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ところで、そもそも人間はどのようにオキアミを利用しているのでしょう。
今、オキアミのニーズが最も高いのは、水産養殖です。
この半世紀のあいだに、北半球の漁獲量は減少しています。代わって急成長している世界の水産養殖で餌に使う魚油や魚粉の原料として、オキアミのニーズが高くなっているのです。日本では、養殖用の餌にも使われていますが、レジャー用の釣り餌が多いようです(『水産資源の先進的有効利用法』NTS 2005)。
水産養殖の成長の勢いはすさまじく、すでに世界の魚油の75パーセント、魚粉の45%を消費しているといわれ、10年経つかたたないうちにそれぞれ79パーセントと48パーセントに達する可能性があると予測されています 。実際、「利用可能な魚粉と魚油の全てを10年以内に消費してしまうだろう」と推測する水産関係者もいるくらいです。
そうした消費を背景に、オキアミ資源への期待が高まっているのですね。
魚油(魚油一般)の需要が供給を上回り、価格が上昇してくると、魚油は“ニュー・ブルーゴールド"
と呼ばれるようになりました(「ブルー・ゴールド」とはもともと、貴重な水資源--21世紀には利用できる真水資源の枯渇や独占が紛争を引き起こすといわれる--を指して使われた言葉です) 。ペルー産のカタクチイワシなど、これまで水産養殖産業向けの魚油と魚粉のために取り尽くされてきた多くの魚種に代わる資源として、オキアミに注目が集まっているのです。
オキアミはタンパク質と必須アミノ酸成分を多く含んでいて、また、これまで他の魚種で作る魚油や魚粉では問題だった汚染物質の濃度が低いことも特徴です。オキアミの色素はサケの特徴であるピンク色の天然の発色源になるのでサケ養殖餌としても好ましいとも云いわれています。
また、栄養価が高いので、サプリなど健康食品や医薬品といった産業で製品開発が進められています。
「クリルオイル」などと呼ばれているサプリやサプリ原料もオキアミ由来のものです。
一方、オキアミの集まるところは、良い漁場でもあり、同時に、オキアミを食べて生きる南極の野生生物が餌をとる海域でもあります。そのよなわけで、オキアミをめぐっては、漁船と、野生生物(ペンギン、クジラ、アザラシ、アホウドリ、ウミツバメなど)とは直接の競合関係にあるのです。
では、人が利用をしながら、南極の生態系も守るにはどうしたらよいか? 次回はそのための各国の協力について書きます。
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