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第一審判決で、岡山地裁は被告(両備)の不法行為を一部認め、原告(住民)勝訴となりました。
土壌汚染に関する裁判は多くありますが、大半は土地売買をめぐる企業同士や企業と行政間のものが多く、知る限りでは土壌汚染事件で「全国初」の被害住民勝訴判決です。
これを受けて、被告(両備)は即刻控訴し、引き続き第二審で争われます。
控訴人(両備)からの「控訴理由書」!(6)
「控訴審」にあたり、控訴人(両備)作成の「控訴理由書」が届きました。
控訴人(両備)は、東京の弁護士を増員し、科学者などの専門家の意見書など徹底的な反論を準備しているようです。
「控訴理由書」の続きです。
(第3 宅建業者の説明義務)
(2 宅建業者の説明義務違反の裁判例について)
(2)宅建業者の調査義務
重要事実とは、その事実を認識したなら買主が当時の購入条件での購入を断念すると社会通念上解される事実であると考えた場合、売主や仲介業者がその事実を知らない場合も重要事実不告知の問題が発生するのだろうか。
発生するとすれば、知るべき義務が前提となる。
前述のとおり、告げなかった事実が宅地建物取引業法第35条の重要事項であれば知らなかったということは宅建業者の免責事由になるはずもない。
しかし、それ以外の事実にまで調査義務が及ぶのかがここでの論点である。
なお、契約で調査を特に依頼された場合は別問題(新たに契約上の調査義務が発生するため)であるので、ここではかかる特別な事情がない場合を前提にする。
この点について、裁判所は、冠水しやすい土地であることが問題となった裁判例6の「当該業者が上記のような土地の性状に関する具体的事実を認識していた場合はともかく、そうでない場合にもその説明義務があるというためには、そのような事態の発生可能性について、説明義務があることを基礎づけるような法令上の根拠あるいは業界の慣行等があり、また、そのような事態の発生可能性について、業者の側で情報を入手することが実際上可能であることが必要であると解される。」という判示に代表されるように、法令上の根拠あるいは業界の慣行等がない限り、調査義務を前提とする説明義務を否定している。
法令上の根拠あるいは業界の慣行等がない中で、説明義務が発生するのは、売主が当該問題について具体的事実を認識している場合であることは、裁判例において異論はないと思われ、この点については、隣地所有者との共有配管が地下にあった裁判例11において、「売主が信義則上上記のような告知義務を負うのは、瑕疵の内容からして買主に損害を与えることが明白であるにもかかわらず売主がそれを知悉しながらあえて告げなかったような極めて例外的な場合に限られる。」と判示されていることからも明らかである。
(3)説明義務違反の責任の法的性質
信義則上の説明義務違反を認めた裁判例の中でも、これを契約に付随する義務違反ととらえ債務不履行責任とするものと不法行為責任とするものとがある。
また、そのいずれかを明示しなかったり、いずれも成立するかの記載をするものも少なくない。
これらのいずれの責任であっても結果が同じであれば区別する実益がないので、過去の裁判例でこの問題が精密に論じられていないことにも理由がある。
しかし、本件では契約責任であれば既に引渡から10年を経過しているので、消滅時効で請求権は消滅しているところ、不法行為責任であれば、販売時点から20年の除斥期間が過ぎていないため請求権が消滅していないという違いがある。
そのため、本件では仮に信義則上の説明義務違反があると仮定しても、それが債務不履行責任なのか不法行為責任なのかが結論を左右する大きな論点である。
ただ、宅建業者の信義則上の説明義務違反といっても事案はさまざまで、悪質きわまる事案から、うっかりミスというべき事案まである。
したがって、一律に論じること自体が不毛な議論であり、事案に即して検討すべきものであろう。
しかし、この問題を考えるにあたって、以下の点は一般論として異論がないであろう。
第一に、説明義務違反とされる事案には、詐欺に近い事案もあれば宅建業者の注意義務違反という過失が問題になる事案もある。
前者が不法行為責任を根拠づけることは否定できないが、後者も一律に不法行為責任を根拠づけるといえるのかという問題がある。
買主と直接契約関係のない売主側仲介業者の買主に対する注意義務と買主と直接契約関係のある買主側仲介業者の買主に対する注意義務とではおのずから注意義務にも差があると思われる。
