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第四章 カウンセラーの人間性
2.自己一致と純粋性
<自己一致>と<純粋性>とは、ともにカウンセリングの創始者であるロジャースの用語です。
自己一致と純粋性は、同義語として使われることが多いのですが、自己一致は内面での精神的な調和を主に意味し、純粋性は対人関係における自己意識と行動とが一致している状態を指します。
そこで、自己一致しているカウンセラーでは、<今ここ>で経験している内面の意識、身体感覚(感情・思考・行動)が否定されたり、誇張されたりすることなしに、正確に理解されて表現されています。
そして、その一致性がクライエントに対する行動にも純粋に現れています。
このカウンセラーとクライエントの関係を、もう少し具体的にすると下記のように分析できます。―ジェンドリン:1966―
① 何も間に挟まない関係、つまりカウンセラーは、自分の気になることを脇に置く。
② 二人の関係の中に人間がいる。クライエントを賢いとか愚かとか評価しないで、人としての存在を大切にする。
③ 奥深くに流れる連続性がある。つまり、奥深くに潜んでいる自己を、時間をかけてゆっくりと探す。
④ 安心できる関係。その場にいるその人の安全性を優先する。
⑤ 別個の人間。触れ合うと一体化して溶け合う関係でなくて、それぞれの別の人格を持つ個人との関係を作る。
カウンセラーはクライエントと別の人格である、ということを忘れないのです。
しかし、カウンセラーとクライエントとの間には、意識・無意識にかかわらず、何かが挟まっている感覚がないというのです。
安全で保護された空間が存在し、カウンセリングのその場に、どっしりと重心を感じながら存在する関係を感じられることが、自己一致の目安となるのです。
自分の重心を感じるために、カウンセリング中に両足をきちんと床に着けて、脚がその重みの感覚を感じることを時々実行してみてください。
これをグランディングといいます。
あまりにも、気が動転していると、自分の体重が感じられません。
次回は
2.自己一致と純粋性 ⅱ
※※※ 御断りとお願い。この「書庫」 は次回以降、下記のブログに移行しますので宜しくお願いします❢
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カウンセリング・LESSON帖
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カウンセリングLESSON帖へのご招待〜
一般社団法人 雇用能力開発機構・設立目的の一つの柱として、
認定カウンセラー及び産業カウンセラー等の有資格者および
それぞれの資格取得に励んでいらっしゃる方々の実践力UPと
技術力向上のお手伝いを目的としています。
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この「書庫」を通して、皆さんの謂わば「LESSON帖」と
しての一助になればとの思いで立ち上げます。
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この「書庫」に一貫して流れる論理は、カウンセラーとしての
教育には人間性と関係性についての知識と訓練が不可欠だという
ことです。
カウンセリング技術=アーツも人間関係の中でその本領を発揮
します。
教育には人間性と関係性についての知識と訓練が不可欠だという
ことです。
カウンセリング技術=アーツも人間関係の中でその本領を発揮
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「書庫」の各省に練習問題と解説を設けます。
各練習問題について考え、回答するうちに自然に身に付くものも
多々あるものと思います。
各練習問題について考え、回答するうちに自然に身に付くものも
多々あるものと思います。
この「書庫」は一度、研修・ワークショップ用として編纂したものを『ブログ』に転載しますので、一対一方式でなく複数方式の表現及び内容になっていますことをご理解ください。
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第4章 カウンセラーの人間性
1.自己理解 ⅲ
LESSON4-1
Episode1と2に共通する現象は何かを考えてください。
解 説
これら2つのエピソードは、いわゆる<逆転移>の現象です。
逆転移とは、カウンセラーの内的世界を、クライエントに投影してしまうことを指します。
多くは自覚することなしに、無意識に発生する現象です。
カウンセラーは、本来の客観的な態度を失い、不合理な感情に影響されて、クライエントの問題をまるで自分の問題のように感じてしまい、性急に、無理に解決しようとしたり、あるいは極端に無力に感じたりします。
従って、カウンセリング場面では、クライエントの気持ちや考えに焦点があるというよりは、カウンセラー自身の気持ちの動きに焦点が移ります。
このように不合理な感情が、カウンセラーの認知を歪曲させ、行動にも影響を与えます。
カウンセラーは、経験の深いカウンセラーからスーパービジョンを受けて、自己と対峙し、自己を知る努力を普段から続ける必要があります。
LESSON4-2
次の設問に答えてください。
① あなたの家族の人間関係は、どのような影響を与えていますか。
② あなたは、過去に何か未解決の問題を抱えていますか。
③ あなたは、どのような劣等感を持っていますか。
④ あなたの長所・短所は何でしょう。
⑤ あなたの得意・不得意なことは何でしょう。
⑥ あなたは、どのようなことに感情的な反発をしますか、あるいは極端に冷淡になりますか。
解 説
自分の生まれた家族での人間関係、つまり原家族が与える影響を知る必要があります。
父母や兄弟との関係はどうであったか。
自分の家族と拡大家族との関係や、学校での人間関係や職場での人間関係の特色とどうであったか。
過去の未解決問題が、カウンセリングに影響を与えることがあります。
過去の大きな失敗や成功体験などから、人の評価や承認をどの程度求めるのか。
どのくらい失敗を恐れるのか。
