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春馬は 3月末 進学先を決定した
春馬は
3月も半ば過ぎになって
呼ばれた大学を訪ねた
昨年取り寄せた私立の大学案内に
ようやく目を通し
大学から届いた「手紙」にも目を通し
時間が無いので
二つの大学に絞って
我々は大慌てで準備して
訪問計画を立てた
大学側は
信じられないような待遇で
春馬を待ち受けていた
私立大学って
こういうものなのか。。。?
少子化問題を抱えているし
私立大学は
きっと学生獲得に必死なんだろうな。。。
それにしても
もうすぐ新年度という時期になって
浪人生なら予備校を決めている時期だ
訪問先の大学で
春馬は
饒舌に教授陣と語っている
高校の面談の時とは大違い
講義内容・カリキュラム・研究室・実験施設
研究内容・方法・先輩方の論文
学会への論文提出のサポート体制
教授陣の経歴・研究
大学院進学・就職に関する事
など。。。。
大学での生活はもちろん
進学すれば独り暮らしをする
住まい・資金のことまで
こんなにも具体的に
春馬が自ら話すのを
情けない事に
我々家族ですら
聞いたことは無かった
ある教授と話していた時
その教授が第一志望国立大学の
志望学部出身だと知ると
そこの研究や学生のことなど
かなり食い下がって聞いていた
いやいや。。春馬よ
今はここの大学の話をしようよ。。。。
しかしその教授は
決して嫌な顔せずに
丁寧に正直に
春馬の質問に
すべて答えてくれていた
一般の施設はもちろん
研究室や大型の実験施設も見せてもらった
そして。。。
国立大学後期試験の発表の日
春馬は告げた
「勝手言ってごめん。」
春馬は
訪問したひとつの私立大学に
進学を決めた
直接学部の教授陣と長い時間話をして
先輩たちの研究する姿を見て
周りの環境を見ながら歩いて
ここの大学が
自分が本当に欲しかった環境だと思う
大学受験というイベントの渦の中
自分の本当の「志望」を
忘れていた
我々もようやく思い出した
確かに春馬は
高校二年生になったばかりの時
担任に「志望大学はどこだ」と聞かれて
「どこでもいいんです、自分をわかってくれる所に行きたい。」
「どんな事を学びたいのか」と聞かれて
「自分に何ができるかを学びたい。」
そう答えていたのだ
ありのままの自分を
望まれている場所に行きたい
それが春馬の
本当の第一志望だった
それがいつからか
進学校や周囲の大人たちにとっての
進学が望まれる場所になってしまっていた
母親が春馬に言った
「忙しい時期だったとはいえ
春馬にろくに相談もせずに
勝手に願書出したりしてごめんね。」
すると春馬は
「いや、勝手にやってくれてありがとう。感謝です。」
本当に良い場所を見つけられて幸せだと
実に爽やかな笑顔だ
希望に胸を膨らませているのが分かる
それにしても
こんな出会い方があるんだ
春馬も我々も
大学受験というものが
こんな結末を見ようとは
全く想像もしていなかった
春馬は早速
訪問先でお世話になった大学教授に
意思決定のメールを送った。。。
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大学受験
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春馬は 自分で進学先をつかみに行く
春馬は
ある国立大学一本を本命にして
前期・後期の試験を終えた
浪人をしてもいいと親に言われてから
妙に落ち着いていたのは確かだ
その間に
続々と私立大学の合格通知が届いていた
春馬は
国立の試験が終わった途端
ようやくその郵便物に
目を通し始めた
合格通知とは別に
いくつかの大学の
物理学科教授や学部長からの
「私信」があった
小包で届いたものもある
大学案内や大学グッズだけでなく
その大学の研究リポートや
教授陣の著作本が入っていたりする
そして
「とりあえず、学部長宛連絡ください。」
電話とメールアドレスが書いてある
メールアドレスは教授のものだが
取り敢えず
大学代表電話にかけてみた
「是非直接お会いしたい。ご家族もどうぞ。」
日程はこちらの都合に合わせてくれるという
国立前期不合格で
たぶん浪人だろうなと腹を括っていたので
折角の短い春休み
今まで頑張った分の息抜きと
次年度の戦いの参考までに
家族で出掛けることにした
私信が来ていた大学のうち
春馬は二つの大学を選んだ