宅建業者の信義則上の説明義務に関し、債務不履行責任か不法行為責任かを正面から議論した裁判例は見あたらないが、弁護士費用については、不法行為責任であれば認められやすいため、この問題が取りあげられたものがある。
裁判例45では信義則上の付随義務違反として宅建業者の責任を認めた事案で責任の性質を債務不履行責任としつつ、弁護士費用につき「被告会社の負う債務不履行責任の内容は、不法行為責任に匹敵する違法性があるということができる」としてこれを認めている。
一方、都市計画上の建築規制という重要事項の説明義務違反の事案である東京地裁平成21年4月13日判決(LLI)では、宅建業者の売買契約上の付随義務としての説明義務を認め、最高裁平成19年7月6日判決を引用して「不法行為責任が成立するためには、契約の相手方のみならず、第三者に対する関係でも違法といえる程度の義務違反が必要」として弁護士費用の請求を否定している。
これらの裁判例からも、説明義務違反が不法行為を構成するには、より強い違法性がある場合に限られるという考え方が導きうる。
第二に、契約の有効性は認めたまま、契約前の宅建業者の言動を理由に説明義務違反を認め、これを不法行為の観点からは違法と評価することには矛盾が生じないのかという問題がある。
特に契約がなかった場合と同様の効果をもたらす損害賠償を認める場合は、事実上不法行為理論が意思表示の理論(詐欺、錯誤の理論)や契約理論を凌駕し、これらの理論を無意味にするという重大な結果をもたらす。
宅建業者の説明義務違反が問題となった裁判例で、契約の有効性を認めたまま、契約がなかった場合と同様の効果をもたらす損害賠償を認めるものは見あたらない。
解除や無効を認めないまま、説明義務違反による責任を認めた事案では、損害賠償の範囲は、説明を受けていれば当時そのものに支払ったであろう費用と現に支払った費用との差が基本とされているように思われる。
財産的被害の立証が難しい場合は、慰謝料が認められているが、少額である。
契約がなかった場合と同様の効果をもたらすことを認めた事例は例外的だが、接道義務違反の事実という重要事項の説明義務違反の事案である東京地裁平成15年6月24日判決(判例マスター)のように錯誤で取引自体を無効とする処理を行っている。
この事案は、昭和61年売買の接道義務違反の物件の問題であり、売主の瑕疵担保責任や仲介業者の説明義務違反による責任は時効で消滅したとしたが、契約自体を錯誤無効とし、売主にも仲介業者にも不法行為責任を認めた。
その結果、錯誤で買主は売主に対して代金返還請求権があるが、一方で居住の利益があるとして、差し引きでの代金返還はほとんど認めず、しかし、買主の住宅ローン金利の損害賠償責任を売主に認めている。
契約の有効性を認めつつ、契約がなかった場合と同様の効果をもたらす損害賠償責任の認定(本件はかかる処理に近い)は、かかる裁判例から見ても、矛盾を内包した処理であることがわかる。
(参照)
<YAHOO!ブログ>、2011年9月17日
控訴人(両備)からの「控訴理由書」!その6
l 2011年(H23)8月16日、第一審「判決」(5月31日)で、原告(住民)が勝訴したあと、被告(両備)が即刻控訴し、控訴人(両備)から「控訴理由書(7月21日付)」が届く。
【第二審】
控訴人 ;(両備ホールディングス株式会社)
被控訴人;(小鳥が丘団地第一次訴訟3世帯住民)
マイホーム土壌汚染被害民事訴訟第一次(3世帯)住民の母体である「小鳥が丘団地救済協議会」が、3世帯住民の体験を発信し多くの方と議論してきました。この記事を発生順序で整理し再度掲載します。
次回に続く
(参考文献;『深刻化する土壌汚染』第5章「岡山市小鳥が丘団地の土壌汚染事件(小鳥が丘団地救済協議会住民 著)」)
2004年7月に岡山市水道局工事で発覚した小鳥が丘団地住宅地の土壌汚染公害問題は、発覚後8年近く経過し団地住民と宅地造成販売した両備バス㈱の考えが平行線のままで裁判に発展しています。2007年8月に住民3世帯(第1次訴訟)が岡山地方裁判所に民事提訴したあと、住民18世帯(第2次訴訟)も続いて提訴し係争中です。第1次訴訟(3世帯)の第一審判決は2011年5月31日に行われ、原告(住民)勝訴となり、知るかぎりでは土壌汚染裁判で被害住民が勝訴した「全国初」の判決となりましたが、被告(両備)が即刻控訴しました。原告(住民)も附帯控訴を提起し、引き続き第二審(広島高等裁判所・岡山支部)で争われます。
戸建住宅団地の敷地足下から真黒い土壌発覚!
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