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宅地分譲後、長期間経過した個人住民のマイホームから深刻な土壌汚染が表面化し、宅地を造成・販売した業者(両備)を相手に損害賠償請求をしている事件で、2011年5月31日に岡山地方裁判所で住民勝訴の判決があった。
【第一審】
原告;(岡山市「小鳥が丘団地」第一次訴訟3世帯住民)
被告;(両備ホールディングス株式会社)
土壌汚染に関する裁判は多くありますが、大半は土地売買をめぐる企業同士や企業と行政間のものが多く、知るかぎりでは、土壌汚染裁判で「全国初」の被害住民勝訴判決です。
判決後しばらく経ち、判決内容が公開されてきているようです。
この判決の解説記事を、転載します。
(ウエストロ−・ジャパン) 金子寛司
RETIO. 2012. 1 NO.84
最近の判例から (1)−土壌汚染の説明義務−
分譲地の安全性・快適性に関する情報の説明義務を怠ったとして、売主の不法行為責任が認められた事例
(岡山地判 平23・5・31 ウエストロ−・ジャパン) 金子寛司
売主業者との間で土地売買契約及び建物請負契約を締結した買主が、当該土地に土壌汚染があったとして損害賠償を求めた事案において、売主が当該土地を販売したことが不法行為にあたることはないが、売主は、安全性、快適性に関する情報の説明義務を怠ったといえるから、同義務違反の不法行為該当性が認められるとして、売買及び工事代金の5割相当の損害が認められた事例。
(岡山地裁 平成23年5月31日判決 ウエストロ−・ジャパン)
1 事案の概要
Xは、平成2年8月、旅客・貨物の運送業及び不動産の所有、売買、賃貸仲介等を業務とするYから、代金910万円余で土地を買い受け、同日、Yとの間で工事代金を1,589万円余とする建物建築の請負契約を締結して、平成3年5月、建物への入居を開始した。
Yは、昭和50年ころから、廃白土(食用油会社の油の処理工程で使用する活性白土に油分が吸着したもの)を原料として、石けんやペンキの元となる油を生成していた株式会社A工業の工場北側の土地を造成して団地を形成し、同年9月からその土地建物の販売を開始した。
当時、A工業の工場の近隣住民は、A工業が産業廃棄物処理業を開始したことによる悪臭、工場内の廃白土、汚泥、水質汚濁等の環境悪化を問題視しており、B団地の住民もYに苦情を寄せていた。
Yは、A工業に悪臭等についての改善を要求し、県や市の公害課も行政指導を繰り返したが対策は講じられなかった。
Yは、昭和57年、調停の申立てを行い、「A工業は操業を停止し、土地上の廃白土、油脂付着物等を除去して明け渡す、Yは、A工業に対して、建物除却費用及び移転費用等を支払い、工場跡地を購入する」等の内容でA工業と和解した。
Yは、昭和59年2月ころ、消臭工事等の悪臭対策を講じ、昭和62年から63年ころ、3期にわたって工場跡地を宅地造成し、順次分譲した(以下A工業の工場跡地で分譲された土地全体を「本件分譲地」という。)。
Xは、第3期の分譲の際に土地を購入したが、平成16年7月、市による本件分譲地内の上下水道の給水管の取替工事が実施された際、油分を大量に含んだ悪臭を放つ黒い汚泥が発見された。
平成16年9月、Yの依頼により本件分譲地内3か所のボーリング調査及び土壌分析が行われたところ、土壌汚染対策法に基づく土壌溶出量基準を超えたトリクロロエチレン、ベンゼン、シス−1、2−ジクロロエチレン、油分等が検出され、同月28日、本件分譲地に居住する住民は、本件分譲地の実態や汚染の原因について説明を受けた。
Xは、平成19年8月31日、Yは宅地造成すべきでなかったのに宅地造成して販売した、売主として本件分譲地の履歴等を説明すべきであったのにしなかったなどとして、Yに対して、不法行為に基づく損害として、土地建物取得費、慰謝料及び弁護士費用の合計5,889万円余の支払いを求めて提訴した。
2 判決の要旨
裁判所は、以下のように判示し、Xの請求を一部認容した。
