軍事評論家熊谷直の社会評論

アジアを中心にした社会・軍事の情勢やニュースの分析

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 秋晴れの一日、武蔵野線新座駅から西武池袋駅清瀬駅まで約10キロの散策を楽しんだ。知恵伊豆と呼ばれた松平伊豆守信綱開鑿の野火止用水沿いの道を歩く。将軍家光の老中であった信綱は玉川上水開鑿の責任者として、自領の開墾を進めるためのこの用水の設置も認められ、その用水が昭和30年代までは生活用水としても農耕用水としても使われていた。
 新座駅の南に信綱菩提寺の平林寺がある。寺域は1キロメートル四方に近い広がりを見せ、武蔵野の面影をそのまま残している。用水の一部は寺にも分流され、よく手入れされた境内を潤している。実は40年前にここを訪れたことがあるが、旱魃のため用水の流れがせき止められた後であった。新座市が用水を復旧したおかげで、散歩を楽しめる場所に変わっている。バブル経済は各地にこのような遺産を残してくれており、その意味では現代人の精神生活を潤してくれる役に立っている面がある。ただ今後の維持が問題だが。
 行程の三分の一のところに市の総合運動公園があり、その外郭に旧海軍の大和田通信隊跡地で戦後米軍の情報無線施設になっていた土地がある。現在日本への返還の過程にありやはり自然がそのまま残されているところがある。海軍の通信隊としては昭和14年から、ハワイに進出してきた米海軍艦艇の短波無線交信を傍受するなど情報収集に大きな役割を果たしてきた場所である。戦後米軍も、施設を接収して情報受信施設として利用してきた。おかげでその周辺に、いくらかの自然がそのまま残されているが、返還されて人工施設だけが立ち並ぶ場所にならないことを願っている。
 久しぶりに歩いた清瀬あたりも住宅地になり、40年前の雑木林は消えている。徒歩の人はといえば、下校中の子供たちだけであった。20年ぐらい前であったか、子供たちがテレビ画面で物語に胸を打たれた、トトロの森の面影を見ることができる場所は少ない。用水も半分はマンホールの下に消えている。マンションを遠くから見ると蜂の巣のように見えるが、これが形を変えた人間の生き方だとすると寂しい。

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