確かにどちらも
春馬の興味ある研究がある
大学に連絡して
ほんの見学気分で出掛けた
大学は
春休み中で静かだ
到着すると
出迎えてくれたのは物理学科の教授
最初は個人面接で
春馬のやりたいことが何か
本当はどの大学に行きたいと思っているのか
高校までどんな勉強のしかたをしていたか
本来あるべき高校面談のようだ
その後
ここに入学したら
どんな学び方をさせてくれるか
春馬が受験した国立との違いを話してくれた
それらは
メリットもデメリットも含めて。。。
そして
今回ここへ春馬を呼んだ
「私信」の理由を話してくれた
国立を受験しているだろうことは分かっている
提出したセンター試験の成績
調査書
高校理数科での課題研究
数学オリンピックの成績
これらを踏まえて
物理研究に強い興味があり
数学的思考力のある人間を
強く求めている
望むなら
飛び級させても
早く独立した研究をさせたい
春馬の目は輝いた
面談を終えると
全館案内
すべての研究室の教授と
現在それぞれトップで研究している
学生さんがスタンバイしていて
今まさに研究しているところを見せてくれた
学部長さんのガイド付き
個人オープンキャンパスだ
理学を学ぶ大学は
物理分野だけでも相当な広さである
一つの大学を
一日がかりで見せて貰った
しかも
通常のオープンキャンパスとは違って
周りに人が居ない
春馬のペースで周り
春馬が聞きたいことに答えてくれる
完全な
マンツーマンだ
興味のある所では
実験とその考察をその場でやっている
春馬の思考力を見ていたのかも知れない
こんな贅沢なオープンキャンパスって
あるんだ。。。。
信じられない。。。。。。
ちんぷんかんぷんな我々は
初めは
興味ありそうなフリしてついて歩くも
長時間に及ぶと
さすがに
此の道にはまったく興味無い人間だと
バレバレ状態になってしまった
いつまでここに居るんだろう。。。
春馬と大学スタッフは
益々活き活きとしている
改めて思った。。。
この分野の人たちって
興味あることになると
際限が無くなるのだ。。。。。
気付けば
飲まず喰わずで半日過ごした
本当に
お茶一杯の休憩も無かった
おかげでトイレにも行かないでしまった。。。
しかしながら
春馬の
こんなに活き活きした表情を見たのは
いつ以来だろうか。。。。。。。。。。。
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春馬は 進学先を一週間で決めた
2015年4月
春馬は 大学に入学した
高校に申告していた
第一志望の大学では無い
それどころか
それまで一度だって
模試や進路希望調査の志望校として
書いた事の無い大学である
進学校である高校の先生は
大学入試シーズン真っただ中で
関係手続きに追われている時
生徒全員から
一覧表にして提出される
滑り止め(?)私立大学入試のための
調査書申請を
それぞれの提出期限を睨みながら
裁いている時
その最終段階に
紛れて書かれていた大学
当然の事ながら
本人もその気があるわけでは無いのに・・・
国立後期も
担任の先生の意向を無視して
前期受験と同じ大学にして
春馬は既に
浪人生活を覚悟しているようだった
本当にそれで良いのか
本人の心の奥にしまっている
春馬の本心を確かめる時間は
受験スケジュールに忙殺されている
学校にも
我々家族にも
そして春馬自身にも
まったく無くなってしまっていた
もしかすると
春馬はもう
開き直っていたのかも知れない
(この事については後述する)
こんな状況の中で父親は
たとえどんな結末になろうとも
本人の思うようにさせてやろうと
腹を括っていた
だが
母親は違った
春馬の意向通りに事を進めながら
「春馬が好きそうな研究のある私立大学で
”センター試験のみ”の大学に願書出しとくよ。」
サラリと言った
「私立はどこにも行かないよ」
春馬はそう言ったが
「うんうん分かってる。浪人した時、来年の参考になるでしょ。
へぇ 今はネットで簡単手続きだって。実感無いわぁ。
こんなことも勉強になるわねぇ。」
まるで鼻歌交じりである。。。。。。
本当に実感無いのは春馬本人だ
今だから言うが
春馬も父親も
どこに いくつ追加提出したか
まったく気にしていなかった
勿論
調査書申請書には紛れて書かれていた筈だが
きっと春馬は気に掛けてはいなかった
まさか
その中のひとつに
本当に進学する事になる大学が
紛れ込んでいたとは
手続きした母親すらも
認識していなかった
