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「小鳥が丘住宅団地」土壌汚染事件の岡山地裁判決から1年近くたつが、改めてこの判決の意味を考えてみることにする。
この事件は、宅地分譲後、長期間経過した個人住民のマイホームから深刻な土壌汚染が表面化し、宅地を造成・販売した業者(両備)を相手に損害賠償請求をしている事件で、2011年5月31日に岡山地方裁判所で住民勝訴の判決があった。
土壌汚染に関する裁判は多くありますが、大半は土地売買をめぐる企業同士や企業と行政間のものが多く、知るかぎりでは、土壌汚染裁判で「全国初」の被害住民勝訴判決です。
【第一審】
原告;(岡山市「小鳥が丘団地」第一次訴訟3世帯住民)
被告;(両備ホールディングス株式会社)
本判決は、被告(両備)に対し、宅地の「重要事項説明義務違反」による不法行為を認定したが、原告(住民)は「被告(両備)は団地を造成したときから土壌汚染を認識していた。」と主張したが、そこまでは認められなかった。
原告(住民)主張の一部しか認めていない形となっているが、原告勝訴判決を読み解く上で重要な視点は、やはり宅地分譲業者である被告(両備)が、宅地造成工事を実施していた点ではないかと思っている。
本件分譲地が土壌油汚染であることについては、調査結果から被告(両備)も争いようがなく、焦点が「予見可能性」の問題になったからである。
被告(両備)は、「分譲時、土壌汚染は予見できなかったので説明義務はない。」と主張してきた。
しかし、被告(両備)は、単に、土地を仕入れて分譲したのではなく、宅地開発するため、宅地造成工事を行っているのである。
しかも宅地造成工事中に、地中から大量の廃棄された廃油ドラム缶を発見しているから尚更である。
普通に考えても、宅地造成工事まで実施しているディベロッパーの企業(両備)が、土壌汚染を予見できない事はあり得ないのではないだろうか。
また、宅地開発の給水協議で、「団地給水施設に、廃油工場跡地に出来た団地のため化学製品を使用しない条件とする。」ことを決定し、変質する危険性を考え、当時でさえ使用中止になっていた「鉛」水道管をあえて使用していたことも土壌汚染を認識していたことを裏付けるものと言える。
裁判所の判断は、
被告(両備)は、悪臭が残存し通常の土地と異なる部分が認められる同地(廃油工場跡地)を購入したこと、
被告(両備)自ら、上記各事情を有する土地の宅地造成を行ったこと、
宅地造成後も、未だ部分的に乾いた黒色がかった土が出てきたり臭いもしていたこと、
被告(両備)が、宅地の販売や仲介を業とする株式会社であること、
を指摘し、
「被告(両備)は、土壌中の有害物質の存在に疑問を抱き得るとまでは言えようが、これを超えてどのような有害物質が存在していたかを知っていたとまでは証拠上いえない」としたうえで、
被告(両備)は、他の者よりも本件分譲地の安全性、快適性に疑問を抱きうる立場にあり、安全性、快適性に関するより詳細な情報を収集すべく調査をした上で、その調査内容を説明するか、このような調査をしない場合には、少なくとも、認識していた各事情の外、同地中に廃白土、ベンゼン、トリクロロエチレン及び油分が存在する可能性があり、これらは、居住者の安全を害し得るものであり、また、生活に不快感・違和感を生じさせ得るものであることについて説明すべき義務があったというべきである。
として、被告(両備)の説明義務違反を認めた。
この説明義務違反だけであっても認定した本判決は示唆に富んでいると思う。
仮定ではあるが、被告(両備)が「説明義務違反」にならないために上記説明をしたとすれば、一般消費者はどのような反応をするだろうか?
判決は、より詳細な情報を収集するための調査まで義務付けていないが、被告(両備)が、安全性、快適性に疑問を抱きうる項目をそのまま一般消費者に説明すれば購入する者はいないと思われるので、宅地として分譲しようと思えば、より詳細な土壌調査を実施し、購入者に納得のいく結果が出なければならない。
もし、安全性・快適性に問題が出れば、汚染を完全に除去するなど高額な対策工事をする必要がある。
本件のような地方における宅地の場合は、高額な土壌対策工事となれば経済合理性がないので、利益を追求する企業としては意図しないであろう。
とすれば、そもそも宅地に転用する意味がなく、宅地造成すべき土地ではないとして他の用途に利用する判断をするのではないだろうか。
裁判所は、原告が主張した、①(宅地造成すべき土地でなかったのに宅地造成して販売したこと)、および②(汚泥等の汚染物質を取り除いて宅地造成すべきであったのに不十分な対策しかしなかったこと)、については不法行為を認定しなかった。
しかし、③(売主又は仲介業者として本件分譲地の履歴等を説明すべきであったのにしなかったこと)を不法行為と認定したため、原告主張の②ひいては①も実質的には主張の目的を果たしているのではないだろうか。
本判決は、宅地としての安全性、快適性に関する、開発業者の事前の調査義務を実質的に認めているのであり、開発業者の開発・造成の責任を認定していると言える。
今までどちらかといえばおざなりになっていた土壌汚染による住宅の安全性・快適性について、宅地分譲業者はこれまで以上に目を向けていかなければならないことを示唆した判決であったと思っている。
以上
2004年7月に岡山市水道局工事で発覚した小鳥が丘団地住宅地の土壌汚染公害問題は、発覚後8年近く経過し団地住民と宅地造成販売した両備バス㈱の考えが平行線のままで裁判に発展しています。2007年8月に住民3世帯(第1次訴訟)が岡山地方裁判所に民事提訴したあと、住民18世帯(第2次訴訟)も続いて提訴し係争中です。第1次訴訟(3世帯)の第一審判決は2011年5月31日に行われ、原告(住民)勝訴となり、知るかぎりでは土壌汚染裁判で被害住民が勝訴した「全国初」の判決となりましたが、被告(両備)が即刻控訴しました。原告(住民)も附帯控訴を提起し、引き続き第二審(広島高等裁判所・岡山支部)で争われます。
戸建住宅団地の敷地足下から真黒い土壌発覚!
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2012年03月31日
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