|
かそかなる心ほのめき
粧へり
ぼたん雪ふり
華やかなるも
斎藤 ふみ
( 歌人、東京生まれ )
日本座敷、壁際においた昔風の鏡台の、
華やかな縮緬模様の掛け布をさっとめくって
ひんやりした鏡の面に向いて、己が姿を映し装い
支度。無論愛しい人に逢いにゆくための。
色白の、髪は濡れ羽色、豊かな黒髪を櫛けずり、べっ甲かサンゴのかんざしでも一本
すっとさしてまとめ。
着物は渋い大島紬か、それが彼女をひきたてなまめかしくさせている。
紅は、いにしえの昔か京都の色街の女のように貝殻状の容器に入ったそれを、小指で
風情たっぷりにつけてゆく ・・・・。
彼女は気が浮き立ち息苦しくなる自分を窘めるように、自分の奥を鏡に真剣に覗き込む。
その鏡の中に大きなぼたん雪が重そうに軽そうに,舞っているさまがみえている。
* エッセイ 執筆 中平まみ
* 斎藤 史全歌集所収
|
中島みゆきの伝言板
[ リスト | 詳細 ]
|
|

- >
- Yahoo!サービス
- >
- Yahoo!ブログ
- >
- 練習用
|
明治時代の文豪、島崎藤村の叙情詩に触れるとき、懐かしい青春の軌跡を
思い浮かべるのです。
【 初恋 】 島崎 藤村
まだあげ初めし前髪の
りんごのもとに見えしとき
前にさしたる花櫛(はなぐし)の
花ある君と思ひけり
わがこころなきためいきの
その髪の毛にかかるとき
楽しき恋の盃を
君が情けに酌みしかな
≪ 解説 ≫ 青木 健
「初恋」を収めた『若菜集』は藤村の処女詩集として明治30年8月に刊行されました。
藤村にとっての初恋は、明治26年当時明治女学校の教師をしていた藤村の教え子
佐藤輔子への愛ではなかったろうか。
輔子への秘めた愛も打ち明けることなく、女学校を退職し、洗礼を受けた教会からも
退籍している。
このあと2年間、魔の歳月だった。明治27年文学上の兄であった北村透谷が自殺。
また同じ年兄が事業の失敗から屋敷を売却、藤村は島崎家の負担を一身にひきうけ
ることになった。
翌28年8月、初恋の人輔子が札幌で病死。郷里の大火で、藤村の屋敷は焼失
という凶事が続き、精神的支柱を失うが、凶事の続いた翌29年、仙台の東北
学院へ赴任してから、藤村の暗い心に新しい抒情詩の光が差し込むのである。
|
|
はりまや橋
山本かずこ
落日を背にして歩いていると
はりまや橋が赤く燃えているときがありました
燃える橋を渡っていると
向こうからやってきた
枯木のようにかれた男が
あっというまに メラメラと
燃えあがるときがありました
気がつくと
私も燃えていて
いつもはかなしいあの姿勢も
そのときばかりは 生きて極楽を
何度も何度もかいまみたりすることがありました。・・・・・
< 解説 > 井坂 洋子
山本かずこの詩の風景には親しい人が現われ風景は特別なぬくもり
を持って息づいている。
見慣れた町、渡ったことのある橋は、彼女の手になると架空の地のような
輝きを発す。
ここに掲げた<はりまや橋>は、男と女のかかわりを、二人の時間の
推移、その長さやくだくだしさを瞬時にして言ってのけている。
ここに登場する男を、みしらぬ他人であると読んでもいいし、恋人や夫
であっても本質的には大差ないのではと思わせる、そんな妙がこの詩にある。
* 出典 日本の恋歌 吉行和子編
(株) 作品社
* 画像は友達の舞さんからいただきました。
|




