情報をどのレベルまで情報提供していくかについて、関係者間で法的にも問題のない範囲で一定のルールについて合意を得てから公開していく必要がある。 4.7.4 情報収集に関する自治体との調整
土壌汚染対策法や条例に係る土壌汚染情報については、個人資産に係る情報であることから、データベースに掲載するかどうかは基本的に土地所有者が判断する事項である。したがって、窓口となっている自治体の協力を得て土壌汚染情報をデータベースに掲載していく仕組みを構築し、土地所有者の了解が得られた情報を掲載していくこととなる。 具体の方法については、引き続き検討を進めることが必要であるが、例えば、自治体が土壌汚染対策法や条例に係る土壌汚染情報の届出を行った土地所有者からのデータベース掲載意向を踏まえて、届出された情報をそのままの内容でデータベース管理者に送付する、といった方法も考えられる。
また、利用者の観点からは最新情報が常に提供されていることが望ましいが、情報の更新頻度を高めることで自治体の負担も増すことになることから、可能な限り自治体の負担の軽減に配慮しながら情報提供の方法を検討し、自治体と調整を図っていく必要がある。 4.7.5 地質データ等の基礎情報の充実
自然由来特定有害物質のバックグラウンド濃度の傾向を把握する上で地質図や土壌図は基礎的なデータとして必要であり、これらのデータも併せて提供していく必要性が高い。 地質図に関しては、1/20万日本シームレス地質図は整備されているが、より詳細な1/5万レベル図面デジタルデータ情報は、東北地方では整備されているものの全国的にはまだ整備されていない状況にある。今後地質図等の基礎的な図面情報の整備の進捗が望まれる。
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国土交通省の低技術
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