かくして
春馬が最終的に入学した大学は
このあと
信じられない方法で
春馬自身が選び取る事になるのだが
進学校の先生にすら
はっきりと知られていない
特殊な入学方法なので
ここに載せていいものかどうか。。。
もう少し
調べてからにしようと思う。。。。。
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春馬の 第一志望とした国立大学前期試験は 不合格だった
2015年2月
第一志望の
国立大学前期試験に臨んだ
信じられないほど
涼しい顔をして
他の受験生や
高校の先生方
試験会場のスタッフ
みんなそれぞれに
緊張している空気の中
春馬は
まるで他人事のような顔をして。。。
大学の構内・門外で
配られる様々なチラシ
春馬はいちいち
ちゃんと目を通して受け取った
独り暮らし用の不動産チラシ
各種サークルの案内
進学塾のチラシ
観光マップのようなものまである
自分に必要ないと思うような売り込みや
思想信条に関わる
宗教的なものや政治活動的なものは
丁重にお断りした と言う
これから受験だというのに
予備校の案内もあったりして
その厚かましさというか
無神経さに辟易するけれど
これは受け取って来た
春馬に聞くと
予備校の案内には
大学生になってからのバイト情報と
この季節にありがたい
“ポケットテッシュ&カイロ”付きだったんだよ〜
厚かましいのは春馬の方か
それにしても
春馬がしっかり
精査選別したにもかかわらず
持ち帰ったチラシは
大変な量である。。。
いや
そんなことはどうでもいい
あのさぁ
今日は試験日だぞ
本番だぞ
確かに余裕を持って
早めに到着したかも知れないが
配られるチラシを
いちいちその場で
熟読する余裕は
普通
無いんじゃないの?
帰宅して
その日のうちに
大手予備校のHPや
ネットの情報には
大きな大学の試験問題がUPされている
競って
出題傾向分析と
早くも解答例を上げているところすらある
が
春馬は
そんな情報には目もくれず
早々と寝床についた。。。。。
数日後
合格発表の日が訪れた
春馬の受験番号は
合格者の中には存在しなかった
悔しがったり
残念がったりする様子は無く
「後期、いつだっけ?」と
呑気なことを曰って
それは春馬なりの
強がりなのか
本当はすごく辛いのか
よく分からないまま
受験の時に貰ってきた不動産情報を
一緒に
眺めていた。。。。。
変な母子だ。。。。。。。。。
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春馬は いよいよ最終レースを迎える
3月になると
我々家族も
学校も
受験モードの最終章
どう言う訳か
後から振り返っても
実に不思議な事だが
大学受験とは
何故か
国公立大学受験がメインである
有名私立大学受験を目標にする生徒が多い
関東圏ですら
高校も進学塾も
やっぱり
国公立崇拝(?)なのだ
2月頃までに
進路決定している
私立や推薦組は
この 国公立大学前期試験のために
気を遣って
おとなしく
静かにしている感じだ
センター試験だって
進路決定している者も
一緒に受けるのだ
経験とか
決定後も基礎的な学習を続けるとか
もっともらしい理由をつけてはいるが
受験データ収集のためとしか
思えない。。。。。
いよいよ個別試験が始まる
春馬は
センター試験が終わってから
殆ど口を開かなくなった
それもそうだし
勉強も
いきなり赤本を手に入れて
“眺めて”いた
学校では
ラストスパートの講義が繰り返され
本当に
最後の鞭が入っている感じだ
狭いパドックの中で
鼻息を荒げているのもいれば
春馬の様に
戦いの直前とは思えない
涼しい顔をして歩いているのもいる
声を上げ
躍起になっているのは馬場の外
今にも倒れそうな形相で
鞭を持つ進路担当と担任教師
お守りを握りしめて
神や仏に祈る家族
そして
硝子張りの観覧席で
情報交換している偉い人
パソコンデータをひっきりなしに更新し
場外では予想屋がチラシを配る
そうなのだ
まるで競馬場
春馬たちはこの日の為に
大切に大切に育てられ
最上級のメンテナンスを受けた
サラブレッド
皮肉だなあ
このブログの主人公は
“春馬”だ。。。。
まさしく
「春」に駈ける「馬」か。。。。
そんなつもりで決めた名前じゃ無いのだけれど。。。。。
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