軍事評論家熊谷直の社会評論

アジアを中心にした社会・軍事の情勢やニュースの分析

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 北朝鮮拉致事件の関連で韓国政府の保護下にある金賢姫元北朝鮮工作員が来日し、日本政府のおぜん立てで拉致被害者家族と面談した。特別の新しい情報は得られなかったというが、最初から予想されていたとおりである。ヘリコプターで都内を遊覧的に飛行したというが、警備上の問題があったのであろう。飛行は金賢姫が要求したという説もあるが、元工作員が遊覧を要求するとは考えられない。そのようなことをすれば、今でも北とのつながりがあるのではないかと疑われるだけだからである。経験を積んだ工作員は、空から重要な目標を確認することができる。一方で日韓関係にも影響する警備上の不測の事態が発生すれば、日韓の外交上の問題になり、日本の失点になる。警察・公安関係者は警備情報取得に神経をすり減らしていたであろう。
 来日は前から計画されていたとはいえ、時期的に今になったのは、北朝鮮の動きと関係があるであろう。韓国哨戒艦沈没事件、北朝鮮内の金正日から息子への権力の承継の動きなどに対する米韓政府の対応と、日本政府の対応は水面下では連動しているはずである。
 米韓両軍は、25日から共同演習を始めようとしている。最初は横須賀を拠点にしている空母ジョージ・ワシントンを主体にする艦隊を、韓国哨戒艦沈没事件があった半島西側の黄海に進出させる計画があったようだが、北朝鮮だけでなく中国もこれに強く反発した。もし逆にハワイ近海で中国艦隊の演習が行われれば、アメリカは国連安保理等を通じて強い圧力を中国にかけると予想されるが、自国に近い艦載機の行動圏内で米国海軍の演習が行われる場合に中国が、国防上の危機感を持ち反発するのは当然であろう。
 結局米艦隊は計画を変更して、いつものように半島の東や南の海域での演習をすることになったらしい。しかし韓国内の空軍を主とする米軍基地が、南北の軍事境界線に近いところから、やや後方の西海岸寄りの烏山や群山などに後退させられた現状で、どのように北の軍隊と戦うのか、その確認のための日韓共同の演習を行う必要性は大きい。またそれを行うことで、北朝鮮に圧力をかけることもできる。 
 そのような時期の金賢姫の来日が、米韓との日本の外交上の懸案と無関係に行われたということはあり得ない。これが鳩山内閣の時代であれば、来日交渉が進められることはなかったかもしれないが、実務的な菅総理大臣の時代になったので、金賢姫来日が政治的な判断で実現したということであろう。拉致被害者のご家族には申し訳ないが、拉致問題解決はそのような大きな動きと無関係で進め
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られるということはあり得ず、半島の政治情勢次第ということになり、決着にはまだまだ時間が必要であろう。

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