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2011年(H23)12月20日に行われた、第一次訴訟(3世帯)・第3回「控訴審」に提出された準備書面を掲載します。
今回の提出準備書面内訳
[1]平成23年12月8日付け「控訴人(両備)提出、第3準備書面」。
[2]平成23年12月19日付け、「附帯控訴人(住民)提出、準備書面3」。
控訴人(両備)提出証拠資料
(乙76号証)、応用地質株式会社作成「南古都団地土壌調査(黒い土の成因調査)報告書」。
(乙第77号証)、財団法人岡山県環境保全事業団土屋充作成『「南古都団地」における土壌汚染事象についての一考察』。
(乙第78号証)、岡山大学大学院環境学研究科教授西垣誠作成「南古都団地の土壌に関しての意見書」。
両者の名称
(両備)は、 控訴人 ・ 附帯被控訴人 ・ 被告 。
(住民)は、 被控訴人 ・ 附帯控訴人 ・ 原告 。
[1]平成23年12月8日付け「控訴人(両備)提出、第3準備書面」、の続きです。
(第2 損害について)
2 被控訴人らの主張する損害について
被控訴人らは、本件土地を「健康に影響を及ぼす危険物質を含む激しい土壌汚染のある土地」(原告ら平成22年7月5日付準備書面10頁等)とし、被控訴人らに「多大なる財産的、精神的損害を与えた。」(同準備書面11頁等)と主張するが、財産的損害については、その詳細を主張していないので、本件土地の土壌汚染によって被控訴人らにどのような財産的損害があるのかは不明である。
しかし、植物油系廃油のもたらしている損害と工業系廃油の中に存在するベンゼンその他の特定有害物質のもたらしている損害とは、別のものであり、これらを区別して論じる必要がある。そこで、以下にこれらを分けて反論する。
(1)販売した土地に残存している植物由来廃油のもたらしている損害について
植物由来廃油がもたらしている損害として考えられるものは、メタンガスと硫化水素である。
だだし、硫化水素は地中を掘らなければ検出されず、また地中を掘っても必ずしも検出されず、検出されたとしてもその量もわずかなので、日常生活に支障を及ぼすことはない。
他方、メタンガスは、確かに地表でも検出されており、量水器に滞留しているところがある。
したがって、安心した生活を送るという観点からみれば、適切な対策が必要であるとも考えうるが、その対策としては、専門家によれば、各被控訴人の土地にガス通気孔を設置することで、メタンガスを逃がし、また、地中を好気的な雰囲気にしてメタンガスの発生を止める対策で十分であるとされている(乙第77号証・土屋常務理事意見書6頁)。
これに要する費用は本件団地全体に通気孔を通したとしても(合計45本)、197万円であって、通気孔一本約4万3000円でしかない。
本件団地にある住戸全35戸で分担しても、各住戸ごとに6万円を超えず、各被控訴人の損害もこれを超えるものではない(乙第84号証)。
なお、硫化水素も嫌気的雰囲気のもとで生成されるから、かかる通気孔対策は硫化水素の発生も防止することになる。
なお、地中の異臭は、掘削しない限り、地上で生活する者には感知されない。
しかし、掘削すると場所によっては地表近くでも異臭がするという状態は、ガーデニング等日常生活に全く支障をきたさないとまでは言い切れないかもしれない。
したがって、地中の異臭についての損害は、ガーデニングを行うにあたり異臭のために不便を感じることがありうる不利益分のみを損害として評価すべきである。
通常のガーデニングは50cmも掘らないことを考えると、地中の異臭は通常のガーデニングには全く支障をきたさないと思われる。
悪臭に関する被害についての裁判例をみてみると、魚のあら工場の激烈な悪臭のため、食事、睡眠、労働、営業など日常生活の各分野で様々の被害を受け、生鮮食品の販売業を営んでいて売上げが半分程度まで減少した者に90万円の慰謝料、その他の者は10万円〜30万円程度の慰謝料が認められているにすぎない(乙第85号証・名古屋地裁一宮支部昭和54年9月5日判決判例時報938号9頁)。
同事件では常に悪臭が漂っているため日常生活に支障を来たすことから、慰謝料の原因となったものである。
したがって、土を掘らなければ臭いのしない本件では、慰謝料の発生原因となるとは考えにくい。
仮に本件で損害が発生したとみることができるとしても、かかる不便の損害は、多く見ても被控訴人ごとに30万円を超えないと言うべきであり、この異臭の原因は、植物由来廃油と工業系廃油の双方が原因と考えられるから、植物由来廃油の寄与度を半分と考えると、植物由来廃油を原因として現在生じている異臭の損害は被控訴人ごとに15万円を超えないというべきである。
