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くぼちゃん日記
さあ!梅雨が開け、本格的な夏がやって来ました!

書庫良寛を読む

良寛について調べているというより、良寛とともに歩み始めたような感覚です。
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無所有

良寛を読んでいると、
「清貧」とか「無所有」への憧れがうまれる。
資本主義経済ではありえない考え方なので、
特にアメリカ人には理解されないと思っていた。
しかし、ジャック・リーチャー NEVER GO BACK
という映画では、
主人公のチャーリー(もと陸軍少佐)は、
ほぼ無所有を貫いた生活をしていた。
一年中、旅から旅への生活をしているが、
バックパックはおろか着替えすら持っていないのだ。
彼の持っているのは小型のスマホとキャッシュカード1枚だけ、
モーテルで寝泊まりをし、
そこで下着を洗って次の日に着るのだ。
そして、ヒッチハイクで旅を続ける。

今回の九州縦断に出るとき、
着替えを持たなかったのは、
もともと良寛の生活や旅のスタイルに、
共感していたところに、
この映画の主人公の旅のスタイルに影響を受けだからだ。
無所有というのは良寛にいわせると、
常に意識して実践しないと、
人はすぐにゴミの山に埋まっての生活になるそうだ。

風まかぜの人生

西洋哲学に行き詰まりを感じていたアメリカ人に
禅の考え方を知らしめたことで知られる久馬慧忠氏は
著書「仏のものさし」の中で、
良寛についてこう語っている。

「風まかせの人生」

「焚くほどは風がもて来る落ち葉かな」

この句は清貧そのものを言い表しております。
少欲知足に徹したお姿です。
良寛さまは住職としての資格は十分にありながら、
一寺の住職ともならず、
檀家も信徒もない貧乏暮らしをしておられます。

良寛さまが五合庵在住の頃、
長岡藩主牧野忠清が、
城下の寺に良寛さまを迎えようとして、
五合庵に向かわれました。
牧野氏に丁寧に懇願された良寛さまは、
おもむろに筆を執り、
「焚くほどは風がもて来る落ち葉かな」
の句を示されました。
さすがは名藩主と謳われた牧野さま、
この句の意味をすぐに理解して、
黙って山を下って行かれたそうです。

もし良寛さまが、
このとき住職を承諾なさっていれば、
権力も富も名誉も思いのまま、
赤座布団に座って
裕福な生活も保障されていたでしょうに。
いとも簡単にきっぱり切り棄て、
風まかせの人生を選択されたのは賢明でした。

良寛さまの好きなもの3つ  
児童、手毬、はじき
良寛さまの嫌いなもの3つ
料理人の料理、歌詠みの歌 書家の書

わたしはこんな良寛にどこか魅かれる。

私の好きなもの3つ
児童、自転車、哲学

私の嫌いなもの3つ
学者の話、怨みの演歌、野球の監督

日本のゆくへ

熊本を中心とする九州北部を襲った地震は、
徐々に収まりつつあるようですが、
震度7の地域の復興は未だ目途が立っていません。
3.11東北地方の地震と言い、
どうして日本は次から次へと地震に襲われるのでしょう?
科学的言えば太平洋プレートやフィリピン海プレートが
1年に8㎝程度のスピードでやって来て、
日本の下に次々に潜り込んでいくわけですから、
起こるべくして起こっているのですが、
良寛さんはまったく違う考えをとなえています。
江戸時代の末期に中越地方で起こった
大地震について良寛さんは、
友人にあてた手紙の中で次のように述べています。

 
(わが国が)あやまちを重ねてつづけて、
いったいどれほどの歳月が過ぎたことだろう。
世の人々は反省するどころか、
かえっておごりたかぶり、
あやまちをくりかえす者を見ては、
「できるやつだ」などと
逆に誉めたたえてしまうしまつ。
いやはや、なんとも・・。
そんなどうしようもなく情けない世の中だから、
このたびのような大災害が起こるのだ。
もっともなことではないか。
今、私は世の中の人々につつしんで申し上げたい。
一人ひとりがあやまちを犯さぬよう、
身をひかえめに処していただきたい。
決して、悪いことをしてはいけないよ

これを聞いて「不謹慎だ!」と
怒りを感じる方もおられることでしょう。
良寛さんは
私利私欲に走った経済や政治や人々のおごりに
大地震の原因を求めていまたのです。

上の良寛さんの文書を訳した新井満さんは、
これについて次のように見解を述べています。
 
良寛さんのいう「悪いこと」というのは明瞭で、
「清貧」という言葉の逆にあるもののことです。
「清く貧しく生きよ」といっておられるのです。
嘘をついて他人を出し抜いて利益を得ておいて、
それを独り占めにし、
貧しい人に還元することもなく、
自らのために蓄え、
不必要に贅沢な暮しをして
他人に見せびらかせることです。
 
