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《 制 服 》 井坂 洋子
ゆっくり坂を上がる
車体に反射する光をふりきって
車が傍らを過ぎ
スカートの裾が乱される
みしらぬ人と
偶然手が触れ合ってしまう事故など
しょっ中だから
はじらいにも用心深くなる
制服は皮膚の色を変えることを禁じ
それでどんな少女も
幽霊のように美しい
からだがほぐれていくのをきつく
眼尻でこらえながら登校する
休み時間
級友に指摘されるまで
スカートの箱襞の裏に
一筋こびりついた精液も
知覚できない
《 エッセイ 》 執筆 青木 健
ここに現れているものは、16歳の少女の生の生理感覚ではない。
彼女は己の生理の襞を丹念に点検しているのである。
大量輸送時代、人口過密時代の少女にとって、
「みしらぬ人と/偶然手が触れ合ってしまう事故など/しょっ中」だろう。
だから「はじらいにも用心深くなる」と反応を一度保留している。
都市生活者はどこかで意識に目隠しをしながら日を送っている。
「スカートの箱襞の裏に」ついた精液 ・・・・・・
少女は登校の途中で射精を受けたのだが気が付いていなかった。
都市生活の顔のない男女の性愛、そのかげのぶぶんがここにはある。
* 井坂洋子
1949年東京生まれ 元高校教諭 詩人
* (株) 作品社 ≪日本の恋歌≫ より
* 画像は友達の雅さんからお借りしました。
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2012年03月17日
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