以上のとおりであるから、植物由来廃油のもたらしている損害は、被控訴人ごとに考えると、各21万円(6万円+15万円=21万円)を超えない。
植物由来廃油であれば、特定有害物質が含まれるものではなく、上記損害を超えて土地評価額に影響を及ぼすことは考えられない。
(2)販売した土地に残存している工業系廃油のもたらしている損害について
工業系廃油がもたらしている損害としてまず考えられるものは、異臭である。
異臭についての工業系廃油の寄与分が半分であると考えると、その損害は、上記のとおり、被控訴人ごとに15万円を超えないと言うべきである。
被控訴人らは、本件土地建物が無価値なものであったと主張するが、本件土地が健康被害をもたらすものとは原審も認定していないし、全く根拠がないことについては、控訴人第1準備書面第4(22頁以下)に述べたとおりである。
被控訴人らは転居せざるを得ない住宅であると言うが、健康被害の恐れもなく、生活環境の被害もほぼない中で(上記2のとおり、メタンガスと地中の異臭は一部生活被害が発生しているが)、転居が必要な理由は何もない。
原審が「市場価格は近隣相場の50パーセントになると認められるから」(原判決29頁)としているのは、恐らくは、工業系廃油に含まれうるベンゼン等の特定有害物質の存在による現時点の評価減を考えているのではないかと思われるが、確かに現時点では特定有害物質が存在する土地は土地取引において対策費を考慮して減価されることが多い。
しかし、問題は、仮に、工業系廃油の存在可能性を、また、その工業系廃油の中のベンゼン等の特定有害物質の存在可能性を控訴人が予見できたとして(以上について、控訴人が争っていることは既に何度も繰り返しているが、ここでは損害論なので仮定の上で議論する。)、さらに、かかる特定有害物質が存在するが故に対策費相当の損害を被控訴人らが被っているとしても、かかる経済的損害は控訴人の不法行為による損害賠償の対象ではないと言うことである。
すなわち、不法行為においても民法第416条が類推適用されており(最高裁昭和48年6月7日判決民集27巻6号681頁)、不法行為における損害賠償の範囲は相当因果関係の範囲に限られる。
したがって、本件で被控訴人らが主張している損害が、相当因果関係のない損害であれば、控訴人にはその損害を賠償すべき義務はない。
この相当因果関係については、本件ではないというべきである。
なぜなら、土壌汚染対策費が考慮されて減価され取引されるという現状は、平成14年の土壌汚染対策法の制定がもたらしたといえ、これは特別の事情による損害であって、控訴人に本件土地分譲時に土壌汚染対策費等が考慮されて減価されることの予見可能性がないからである。
(3)小括
以上のとおり、工業系廃油の特定有害物質の対策費用及びこれに伴う土地の減価は、工業系廃油の予見可能性と関わるが、仮にその予見可能性があったとしても、その損害は、控訴人の本件土地の販売と相当因果関係のある損害ではない。
その他、メタンガス、硫化水素といった地中ガスは、ガス対策費用程度の損害があるにすぎず、土地を掘削することによる異臭による損害は仮にあるとしても、ガーデニングの不便による慰謝料が損害であるにすぎず、いずれも植物由来廃油を原因としている可能性はあるが、その損害額は極めて限定的である。
以上
[1]平成23年12月8日付け「控訴人(両備)提出、第3準備書面」、は以上。
次回に続く。
2004年7月に岡山市水道局工事で発覚した小鳥が丘団地住宅地の土壌汚染公害問題は、発覚後7年以上経過し団地住民と宅地造成販売した両備バス㈱の考えが平行線のままで裁判に発展しています。2007年8月に住民3世帯(第1次訴訟)が岡山地方裁判所に民事提訴したあと、住民18世帯(第2次訴訟)も続いて提訴し係争中です。第1次訴訟(3世帯)の第一審判決は2011年5月31日に行われ、原告(住民)勝訴となり、知るかぎりでは土壌汚染裁判で被害住民が勝訴した「全国初」の判決となりましたが、被告(両備)が即刻控訴しました。原告(住民)も附帯控訴を提起し、引き続き第二審(広島高等裁判所・岡山支部)で争われます。
戸建住宅団地の敷地足下から真黒い土壌発覚!
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2011年12月30日
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