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どうしても聞いてみたい自然音がある。 それは、お気に入りのブナ林の森の音だ。 それも、雨が新緑の葉をたたく、パチパチという心地よいリズカルな音がいい。 自然音の録音は、簡単そうで非常に難しい。 自然の音だけを録るなら、人がいないこと。 これが一番の難題だ。 人がいると、その音が録音に入ってしまう。 足音や、話声だったり、森の場合、クマ脅しの鈴の音は、はるか遠くからでも聞こえてくる。 人がいかない場所(いけない場所)には、危険だから立ち入れない。 森の中は、迷子になる危険が高いし、クマもいる。 だから、人が少ない時間に、人がこないことを祈りながら録音する。 次に、自然の状態がいい録音を左右する。 風が強いと、その風がガサガサと雑音となってしまう。 雨は、降り過ぎれば機材を濡らしてしまう。 主役となる自然の音も、日により違ってくる。 鳥のさえずりも、同じ場所でも、日や時間により大きな違いがある。 絶妙な自然状態には、めったに出会えない。 何度も、何度もその場所に通わないと、いい音には出会えない。 6月のとある土曜、朝から小雨が降っている。 今日こそはチャンスだ! そう思ったら、早速、バイノーラルマイクとICレコーダーを愛車のセレナに積み込み、いざ臥竜山へ。 1時間のドライブの後、午前8時過ぎ、登山道入り口に到着。 今日で5度目のトライだ。 山道を、車で上り始めた付近の、道路わきで1頭の熊が出迎えてくれた。 自然の熊を見るのは初めてだ。 田舎に住んでいても、めったに熊は見ない。 痩せこけていたので、一瞬、子牛かと思った。 車を止めて、よく見ると、顔がまるいので、間違いなくクマだ。 食べるものがなく、ひもじい思いをしてるのかなと思ったら、クマがかわいらしく見えた。 しばらく見ていたら、ゆっくりと山の中へ入って行った。 後で、同僚にこの話をしたら、その熊は、ツキノワグマと言って、おとなしそうに見えても危険らしい。 特に子連れの場合は、絶対に近寄らない方がいいそうだ。 約10分で、山頂に到着した。 早朝から雨が降っているためか、登山客がほとんどいない。 本当に今日はチャンスだと、あらためて思った。 いつもの場所へ、マイクをセット。 録音開始だ。 どうか、1時間、人が来ませんように! 神様に願いが届いたのか、1時間半の録音終了まで誰一人として、登山客は現れませんでした。 とてもいい音が録れました。 本当に、自然に感謝です。 この音は、CDにして、夜寝る前によく聞いています。 この音を聞くと、大好きなブナ林へ行った記憶がよみがえります。 『そっと目を閉じて、耳を澄ませてみて下さい 頭上の新緑のブナの葉を、パチパチとたたく雨 絶え間なく、さえずる鳥たちの声 あなたを一瞬にしてブナの森へと誘います』 ステレオヘッドホンまたは、ステレオイヤフォンでお聞きください。 採音地:広島県北広島町 臥竜山ブナ林にて
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