構造色事始

美しい構造色をお見せします

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先日、動物園に行って、マンドリルの写真を撮ってきました。マンドリルは旧世界猿といわれるオナガザルの仲間で、中央アフリカの熱帯雨林に生息しています。通常、250頭ほどの群れを作って暮らしています。

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マンドリルの顔は、赤い鼻と鼻筋に対比するように、頬の部分に鮮やかな水色の帯が見えます。

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お尻の部分にも水色の部分が見えます。

上の写真はオスの個体で、メスはオスの半分ほどの大きさしかありません。

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色は薄いですが、メスにも水色の頬の模様が出ています。

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これは、昨年生まれた子供ですが、まだ、青色の模様は痕跡程度にしか見えていません。マンドリルの思春期は4−5歳と言われていますが、そのくらいになると水色がはっきりしてくるそうです。この水色こそが構造色なのです。

【解説】
この水色の皮膚の下には、30−75ミクロンの厚さの薄くて透明な表皮があり、その下にはコラーゲンというたんぱく質が繊維状になったものが詰まった層があります。この層の厚さは、顔の皮膚では1.5mmにも達します。一方、お尻の皮膚の場合には、コラーゲンの繊維層は0.8mmほどで、その下にはメラニン層があります。顔の方にはメラニン層はないということです。

コラーゲンは細長いたんぱく質で、それが3本集まったものがトロポコラーゲンと呼ばれる構成要素になっています。このトロポコラーゲンが集まって細い繊維状になったものは、コラーゲン細繊維と呼ばれますが、このコラーゲン細繊維がコラーゲン層の中で、表面に平行に並んでいます。このコラーゲン層が構造色のもとになっています。

下の模式図にも示していますが、コラーゲン細繊維の直径や並び方にはあまり規則性がないので、以前は、光がこれらコラーゲン細繊維で散乱されることにより水色になっていると考えられていました。この様子は、ちょうど細かい粒子を含んだ液が青く見える原理と同じで、チンダルブルーだと言われていました。このときの光散乱は、緑より青、青より紫と、光の波長が短くなるにつれて散乱する効率が増えるのが特徴です。

しかしその後、マンドリルの皮膚の水色は、オスの顔の皮膚では青紫色(460nm)、メスの皮膚では青緑色(490nm)、お尻の皮膚では紫外線領域(380nm)での反射の効率が大きいことが分かってきました。これらは、明らかに通常の光散乱と異なります。この問題を解決したのは、アメリカのプラム教授のグループです。プラム教授らは、一見、不規則に見えるコラーゲン細繊維の配列の中に、規則性があることをフーリエ変換という方法を用いて見出しました。

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上の図はプラム教授らが測定した電子顕微鏡写真の一部を模式化したもので、スケールバーは200nmです。丸い部分がコラーゲン細繊維の断面を示しています。繊維の配列は不規則になっているようですが、よく見ると繊維の直径はかなり揃っており、また、繊維と繊維の間の距離もだいたい一定になっています。このような僅かな規則性があっても、光は干渉して青色を作りだすことができると考えたのです。実際、そのような仮説で反射スペクトルを計算すると実測とほぼ合っていることも確認されました。しかし、繊維間距離に規則性があっても、方向に関しては規則性がないので、光がどちらの方向から当たっても、一様に水色に見えることになります。このような性質をノンイリデセンス(non-iridescence)と呼んでいます。つまり、マンドリルの水色はノンイリデセントな構造色だったのです。

マンドリルが、どうしてこのような色の模様を持っているのか、その理由については、これまでいろいろと議論されてきました。まず、このような構造色を持つ哺乳類の種類は非常に限られています。サルではマンドリルやベルベットモンキーなどの旧世界猿に限られています。また、フクロネズミなどの有袋類にも見られます。哺乳類の視覚は一般に2原色だと言われていますが、これらの種類はいずれも3原色だということです。このことから、ほかの動物に対してではなく、これらの動物自身に対する色だと考えられます。マンドリルについていえば、強いオスは色が鮮やかであるという報告があり、青色はその個体の強さや健康状態を表す色として用いられていると考えられます。従って、オス同士の争いや異性間の選択などに構造色が用いられているのでしょう。構造色は重要な役割を担っていますね。

【感想】
先日、動物園に行ったときに、偶然、マンドリルを見つけました。これまであまり見たことがなかったので、その鮮やかな水色に驚きました。家に戻ってから調べてみたところ、プラム教授の論文が見つかりました。哺乳類にも構造色があるなんて、ちょっと面白いですね。(SK)

【参考文献】
R. O. Prum and R. H. Torres, J. Exp. Biol. 207, 2157 (2004).

構造色研究会のホームページ:http://mph.fbs.osaka-u.ac.jp/~ssc/

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