あるいは、成功を望み、完全であることを望むのか。
あるいは、現実的か理想的か。
自分の傾向を知ることによって、それらの「しばり」から開放されて、より自由に感じ、考え、行動できるようになります。
次回は
2.自己一致と純粋性
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第4章 カウンセラーの人間性
1.自己理解 ⅱ
この3つの分野の関係を次のエピソードで考えてみましょう。
Episode 1 カウンセラー自身が抱える未解決の問題による影響
カウンセラーのAさんは、最近、夫婦関係で中年の危機を経験しています。
結婚して20年になりますが、夫との関係は破綻寸前です。
原因は夫の家族との関係です。
夫の両親との関係が悪いことです。
最近は夫の言動にも嫌悪を感じ始めました。
Aさんは、今まで、カップルや夫婦関係の相談に対しては、冷静に判断できたのですが、自分の夫との関係が悪くなり始めてから、クライエントの夫婦関係の相談を聞くと、冷静ではいられません。
特に、夫からひどい仕打ちをされた妻がクライエントの場合、その夫は、自分の夫とはまったく違う人格と頭では分かっているのですが、強い怒りの感情を感じるようになりました。
Episode 2 自己の弱点による影響
カウンセラーのBさんは、適切に自己主張することが苦手です。
父親は権威主義な人で、Bさんの気持ちを無視して、一方的に意思を押し付けました。
大人になってから、父は営業を薦めましたが、父親に対する反抗心もあり、それを押し切り人間関係を扱う職業を選びました。
それ以来、父親とBさんの関係は冷え切ってしまいました。
Bさんは、何とかして父親との関係を修復したいと望んでいます。
カウンセラーBさんのクライエントは、中学2年生のC君です。
C君は、典型的な燃え尽きタイプの不登校生でした。
父親や教師から叱られるのを極度に恐れ、睡眠時間を割いてでも期限までに宿題をしました。
ところが、風邪を拗(こじ)らせてしまい、学校を1週間も休んでしまいました。
それを機会に不登校になってしまったのでした。
カウンセラーのBさんは、C君のことがとても他人事のように思えません。
いけないと分かっていても、C君の親を責めてしまうのです。
次回は
1.自己理解 ⅲ
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第4章 カウンセラーの人間性
カウンセリングの学習は、技術面の練習だけではありません。
技術の熟達と同様に、カウンセラーの人間性を高めることが望まれます。
カウンセラーの人間性は、カウンセラーとクライエントとの人間関係として現れます。
1.自己理解
カウンセラーの自己知識、つまり自分のことをどのくらい知っているかは、カウンセリング効果に大きな影響を与えます。
カウンセリング中にカウンセラーもクライエントともに、まるで熱せられた椅子(ホットシート)の上に座っているかのような居心地の悪さを体験し、様々な感情や考えが浮かび、それは何だろうかと自問することがあります。
自問には次のようなことがあります。
① 私は、どうしてこのように感じるのだろうか(情動分野)
② 私は、どうしてこのように考えるのだろうか(認知分野)
① 私は、どうしてこのように行動するのだろうか(行動分野)
カウンセラーは、3つの分野、つまり情動、認知、行動において自己を知る努力をする必要があります。
この3つの分野はお互いに深く関係しています。
認 知 情 動 行 動
詳しくは次回に。
次回は
1.自己理解 ⅱ
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第3章 カウンセラーのより高度の役割
10.カウンセラーは、問題解決者、問題解決援助者
(3)感情に焦点
悩んでいるクライエントは、いったいどのような感情を味わっているのか分からない場合が多いです。
怒りと恥が入り混じっていることもあるし、憎しみと愛情が共に感じられるアンビバラントな状態や、また絶望と怒りの混合のように、様々な感情が入り混じっています。
認めたくない感情や、未知の感情、はっきりと言葉で表現できない感情などが複雑に入り混じっています。
カウンセラーとクライエントは協力して、あらゆる感情に名前を与え認めて、受け入れる作業をします。
また、どうしてそのように感じるのかを探求します。
この作業は自己理解を深め、自己の尊厳に直接関係があります。 (4)実存に焦点
行動に焦点を当てるのでなくて、その人の存在そのものに焦点を当てます。
クライエントが「一人でいる世界」、「二人以上の関係の世界」、「自然や肉体の世界」、「精神的な世界」、それぞれの世界での存在を追求します。
どの1つの世界の存在から疎外されても人間の存在は満足できないものになります。
心と身体、自然と意味の世界、其々がバラバラになることなく協力して存在の課題をこなしていきます。
(5)システムに焦点
人間は複雑に相互に関連するシステムの中に存在します。
システム内の葛藤は、「あちら立てれば、こちら立たず」の状況で経験するように、いくつかの要素が微妙なバランスを保って、あるいはバランスを崩した状態で関連しています。
家族システムには、典型的には核家族内の両親とその子供がいます。
その核家族内での人間関係には、固定化された交流が病理の原因となります。
例としては、
・ 父親と直接にコミュニケーションが出来ないので、母親が仲介をする。
・ 夫婦が疎遠となり、妻は夫の補償として長男を溺愛し過保護となる。
・ 浮気、あるいは仕事に没頭して、家族を避ける。
・ 子どもが異常な行動をして両親の注意を引き付ける。
・ 夫婦は、自分たちだけの時間や関係を持つことができない。そこで、子どもに過剰に干渉する。
・ 夫婦の関係を子どもが取り持ち、夫婦間のコミュニケーションの仲介となる。
カウンセラーはシステム内で固定化された交流パターンに介入して、システムに柔軟性をもたらす援助をします。
次回からは
第四章 『カウンセラーの人間性』 に入ります。
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