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  【 雪くる前 】
 
   室生 犀星
 
 
 ひとすじに
 
 逢ひたさの迫りて
 
 酢のごとく烈しきもの
 
 胸ふかく走りすぐるときなり。
 
 雪くると呼ばはるこゑす
 
 はやも白くはなりし屋根の上。
 
 
  エッセイ  ( 解説 )  青木  健
 
  石を呑んだように灰色の空が重い。
 俺は先刻から灯りも付けず薄暗い部屋の中に立っている。
 
  『雪が来るよ。』
 戸外をとおるひとの声が聞こえる。
  隣家の屋根がうっすらと白くなっている。いつ積もったのだろう。
 
  ガラス窓にあたった雪片はまるで生命あるように這っていく。
 不意にあいつの話を想い出した。
 
  『 この間、あなたに逢えなかったとき、湯船の中で、乳を抑えてみた。
 最初は静かに、そしてだんだんと力を入れ・・・・・。
  そうしたら乳首が赤く、薄いミルクのような雫が浮かんで小玉になり
 壊れて乳房の上を落ちていった。。
  なぜか悲しくなり、お風呂の中で泣いてしまった。。。』
 
  そう言いながら、彼女は思い出したように眼を潤ませた。
 明日になれば会えるのの俺は待てず、雪の降る街路へ出て行った。。。
 
 
  あとがき
 
   犀星の作品に最初に触れたのは、中学の国語のテキストであったように思う。
  詩人であり小説家であったが、大人になり金沢を旅したとき、犀川という川があったが、
 室生犀星の出身地であったことから由来になったのかと思う。
  犀星の小説には、エロチシズムの表現が見られるのに、抒情詩には、それが希薄
 である。
 
 
  ☆  画像は友達の雅さんからいただきました。。。

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