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BIENVENU 海山ヒロの我が家へようこそ
旅写真日記「バルト三国・243名様歌唱の旅」連載中。

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解明できる。真実が見える。
それは確かに素晴らしいことかもしれないけれど、それがいつも幸せにつながるとは限らない。
この映画のエンディングを観るたびに、そのことを思い出す。

『オリエント急行殺人事件』の映画を観るのはこれで3度目だが、やはりポアロが可哀そうだなと思った。1974年公開の、ディヴィット・スーシェが演じたポアロよりはましかもしれないが。

英国が誇るミステリーの女王が書いたこの作品はあまりにも有名であり、かつこれこそネタバレしては面白さが半減どころかほとんどなくなってしまうので、あらすじも書かないでおこう。
原作を読んだことがなくとも、何度も映像化され、かつ映像化されてから時がたっているので知っている人ばかりだろうし。

***

20世紀FOXが公式HPで書いているように、本映画の出演者は全員、「名優」である。

今はなき超豪華列車で殺されるラチェットを演じるのは、ジョニー・デップ。
列車に乗り合わせた乗客には伯爵夫人役のジュディ・デンチもいれば、あやしい未亡人役のミッシェル・ファイファーもいる。
宣教師役のペネロペ・クルスは、相変わらずの絶望的な瞳でスクリーンの向こう側から訴えかけてくるし、新生『スターウォーズ』で主人公のレイを演じているデイジー・リドリーもいる。

そして何より監督と主演の両方をこなすのが、ケネス・ブラナー。
あぁほんとうに。全員有名で、名演技のできる人ばかりだ。

ちなみに出演者の中でわたしが一番目をひかれたのは、彼らの中の誰でもない。
もちろん名優たちはあいかわらず素晴らしかったが、わたしが劇中常に目で追っていたのは、トム・ベイトマン。オリエント急行の重役・ブークを演じた若手俳優である。
本作のHPでの紹介によれば、いくつかのテレビ作品で活躍し、ケネス・ブラナーに見いだされて彼の劇団に入った期待の星だそうな。
彼には確かな演技力と同時に華があるから、きっとまたスクリーンでまみえることができるだろう。

***

映画の本筋に戻ろう。

この『オリエント急行殺人事件』は、映像美にあふれた作品である。
原作自体が、非常に映像的ではでな作品であり、今回はさらにそれを磨き上げていた。

まず、オリエント急行が疾走するユーゴスラヴィアの雪をいただいた峻嶮な山々は、美しいとしか言いようがない。ロケ地がどこかは分からないし、もしかしたらセット撮影が多かったのかもしれないが、挿入された山々の映像は本物だろう。

そしてNHKで長らく放映されていたディヴィット・スーシェのポアロは、いつも素晴らしいスーツに身を包んでいたのだが、さすが英国人のケネスさん。
彼に勝るとも劣らないスンバらしい装いで、さっそうとしたポアロを演じている。
ついでに言えば、髭は、今まで観たポアロのなかでいちばんご立派である。

オリエント急行の内装も見事だ。
特に特別室と思われるスィートルームは、他の部屋と同じ幅とは思えないほどの重厚さで、豪華絢爛。わたしに十分なカネがあれば、ぜひこんな部屋で旅をしたいものだ。

そしてそれらの美しい光景を効果的に、きらびやかに魅せるカメラワーク。
完璧である。

そして、だからこそ。この作品の中のポアロが、ひどく可哀そうに思えるのだ。
医者が己の技術を高めて人を救おうと誓うように。
探偵は自分の思考力と観察眼を極限まで高めて、謎を解き明かし、その結果、誰かを救うことに生きがいを感じている生き物のはずである。
つまり、真実の究明が生きがいのはず。

なのに。
これを観るたびに、アガサ・クリスティは意地が悪いなと思わずにはいられない。

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