つまり日本の社会に反省を促し、
清貧な社会へと進むよう
方向転換を求めているのです。
「清貧」とは
「自由で豊かな内面生活をするために、
あえて選んだシンプル・ライフ」である。

物や金への執着と関心が強ければ強いほど
内面生活の豊かさは失われる。
だから生活は能うかぎり簡素にして、
心の世界を贅沢にしようではないか。

この本は、
ベストセラーとなった
野孝次氏の「清貧の思想」に対する
著名人の痛烈な批判を受けて書かれたものだ。
いわば弁解の書だ。
私も「清貧の思想」を読んで
感動した一人だが、
やはり経済社会を否定する思想のように
途中から感じるようになった。
中野氏は鴨長明や吉田兼好や良寛に魅かれて
「清貧の思想」を著したが、
いずれも労働から離れ、
世捨て人となった人の思想だ。
彼等に共通することは、
自分の生活を基礎から支えている
社会の営みや経済のシステムを
痛烈に批判していることだ。
これは大いなる矛盾だ。
私が中野孝次氏の思想から
しだいに離れていったのも、
実はそれに気づいたからだ。
しかも、中野氏には、
理論だけで実践がない。
清貧を強く主張しながら、
贅沢や豪華さを好み、
清貧とは程遠いところにいたと、
彼の家や生前に立てた墓を見て感じた。
鴨長明や吉田兼好や良寛が清貧の実践者なら
彼は現実と理想の狭間の「彷徨い人」だ。
生涯迷いの中にいた。
だからこそ良寛に深く傾倒したのだろう。
そこが私と似ていて、
つい何度も読み返してしまうのだ。

良寛を問う

昨年は須坂市にある良寛会の読み合わせに
何回か出席させていただきました。
しかし、
後半は良寛の生き方や人柄に疑問が生じ、
足が遠のいてしまいました。

つまり、良寛が「働いてパンを得る」という
人としての義務を果たしていなかったことです。
円通寺を飛び出して、
浮浪者に近い生活を3年も送った後に、
故郷の新潟に戻ってきたことにも、
良寛のずる賢さを感じました。
名主の長男である立場を利用して
住民や家族からの保護を
期待してのことではなかったかという疑問でした。

長谷川洋三氏は著書「野にある仏者の面目」の中で、
私に起こったこれらの現象は、
良寛を研究している人の中で
しばしば見られる現象だといいます。
そう言う長谷川氏自身も
良寛に物足りなさを感じた一人であると語っています。

問題となるのは、
良寛は住職になることはなく、
説法もしなければ作務もしない生涯を送ったことです。
「イワンの馬鹿」の中で、
イワンの口の利けない妹は、
客をもてなすときに相手の手の豆を見て、
手に豆の無い者には食事は出さず、
他の者が食べた後の食べ残しをあたえました。
トルストイが生涯かけて言いたかったことは、
額に汗を流し、手に豆を作って働いた者だけが、
生きるに値する者だということでした。

この考えは、なにもトルストイに限らず、
私たちの思いの底にも気が付かないうちに備わっていて、
「良寛が立派な人物だ」と言われれば言われるほど、
最初はおとなしく静観していても、
しだいに頭を持ち上げてきて、
ついには噴き出してくる。
そして、読み合わせに行かなくなった。
それが私なのです。

では、長谷川先生と私はどこが違うのでしょう?
先生は仏教観の違いに気付いたといいます。
インドで誕生した原始仏教では、
仏道者は働くことは禁止されており、
托鉢と座禅と戒律を守ることが
唯一認められた弁道(求道)でした。
しかし、仏教が中国に渡ると、
そこに作務という労働が付け加わりました。
作務とは畑を耕したり、収穫したり、調理したり
清掃活動をしたり、民衆に説法したりすることです。
こういう作務をしたものだけが食事にありつける
という新しい考え方が付け加わって
日本の曹洞宗へと伝えられました。

では、良寛はどうだったのかというと
より原始仏教に近い立場だったということです。
寺も持たず、住職もせず、葬式の説法もしない
良寛にとっての作務とは、
托鉢や座禅であったり、
詩を書くことであったり、
子供らと無心に遊ぶことだったり、
一切の物を所有せず自然の中に身を置くことだった。
そう捉えることができるからです。

長谷川先生は著書の中で次のように結んでいます。
「彼は生涯、職もなく食を乞い求めて
 遊び暮らしたのではない。
 野に生きる托鉢僧としての自覚を持ち、
 布施行を通して弘法をし、
 僧としての職務を全うしたのである。
 寺院における弘法ではなく、
 野における弘法を全うしたのである。」

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