(1) Yは、本件分譲地中に廃白土、汚泥、ひいてはベンゼン、トリクロロエチレン及び油分が存在する可能性があるとの疑いを抱き得るとまではいえようが、これを超えて、実際に、同地中にいかなる物質が含まれているか、また、その物質の有害性について、YがA工業の操業実績等から直ちにこれを認識することができたということはできず、Yが本件分譲地を販売したことが、Xに対する不法行為にあたることはない。
(2) YがXと契約を締結した際、Yは、自身が本件分譲地を購入する以前、A工業の工場の操業が原因で生じる悪臭や水質汚濁等が問題視されていたこと、同団地の住民から苦情が寄せられていたこと、県や市の公害課が同社に対し、再三にわたり行政指導を繰り返していたが、それに従う対策は講じられなかったこと、上記問題を解決するため、Yが本件分譲地を購入するに至ったこと、本件分譲地がYに引き渡された際、同地には悪臭が残存しており、同地の表面には灰色がかった土が存在していたこと等について認識していたということができる。
また、契約当時においても、廃白土、ベンゼン、トリクロロエチレンに関する規制自体は存在し、油臭による不快感・違和感が生活に支障を生じさせうることも一般的に認識されていたと考えられる。
そうだとすれば、Yとしては、安全性、快適性に関するより詳細な情報を収集すべく調査をした上で、その調査内容を説明するか、このような調査をしない場合は、少なくとも、認識していた上記の各事情のほか、同地中に存在する可能性のある物質は、居住者の安全を害し得るものであり、生活に不快感・違和感を生じさせるものであることについて説明すべき義務があったというべきである。
Yには上記義務違反があり、同義務違反は不法行為を構成するものである。
(3) 本件分譲地中の状況を考慮したところ、本件土地建物は、損害に係る立証責任の所在に鑑み、損害額を控え目に算定する見地からしても、市場価格は近傍相場の50パーセントになると認められるから、土地売買及び建物工事代金の50パーセントに相当する1,250万円は損害と認めることができる。
一方で、健康被害等を理由とする慰謝料については認めることができない。また、弁護士費用としては120万円が妥当である。
したがって、Xは1,370万円の請求権を有することになる。
(本件では他に2名の原告がYに対して同様の主張で、合計1億6,900万円余の損害賠償を求め、同旨により3,631万円余の支払いが認められている。)
3 まとめ
本件は、17年も前の売買契約について、売主業者が土壌汚染についての説明義務を怠ったことによる不法行為責任が認められた事案である。
同様の事例として、接道についての説明義務違反があったとして不法行為責任が認められた事例(本誌83号126頁)などがあるが、調査説明義務等をめぐり、不動産業者としてはいずれも留意すべき事案である。
なお、本件においてYは、Xらは損害を知ってから3年を超えて訴えを提起したのだから不法行為に基づく請求権は時効で消滅したと主張したが認められていない。
(調査研究部次長)
以上
2004年7月に岡山市水道局工事で発覚した小鳥が丘団地住宅地の土壌汚染公害問題は、発覚後8年近く経過し団地住民と宅地造成販売した両備バス㈱の考えが平行線のままで裁判に発展しています。2007年8月に住民3世帯(第1次訴訟)が岡山地方裁判所に民事提訴したあと、住民18世帯(第2次訴訟)も続いて提訴し係争中です。第1次訴訟(3世帯)の第一審判決は2011年5月31日に行われ、原告(住民)勝訴となり、知るかぎりでは土壌汚染裁判で被害住民が勝訴した「全国初」の判決となりましたが、被告(両備)が即刻控訴しました。原告(住民)も附帯控訴を提起し、引き続き第二審(広島高等裁判所・岡山支部)で争われます。
戸建住宅団地の敷地足下から真黒い土壌発覚!
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2012年03月24日
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